シン・仮面ライダーを観ての感想
シン・仮面ライダーを観た。おもしろかった。
さて、主人公・本郷猛(池松壮亮)が、仮面ライダーに変身して敵を殺し、暴力の加減ができない、辛い、という。
これに対して、緑川ルリ子(浜辺美波)は、「辛いという字に線を一本足すと幸せになる。辛さと幸せは近いところにある」「あなたが辛さを背負うことで誰かが幸せになっている」「誰かを守って戦うとはそういうことでしょ」という。
ところで、「辛」という字は象形文字で、「把手のある大きな直針の形」、「その初義は、入墨に用いる針で、辛痛の義」とある。
一方、「幸」も象形文字だが、この字の成り立ちに「辛」は無関係である。「幸」は手枷の形。なぜ手枷がさいわいの意を持つのかについては複数の説があって、ひとつに「執」が元となったとするものがある。「執」は手枷に両手をとらえられ、ひざまずく人の形。拘束から放たれて人は去り、あとには手枷のみが残された、これをもってさいわいとする解釈が、いちばん納得感がある。
要するに、「辛」に一本の線を足せば「幸」になるというものではないし、他人を幸せにするために誰かが辛い思いをしなければならないというものでもない(不健全な考え方である)。
浜辺美波は、小賢しくもまったくの誤りというほかないセリフを吐かされていて気の毒だと思ったが、人に会ってこのような話をしても引かれるだけなので、ここで書くにとどめておく。
※参考文献:「字統」白川静 https://amzn.to/47XqSYA