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Garden3

…帰ろう。そうだ。知らない人だし、ちょっと見かけただけの人。

私は自分に言い聞かせるようにして、ただひたすらに歩く。いつの間にか青山通りまで来ていた。

肩と肩がぶつかるくらいの人混みを見ていると、私はつくづく1人ぼっちなんだと気づく。

誰にも気づかれず、ひっそりと息をしている。
ステキな人に出会えても、ただ遠くから眺める事すら許されないんだ。

思ったより傷ついていた。
ただの通りすがりに、何を期待してたの。

青山通りから、アンティーク通りに向かう頃には少し落ち着きを取り戻す。

もう何かに期待するのはやめよう。
これじゃまるで、ストーカーだ。
好きとかじゃない、ちょっと会いたかっただけ。

コンビニでレモンのハードセルツァーと、ドライサラミ、卵のサラダを買うと1人暮らしのマンションへと帰る。

「ただいま」足元で出迎えてくれる大切な子猫ちゃん。
この子だけでいい。男なんてこりごり…今までと一緒だ。

なのに、あの白くて大きな手を思いだす。
長い指がめくるページに自分を重ねてしまう。
あの子にも、そんな風に優しく触れるんだろうか。

もう、二度とあのカフェには行かない。
そう決めた。

その後、思いがけず彼と再会することになるとは
この時はまだ夢にも思わなかった。


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