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Garden2

手に見惚れていると、フッと視線が合った。
私はとっさに目を逸らす。

アイスラテを一気に飲み干すと、急いで立ち上がり出口へ向かった。
「なんで逃げるの…?」顔が熱くなるのが分かる。

少し伸びた前髪が、顔にかかっていた。
綺麗に髭は揃えられていたが…なんのお仕事だろ?
アーティスト?画家?とにかく普段はあまり出会う事のないタイプの人だ。物をゼロから生み出す人の、独特のオーラが漂っていた。

初めて会ったのに。なんだかずーっと前から知ってるような…不思議な感覚。また会えるかな…私はあのカフェで彼にまた会う事を期待していた。



次の週の水曜日。午後にあのカフェに行ってみた。
初めて会ったのは水曜日だった。だから、今日も。

私の期待は虚しく…彼には会えなかった。

暫く庭の花を見て周る。イングリッシュラベンダーの穂先がゆらゆらと揺れて、春の訪れを感じさせた。

無心になれる。仕事も恋愛も人生も。
忘れてしまう、心の中が浄化される音が聞こえてきそう。

今日はもう帰ろう…そう振り向いた瞬間、彼を見つけた。いつもの席、ラタンでできたBOX型のベンチに1人で座っている。あの小説…夢中で読んでいるみたい。

胸が高鳴る。気づかれないように。そっとさりげなく見る。グレーのパーカーが似合う。
どうしよう…ここで声をかけないと後悔する。


時が止まったような、妙な緊張感…
どうしよう、どうしよう。
独り言が頭の中で、ぐるぐると廻る。

その時、フッとどこからともなく甘い香りが鼻をくすぐった。
待ち合わせにやってきた、その女の子は遥かに私より背が高く。長い手足が印象的だ。手入れの行き届いた美しいセミロングの髪が風に揺れている。

何か、親しそうに話しかけ、会計を済ませると2人で出て行ってしまった。

うん。そうだよね。あんなにステキな人だもの。
何をしてるの、一体私は。。。

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