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経済 記事まとめ

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#日経COMEMO

「ほぼトラ」と欧州防衛~金融市場の目線~

「もしトラ」で接近する欧州と中国 目下、利下げ局面入りが話題になるユーロ圏ですが、この点は以下の議論をご参照頂くとして、今回は若干毛色の違ったトピックを取り上げたいと思います。具体的には政治経済的な視点からユーロ圏の経済・金融情勢を読み解いてまいりたいと思います: 報道でも少しずつ取り扱いが増えている印象ですが、米大統領選が近づくに連れて、その市場への影響を問われる事案は確実に増えています。ドル/円相場について言えば、変動為替相場制移行後の経験則を踏まえ、円安・ドル高材料

再び炸裂したECBのブログ砲~会合軽視 or 多様化~

妥結賃金は加速、ECBは冷静な対応? ECB政策理事会が接近しており、利下げが確実視される中、照会も増えているので筆者の見解を提示しておきたいと思います。こちらの記事は誰でもお読み頂けます。 ECBウォッチの上で重要な情報として、5月23日はECBの「次の一手」を占う上で極めて重要なデータである1〜3月期妥結賃金が公表されています: 伸び率は前年同期比+4.69%と2四半期ぶりに加速しており、先行指数として注目されていた求人広告賃金(1~3月期平均で約+4.00%)からの

「今度こそ違う」~副総裁講演に思うこと~

結局、労働市場次第なのか 5月27日に行われた日本銀行金融研究所主催の国際コンファランスにおける内田副総裁の基調講演が債券市場で話題を集めています: 実際、今後の利上げ軌道を約束するかのような強い語気の目立つ講演という印象を強く受けました。内田副総裁は「現在の物価を巡る動向の変化が、不可逆的なデフレからの構造変化を意味するのか、あるいは、単に世界的なインフレによってもたらされた一時的な現象にすぎないのか」という自問自答から講演を切り出しています。 これに対する回答として、

遂にインフレ税が始まったのか

次のリスクは財政ファイナンスのテーマ化 160円をつけたピーク時からは反落しているものの、ドル/円相場は依然150円台で推移しています。まだまだ関連報道や特集は多いです: 現状の円安相場は米金利の高止まりや需給構造の変容など、いわゆる金利や需給の要因を指摘する向きが殆どですし、それが一番真っ当な分析だとは思います。しかし、日々の業務を通じ、海外から「次の円安リスク」として財政ファイナンスがテーマ視されているのではないか照会も増えています。 今回はこの点に関し、筆者なりの所

グローバリゼーション vs. スローバリゼーション【日本への追い風】

米国のおかげで「steady」な世界経済 4月16日、IMFから春季世界経済見通し(WEO)が公表されました: 世界経済の実質GDP成長率は今年1月の暫定改定値から+0.1%ポイント引き上げられ+3.2%とされています。筆者は毎回、WEOのサブタイトルを記録してその推移をエクセルで管理しています。 今回のサブタイトルは「Steady but Slow: Resilience amid Divergence(安定かつ緩慢、まちまちな様相の中、強靭性も)」となっており、インフ

再エネTF資料のロゴ問題について

 再生可能エネルギー導入に向けた規制改革をすすめる「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(以下TF)」の資料に中国国営企業のロゴが入っていたことが話題になっています.  規制改革を担当する河野太郎大臣の説明では「チェックの不備」であり,ファイル自体が有害なもの(ウィルス?)などではないとのことですが...…そういう話じゃないんです.  内閣府規制改革推進室の記者会見については以下の記事でまとめられていますが... 前置き 内閣府で規制改革関連の案件を

これからの金融政策ーー「望ましい金利」とは何か

 今週の日本銀行政策決定会合(18日-19日)では,マイナス金利政策・YCC(イールド・カーブ・コントロール)・リスク資産買入が停止されました. とのこと.あわせてオーバーシュート型コミットメント(2%を超えるまで金融政策方針を変えない)についても,足下のインフレ率が3%を超えていることから要件を満たしている考えているようです. 長い前置き 国際的な資源高と円安によって上昇したインフレは沈静化しつつあり,物価上昇率が安定的に2%前後を維持できるか微妙な中でなぜ金融緩和姿勢

株高とインフレと中進国

GDPの名実格差に正しい理解を 今月のnoteでは現在の日本経済はインフレ調整の過程に入っているのではないかという趣旨で議論しました。足許で調整色を強めている日経平均株価も昨年来では依然「高止まり」の印象が強く、これもやはり「インフレの賜物」なのだろうと思っています: 足許の動向はさておき、株高に関しては、それを喜ぶ議論の傍らで、実体経済の弱さを嘆く論調が多いのも事実です。これはそもそも日本の家計において株式の保有比率が低いという以前に、インフレになった分が十分、家計に分配

日独GDP逆転の本質~為替要因だから気にしなくて良いのか~

為替要因だから4位で良いのか? 先月、2023年のドル建て名目GDPが確定したことを受けて、日本がドイツに次ぐ第4位の経済大国へ転落したことが大々的に騒がれました。今でもその余韻があって、断続的な報道が見られたりしています: このテーマに関しては昨年来、noteでも複数回議論しているもので、予想されていた未来が統計で追認されたに過ぎないと思っています。例えば下記は昨年10月のnoteです: しかし、公にテーマが周知される中、「円安による為替要因であり、4位転落は騒ぎ過ぎで

「新時代の赤字」と原油輸入の類似点

パスの大幅修正は難しい ドル/円相場は150円近傍で高止まりしています。150円台は2023年11月中旬以来、約3か月ぶりの水準です。昨年の12月FOMCでハト派方向に急旋回して以降、米金利低下とドル安の相互連関的な動きが予測されていましたが、米国の経済・金融情勢がこれをフォローしてこない状況が続いています。かねて述べている通り、筆者は円安の真因が日米金利差だとは思いませんが、日米金利差が縮小しないことで僅かに期待できるはずの押し目すら到来していないのは事実でしょう。 も

日本は「仮面の黒字国」~「素顔」を知る努力~

統計上は経常黒字大国 2月8日、財務省が発表した2023年の国際収支統計は日本経済の現状や展望を議論する上で極めて有用な情報を与えてくれるものでした。過去1年ほど筆者のnoteでは国際収支関連の話題を中心に色々な議論を展開して参りましたから、この統計をもって一旦、総決算的な文章を書いてみたいと思います。 長文となりますが、「国際収支と為替需給」というテーマに関し、筆者の抱く問題意識を知って頂きたいゆえ、備忘録も兼ねて投稿させて頂きます: これまでのnoteをお読み頂いてい

ユーロ圏経済の現状【約束された賃金失速】

ソフトランディング果たすユーロ圏 1月30日に公表された2023年10~12月期のユーロ圏実質GDP成長率(速報値)は前期比横ばい(+0.0%)となり、市場予想の中心(同▲0.1%)をわずかに上回りました。前期比年率では+0.1%と辛うじて増勢も確保しており、ほぼ確実と思われていたテクニカル・リセッション(2四半期連続のマイナス成長)を回避しています: もちろん、マイナス成長を免れたというだけで、ゼロ成長は紛れもなく「停滞」です。また、ゼロ成長であれば、今後の改定を経て「や

「新時代の赤字」がけん引する円安相場~小作人は地主に勝てず~

「新時代の赤字」の定点観測 ドル/円相場の騰勢が続いています。結局のところ、過去2年における「米金利ではなく需給構造の変化が円安の背景」という筆者の問題意識が2024年に入ってもまだ有効になっている状況と理解しています。これは筆者の過去のnoteをお読み頂いている読者の方であれば頷いて頂けるかと思います。 デジタル関連収支に代表されるサービス収支赤字に関する議論もだいぶ市民権を得始めており、1月15日の日経新聞が使用した「デジタル小作人」というフレーズは日本の現在地を的確に

震災と万博......みんなおちつけ

 震災と万博について,発災直後の1/5に経済同友会の新浪剛史氏の中止への提言が注目を集めました.その後の続報がないため・・・何となく思い付きで発言して(わりと新浪氏はこの手のポロリ多いです),後から落ち着いて考えてみたら筋悪なことに気づいたのではないでしょうか.  なお,COMECOでの投稿にしようと...日経新聞の記事を探したのですが,万博中止orその後の自見万博相の否定などについて取り上げていません.経済新聞だけあって上の新浪発言がそれほど真剣な提言ではないことが分かっ