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「図書館情報資源特論」合格レポート

※合格レポートはあくまでも参考です。
 丸写しや類似レポートは不正とみなされるため、絶対にやめてください。
 
田中は2021年10月入学で全課程修了済です。

【設題】
字数指定:2,000字
設題の記入:要
灰色文献とはなにか、灰色文献の定義や意義、特性について記述してください。また、灰色文献と言われる具体的な資料名を挙げて、その資料の特徴についても説明してください。

【レポート作成上の留意事項】
・1,2,3や①②③と見出し番号とタイトルを記述し、論理的にレポートを作成してください。
・参考、引用した文献は、本文の末尾に著者名、署名、発行所、ページ等を記述してください


合格レポート

序論
 公共図書館では、地域資料や政府刊行物、行政資料などを市民の課題解決やコミュニティの諸活動に活かすため、積極的に収集・提供を行っている。これらの資料の中には、一般的に販売されておらず、入手困難なものも存在する。本論では、図書館資料を収集する際に導入されている「灰色文献」という考え方について、その定義や意義、特性について概観する。

灰色文献とは
 灰色文献とは、通常の出版流通ルートに乗らず、利用者への配布が極めて限定されている、入手が困難な文献のことだ。2014年にGreyNetが公表した「灰色文献資源の政策策定に関するピサ宣言」によると、「研究や情報において重要かつ貴重な資料である灰色文献には、紙および電子媒体で作成された研究報告書・技術報告書、説明書・レビュー、評価書、ワーキングペーパー、会議録、学位論文、マルチメディアコンテンツなどが含まれる。」とされている。ただし、近年、インターネット上で公開される資料も多くなり、その定義については現在も議論が重ねられている。
 灰色文献の例としては、白書類等を除く政府文書、政府関係機関・非営利団体等の研究調査報告書、市場動向調査報告書類、企業内出版物、テクニカル・レポート、学位論文等が挙げられる。また、2012年の第14回灰色文献国際会議では、多様な形で存在している研究データや、研究者やコミュニティにおいて交換されるメール等も灰色文献とされた。さらに、2017年の第19回灰色文献国際会議では、動画が新たな灰色文献と指摘されており、非テキスト形式の灰色文献に注目が集まっている。
 これら資料が利用されるケースのひとつとして、特許の無効資料調査がある。これは、ある発明に対して新規性や進歩性が認められず、特許権を与えることはできない、ということを証明するための先行文献調査である。このとき、論文や雑誌記事のデータベースなどの白色文献とともに、企業出版物などの灰色文献も利用することがある。灰色文献を収集するということは、国民の「知る権利」を守る役割を果たしているのだ。
 灰色文献の特性としては、書店や取次などの一般流通を経由していないこと、小数部発行で配布先が限定されていること、所在確認や入手が困難であることが挙げられる。そのため、アクセシビリティに関する課題が指摘されている。
 インターネットの普及により、一見アクセシビリティの課題は改善されたかのように思われた。しかし、URLのデッドリンク問題やサイトの閉鎖など、発信側の都合により突然非公開となる可能性があり、永続的なアクセスは保証されておらず、実際は問題が複雑化している。この課題へ対応するため、世界各地でメタデータに関する電子アーカイビングの研究が進められている。
 次章では、具体的な灰色文献を取り上げ、その特徴について考察する。

『開かれた図書館とは:アメリカ公立図書館と開架性』
 この文献は、京都大学で教育学の博士を取得した川崎良考氏が著した学位論文である。「CiNii  Dissertations」上で「図書館」というワードで検索し、検索結果を関連度順に表示したとき、最上位に表示された論文である。ここでは、書誌情報、機関リポジトリや国立国会図書館デジタルコレクションへのリンクが掲載されている。
 機関リポジトリへアクセスすると、著作権等の情報を含む書誌情報、論文の要旨と要約が公開されていた。ただし、学位規則第9条第2項により、論文の全文は公開されていない。
 国立国会図書館デジタルコレクションへアクセスすると、より詳細な書誌情報が掲載されていたが、「この資料は、著作権の保護期間中か著作権の確認が済んでいない資料のためインターネット公開していません。閲覧を希望される場合は、国立国会図書館へご来館ください。」と表示され、論文の内容を確認することはできなかった。
 学位論文は、学位を取得するために書かれた論文である。一部は審査大学に、もう一部は国立国会図書館に贈られる。その特徴として、資料価値は高いが、全文を入手することは困難であることが挙げられる。今回取り上げた学位論文についても、全文を入手することはできなかった。灰色文献はどの程度入手しやすいか等によって、濃い灰色や薄い灰色といった分類をされることがある。その観点から考えると、この学位論文は濃い灰色に近い資料であるといえる。

結論
 灰色文献とは、商業出版ルートに乗らないため入手が困難な文献であるということが前提となっているが、インターネットが普及し、資料形態が多様化したことで、現在も議論が重ねられている。また、資料価値が高い一方で、簡単にアクセスできないというアクセシビリティの課題を抱えている。図書館員は、灰色文献の持つ特性と課題を理解した上で、積極的な資料の収集・提供に努める必要がある。


参考図書

・池田貴儀,「インターネット時代の灰色文献 灰色文献の定義の変容とピサ宣言を中心に」,『情報管理』,2015,58,p199,https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/58/3/58_193/_html/-char/ja/,(参照 2022-02-20)

GreyGuideRepository (cnr.it)

・池田貴儀,「E2362-第22回灰色文献国際会議(GL2020)<報告>」『カレントアウェアネスポータル』,2021,https://current.ndl.go.jp/e2362,(参照 2022-02-20)
E2362 - 第22回灰色文献国際会議(GL2020)<報告> | カレントアウェアネス・ポータル (ndl.go.jp)

・池田貴儀,「CA1952-灰色文献のいま~2010年代の動向を中心に~」『カレントアウェアネスポータル』,2019,https://current.ndl.go.jp/ca1952,(参照 2022-02-20)
CA1952 - 灰色文献のいま~2010年代の動向を中心に~ / 池田貴儀 | カレントアウェアネス・ポータル (ndl.go.jp)

・福山樹里,「E1382-灰色文献の最前線-研究データの収集・管理・提供<報告>」『カレントアウェアネスポータル』,2012,https://current.ndl.go.jp/e1382,(参照 2022-02-20)
E1382 - 灰色文献の最前線―研究データの収集・管理・提供<報告> | カレントアウェアネス・ポータル (ndl.go.jp)

・池田貴儀,「問題提起:灰色文献定義の再考」,『情報の化学と技術』,62,2012,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/62/2/62_KJ00007905839/_pdf/-char/ja,(参照 2022-02-20)
ja (jst.go.jp)

・川崎良考,「開かれた図書館とは:アメリカ公共図書館と開架制」,『CiNii Dissertations』,2019,https://ci.nii.ac.jp/naid/500001374396,(参照 2022-02-20)
CiNii 博士論文 - 開かれた図書館とは : アメリカ公立図書館と開架制

・川崎良考,「開かれた図書館とは:アメリカ公共図書館と開架制」,『Kyoto University Research Information Repository』,2019,https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/243269,(参照 2022-02-20)
Kyoto University Research Information Repository: 開かれた図書館とは:アメリカ公立図書館と開架制 (kyoto-u.ac.jp)

・川崎良考,「開かれた図書館とは:アメリカ公共図書館と開架制」,『国立国会図書館デジタルコレクション』,2019,https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11342386,(参照 2022-02-20)
開かれた図書館とは : アメリカ公立図書館と開架制 - 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)


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