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怒りっぽさの真実:アドラー心理学で読み解く感情と認知の関係


怒りっぽい人とは?感情と認知の関係を考える

「怒りっぽい人」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。感情を抑えきれず、つい些細なことでも怒ってしまう人を指す言葉ですが、アドラー心理学では、このような性格そのものを持つ人は存在しないとされています。アドラーは、「怒りっぽい性格の人はいない。ただ、怒りという感情を頻繁に使う人がいるだけである」と述べています。これは、私たちが「怒りっぽい」と感じる状態を根本から見直す視点を提供してくれます。

怒りはコントロールできるのか?

私たちが感情的になって怒ってしまうとき、その感情をコントロールしようとするのは自然な反応です。しかし、アドラーは「感情をコントロールしようとすることは無駄である」と断言します。彼は感情を「排泄物」に例えており、これを操作しても何も変わらないと主張します。この考え方は一見過激に思えるかもしれませんが、感情そのものを操作するのではなく、その背後にある「認知」を修正することが重要であることを示唆しています。

認知と感情の関係

アドラー心理学では、感情は私たちの認知、すなわち物事の捉え方や解釈から生まれるとされています。例えば、誤解や思い込みが原因で「怒り」という感情が引き起こされることがあります。これは、ある出来事をどう解釈するかによって、その感情がどのように生じるかが決まるということです。

つまり、「怒り」を感じたとき、その感情を無理に抑え込むのではなく、自分がその状況をどう認識しているのか、何がその感情を引き起こしたのかを見つめ直すことが大切です。これにより、感情的な反応を減らし、冷静に対応できるようになるでしょう。

認知の修正と人間関係の改善

誤解や勘違い、または偏った思い込みは、しばしば人間関係においてネガティブな影響を及ぼします。例えば、相手の言動を自分に対する攻撃だと誤解することで、無駄に怒りを感じ、その結果として関係が悪化することがあります。しかし、認知の修正を行うことで、そうした誤解や思い込みにとらわれずに、相手の意図を正しく理解することができるようになります。

これは、例えば職場でのコミュニケーションにおいて非常に重要です。相手の意図を正しく汲み取り、冷静に対処することで、誤解や対立を避け、より建設的な関係を築くことができるでしょう。

思い込みや囚われに向き合うために

では、実際にどのようにして自分の認知を修正すれば良いのでしょうか。まずは、日常生活の中で自分がどのような思い込みや偏った認知をしているのかを意識することが第一歩です。自分が何に対して怒りを感じやすいのか、その原因を探ることで、どのような状況で自分が誤解や思い込みに陥りやすいのかを理解することができます。

その次に、状況を冷静に分析し、自分の認知が正確であるかどうかを検討します。例えば、誰かが自分を無視したと感じた場合、本当にそれが意図的なものなのか、それとも相手が忙しかっただけなのかを考えます。こうしたプロセスを経ることで、感情的な反応を防ぎ、より理性的に状況を判断できるようになります。

まとめ

「怒りっぽい人」という概念は、実際には存在しないとアドラーは述べています。怒りは私たちの認知から生まれる感情であり、その感情をコントロールするよりも、まずその背後にある認知を修正することが重要です。誤解や思い込みにとらわれず、冷静に状況を分析することで、感情的な反応を減らし、より良い人間関係を築くことができるでしょう。

このアプローチを日常生活に取り入れることで、私たちは自分自身の感情に振り回されることなく、より充実した生活を送ることができるはずです。感情の背後にある認知を見つめ直し、自分自身と向き合うことで、より穏やかで建設的なコミュニケーションが可能になります。これこそが、アドラーが伝えたかった「怒りっぽい人」に対する本当の理解なのです。

(この記事は、2016年11月11日にオフィスKojoのブログ「伝刻の詞」にエントリーしたものを再編集したものです。)

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