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Wikipediaの画像は著作権フリーではない!

 皆さんWikipediaは使っていますか?Google検索の検索上位にWikipediaが表示されることも多いので、おそらく頻繁に利用するという方も多いのではないでしょうか。ちなみに、私はWikipediaで記事の「作り手」側になったことはないのですが「読み手」としては頻繁にWikipediaを利用しています。最近は「タイタン(木星の衛星)」や「非弁活動」などのページを閲覧しました。(尚、記事の内容が難しすぎて、内容の半分も理解できていません。あくまで記事を閲覧したというだけです)。
 さて、そんなWikipediaですが利用していると記事内には非常に多くの画像が含まれていることに気がつくでしょう。駅や商業施設などの記事を見ると大抵はその駅や商業施設の外観などの写真が記事内に掲載されています。
 最近では、YouTubeなどでWikipediaに掲載されている画像を転載して使用している動画が時々見受けられます。出典を明記しているYouTuberもいれば出典などを明示せずに画像を使用している人もいます。誰でも編集をすることができるWikipediaですが、Wikipediaに掲載される画像コンテンツは著作権フリーなのでしょうか??
※本記事は私の脳内整理を兼ねています。

結論:Wikipediaに掲載されている画像コンテンツは著作権フリーではない!

 結論から言えば、Wikipediaに載せられている画像は基本的には著作権フリーではありません。つまり、Wikipediaに掲載されている画像は一部の例外を除いて著作権法によって保護されています。但し、Wikipediaに掲載されている画像の多くは比較的簡単にあなたが作成するブログや動画に使うこと(=二次利用)ができます。「Wikipediaに掲載されている画像の多くは比較的簡単に二次利用ができる」という点は後々解説します。その前にまずは、他者が撮影・制作した画像を使いたい場合、通常どのような手続きが必要になるのかを解説します。

他者の撮影・制作した画像を二次利用したい時に必要な手続き

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豊橋駅ビル(愛知県豊橋市)
 上記の写真は私(富岡恵那)が愛知県豊橋市で撮影した豊橋駅の駅ビルの写真です。
 あなたが豊橋市についての紹介動画を作ることになったとします。そこで、あなたは上記の写真をその動画の中で利用したいと考えました。
 この場合、上記の写真の著作権は私が保有しているため、あなたは私から写真の使用許諾を得なければなりません(※)。また、使用許諾を得るにあたり、使用条件について(例:写真の編集・加工をしても良いか)も確認した方が良いでしょう。著作権法では著作者が持つ権利として「同一性保持権」が規定されています。「同一性保持権」とは著作者人格権の一つで「著作者の意に反して著作物を改変することを禁じることができる」権利です。したがって、著作者の許諾なしに写真を編集・加工してしまうと著作者の持つ「同一性保持権」を侵害してしまう可能性があります。
 また、私が「写真の使用料として600円払って下さい」と主張した場合、あなたは動画内で私の写真を使用するにあたって600円を私に納金しなければなりません。
 このように他者の著作物を利用する場合、原則著作権者から許諾を得なければなりません。次はWikipediaに掲載されている画像についてです。Wikipediaで掲載されている画像を二次利用する場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。

(※)著作権法では「著作権者の権利の制限」についても規定されています。あなたが他者が撮影した写真を使うとしても、自分一人で楽しむことが目的(私的複製)であれば著作者の許諾は必要ありません。また、「引用」として他者の写真を使用するときも著作者の許諾は必要ありません。この「引用」については条件が中々難しく私自身どのような時に引用の要件が成立するのか正確には理解できていません。したがって、本記事では引用について詳説はしていません。

Wikipediaに掲載された画像を二次利用する

 Wikipediaの画像を二次利用したい場合、まずは当該の記事に埋め込まれている画像をクリックして下さい。すると、画面の右下に「パブリック・ドメイン」「CC 表示-継承 4.0」等の文字が確認できます。

例1:パブリック・ドメイン

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 パブリック・ドメインとは①著作権の保護期間(著作者の死後70年が経過した著作物)②著作者が著作財産権(著作財産権は著作権の一種)を放棄した作品のことを指します。したがって、著作権者の許諾を取らなくてもその著作物(今回の場合は画像)を利用することができます。尚、あなたが二次利用しようとしている画像が著作者の死後70年が経過してパブリック・ドメインになったものであったとしても、その画像に著作者の意に沿わないような悪意のある改変を行なったり、画像の著作者を自分であると偽ったりすることはできません。その法的根拠は著作権法60条によって規定されています。

著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。(以下略)

法律の条文なので難解な文章になっていますが、言い換えれば「著作物の著作者がいなくなったあとも、著作者がいた時と同様、著作者人格権の侵害となる行為をしてはいけない。」という意味です。先程も記載しましたが、「同一性保持権」(著作者の意に反して著作物を改変することを禁じることができるは著作者人格権の1つです。また、「氏名表示権 」(著作物を公表する際、著作者名の表記(名称)を決定する権利)も著作者人格権の1つです。したがって、パブリック・ドメインの画像であっても著作者の意に沿わない悪意のある改変をしたり、画像の著作者を自分であると偽ることはできません(※)。また、著作者が著作財産権の放棄を明示してパブリック・ドメインとなった著作物においても著作者人格権は放棄されないという考えが日本では通説であるため、やはり著作者の合意なく改変をしたり、画像の著作者を自分であると偽ることはできません。(いらすとやのように著作権者がある程度改変を許可している場合はこの限りではありません。)

パブリック・ドメインの画像を使った時の表記の例

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豊橋駅前の写真 著作者:Lombroso パブリック・ドメイン
 https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=427803による

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 パブリック・ドメインの画像を二次利用する時は著作や出典の表記は強制ではなく任意です。したがって、著作者名は表記をしなくてもいいのですが、上記では著作者名および出典を明記しました。

(※)著作権法60条を違反した人に対して、侵害行為の停止や予防をすることができる人は著作者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹と定義されています。したがって、著作者の死後70年が経過して著作物がパブリック・ドメインになった時に上述の人たちが誰も在命ではなかった場合、仮に著作権法60条を違反したとしても誰にもその違反行為を停止・予防することはできないということになります。

例2:CC 表示-継承 4.0

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 「CC 表示-継承 4.0」のCCはクリエイティブ・コモンズの略です。「表示(BY)」「継承(SA)」といったライセンスはクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以下CCライセンス)と呼ばれます。これらのライセンスはその著作物の利用範囲について規定しています。CCライセンスの意味は以下の通りです。

表示(BY)・・・著作物の著作権者の表示を要求する。
②非営利(NC)・・・非営利目的に限定する(=営利利用は不可)
③改変禁止(ND)・・・著作物のいかなる改変も禁止する
④継承(SA)・・・ライセンスが付与された著作物を改変、変形、加工してできた作品についても、元になった作品と同じライセンスを継承させた上で頒布を認める

 CCライセンスは「表示-継承」「表示-改変禁止」「表示-非営利-継承」などのように「表示(BY)」と他のライセンスを組み合わせて使われます。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの画像を使った時の表記の例

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愛知県春日井市にある廃墟「千歳楼」の写真 著作者:円周率3パーセント  CC 表示-継承 4.0
 https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=63764429による

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上記の写真のCCライセンスは「表示-継承」となっています。したがって、上記写真を利用する場合、必ず著作権者の名前を明示しなければなりません。また、「継承」が付与されているため、上記の写真を利用した場合は「CC 表示-継承 4.0」のCCライセンスを継承しなければなりません。

このようにWikipediaに掲載されている画像の多くは著作者から個別に許諾を得なくても一定のルールを守れば利用することができます。但し、それらの画像の多くは著作権フリーではありません。パブリック・ドメインではない画像を著作者名を明示せずに使用することはルール違反になるのです。著作権についてのルールは非常に難解で私も含めて正確に理解している人は少ないと思います。この記事が他人の著作物を正しく利用するための手助けになれば幸いです。
 それでは最後に蛇足ではありますが「フェアユース」について概説します。

フェアユースについて

 先述の通り、Wikipediaでは画像を開くと画面の右下に「CC 表示-継承」「パブリック・ドメイン」などのライセンスが表示されます。英語版Wikipedia等ではライセンス表記として「Fair use(フェアユース)」と表記されていることがあります。「フェアユース」とは「公正利用」と訳される米国の著作権法などで認められている法概念です。米国などではこの法概念が存在することにより、一定条件を満たせば著作権者から許可を得なくても著作物を再利用することが認められています。英語版Wikipediaの「ドラえもん」のページにはドラえもんの単行本1巻の表紙絵が掲載されていますが、これはフェアユース概念により成立しています。
 尚、日本ではこうした「フェアユース(公正利用)」はできません。なぜなら、日本の著作権法では2021年現在、フェアユースについての規定が存在しないからです。恐らく今この記事を見ている人々の多くは日本国内からこの記事にアクセスしているのではないでしょうか。日本国内にいる以上原則的に日本国の著作権法が適用されます。したがって、あなたが英語版Wikipediaからフェアユースの画像素材をダウンロードして自分のブログなどで利用した場合著作権法違反になってしまいます。
 日本国の著作権法ではフェアユースについての規定がないということはしっかりと押さえておきましょう。

まとめ

 Wikipediaに掲載されている画像には「パブリック・ドメイン」のものもありますが、「CCライセンス」が付与されている著作権フリーではないものも存在します。Wikipediaの画像を利用する際は当該画像のライセンスを必ず確認するようにし、必要であれば著作権者の名前を明記する必要があります。
 また、フェアユース概念が日本にはないため海外でフェアユースとして利用されている画像であっても日本国内では著作権者の許諾なしに当該画像を利用することは原則できません。

参考文献

更新履歴

2021年11月4日:公開

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2016年頃から廃墟に関心を寄せる。2018年、実際に廃墟へと趣き、廃墟訪問にハマる。現在はその廃墟がかつてどのように使われていたのか、いつ頃廃墟になったのかを特定することに力を注ぐ。 地域・店舗限定のエナジードリンクを見つけることにもハマっている。自他共に認めるエナドリ中毒者。