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N°1 フランコフォニー文学の旗手、ファビエンヌ・カノールの代表作 『腐葉土』

今回は2016年にフランス・ガリマール社から刊行されたファビエンヌ・カノール著『腐葉土』の紹介です。 私がパリ大学で文学を専攻していた頃、授業の中でたまたま出会ったのが、この作品でした。まだフランス語で作品を読むことさえ必死だった当時、その「フランス語」の概念を覆すようなエクリチュールに頭を思い切り撃たれたような感覚を受けたのを鮮明に覚えています。 ショッキングで、詩的な激しさという魔力を持った作者渾身の一冊です。 キーワード ポストコロニアル、アフリカ、アイデンティテ

    • 色の名前を訳すのって難しいよなぁ

      翻訳しているときのお困りごとって色々あると思うけれど、 その中に色の翻訳がある。 色の認識って人それぞれだけれど、作品に書かれている色は主人公が見ている色だから、読者になるべく同じ色を認識してもらうために、 訳語は慎重に選ばなければいけない。 前に趣味で訳した作品の中に、「Une mer d'un bleu noir」というフレーズがあった。直訳すると「夜の青の海」といったところだろうか。 「夜の青の海」だとなんだか野暮ったいし、詩的な文体の作品だったので、 これをなんとか

    N°1 フランコフォニー文学の旗手、ファビエンヌ・カノールの代表作 『腐葉土』