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エッセンシャルワーカー


能登半島地震の対応では、予算がないから対応できないということがあってはならないということで、予備費の拡充が図られるとのことですが、お金があっても、人がいない、使えない、という社会がそこに来ています。

2022年度の全国の地方公務員の採用試験の倍率は、5.2倍(前年度比0.6ポイント減)となり、過去30年間で最低となったそうです。さらに、ニュースでは84,804人に合格通知を出して、採用が62,286人、その差マイナス22,518人となっています。おそらく、合格通知は辞退者があることを見込んで多めに出すでしょうが、せいぜい1割増し程度ではないでしょうか。そうすると、2023年度は全国で1万人規模の人員の不足が生じたことになります。

多くの自治体で同じような状況だと思いますが、私の自治体はけっこう前から技術職や専門職の欠員は常態化していて、さらに現在では行政職(事務系)の確保もぎりぎりの状態です。

自治体の仕事には、法令で特定の資格保有者を配置しなければいけないと定められているもの(医師、建築士、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員、保育士など)がありますが、そうした専門の仕事を維持できなくなるだけでなくて、事務仕事も維持できなくなります。

この分析として、少子化による新卒人口の減少や、待遇への不満が要因と考えられるとありますが、確かに、就活で人気の民間企業に比べると初任給や就職後の給与の成長曲線は劣っていて金銭的な魅力は薄いのは事実ですが、まだ働いていないわけですから、本当のところの待遇の良し悪しは評価できないわけです。地方公務員の大変そうなイメージと報酬的な魅力の低さが相まって、そうした評価(敬遠)につながっているのでしょう。

難しいのは、「公務員が確保できれば良い。」ではないということです。かつて公務員が担っていたけれど、いまは民間が担っているという分野も多いですし、民間でしかできない分野もあります。地域内の労働者の限られたパイの中で、公務員の待遇を上げて、民間から人材を奪って確保できても、結局は地域内の生産性の総和は下がるでしょう。すでに、物流、福祉、建築土木といった、地域の生活基盤を支えてきた分野での担い手不足が深刻化しており、この状況は、早晩、公務員だけでなく、小売りや通信、その他サービス業にも拡がります。そして、そのことが、全体的な賃金の引上げの動きに繋がる点は求職者にとっては良いことですが、その中でも引上がりやすい業種(例えば小売り)と緩やかな業種(例えば介護)の間でギャップが生じ、賃金は改善したのに不均衡は拡大することになって、いま担い手不足の業種の人材確保はより困難になりそうです。

加えてここ最近は、激甚化する自然災害、新型コロナ禍、物価高騰など、地方自治体として対応が難しい課題が連続しています。そうした困難な課題にスマートに対応できなかった自治体の評判は下がり、時に苛烈な批判の的になっています。


能登半島では甚大な災害が発生し、メディアで連日、被害・避難の状況が報じられています。こうしたことが今後の公務員の採用に影響するのか確認していく必要があると思います。


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