見出し画像

#15 the story |『Best Friend』

前回はこちら▼

魔術師とは外道である。彼らの目的は魔術を行使することではない。根源に到達すること。それが彼らの真なる目的である。

玲瓏館美沙夜。彼女は孤独を愛している。優秀な魔術師である彼女は、ただひたすらに研鑽を積み重ねてきた。

幼い頃、彼女には父親が存在した。父親はマスターであり、彼にはキャスターのサーヴァントがいた。その存在を目の当たりにした彼は確信する。今回の聖杯戦争で聖杯を手に入れるのは自分なのだと。

『Best Friend』にて、彼女はキャスターと相対する。聡明なサーヴァントであった彼は、美沙夜に様々な知識を伝授する。それは彼女にとっては初めての経験であった。きっと彼女は彼に恋をしていたのだろう。

事態は順調に推移しているように思えた。しかしながら、とある一人の少女によって、歯車が狂い始める。名を沙条愛歌。セイバーのマスターである。彼女は文字通り、全知全能。その卓越した力によって、通常では起こりえない奇跡を次々と体現していく。

そして悲劇は訪れる。勝利を確信していた美沙夜の父親は、自身のサーヴァントであるキャスターに裏切られる。また彼は、沙条愛歌によって致命傷を与えられる。最後の力を振り絞り、彼は娘の元へと駆けつける…。

それから時は経ち、美沙夜はランサーのマスターとなる。この時の為に、彼女は己の技術を、ただひたすらに磨いてきた。彼女は自信に満ち溢れていた。今回の聖杯戦争で生き残るのは彼女なのだと…。


読了。とても読み応えのある作品だった。

本作は『Little Lady』の続編である。『Little Lady』では長女である沙条愛歌に関する背景が如実に描かれていた。今作の主人公は玲瓏館美沙夜である。

やはりFate作品。スピンオフではある。しかしながら、どの人物も壮絶な過去を背負っている。その過去とどう向き合うのか。そしてその過去をどのようか形で消化し、未来へと繋げるのか。

そんな問いが、本作には含まれているのではないだろうか。