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#5 the monogatary | 成長

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あの男が帰ってくる。

思えば彼とは長い付き合いだ。色んな苦難を彼とは乗り越えてきた。共に流した汗があるからこそ、今の僕と彼の関係性があるのだと思う。良いライバルだと思う。

共に英語が堪能だった僕たちは、よく遊び、よく笑い、そしてよく励まし合った。そんな彼がインドネシアから帰ってくる。

僕は海外経験は豊富な方だと思うが、インドネシアへ行ったことはない。未知の国だ。彼はそこで何を学び、どんなことに苦労し、そして何を成し遂げるのか。

「ちょっとインドネシアに行ってくる。」

彼がそう僕に告げたのはつい最近の話だ。

「インドネシアかぁ~。どうしてインドネシアを選んだの?」

「一応インドネシアって、日本と同じアジアって分類だけどさ、中々謎が多い国だと思うんだよね。今所属しているサークルでそこに行ける機会があってね。せっかくだから行ってやろうと思った。」

「へぇ、サークルで。どんなサークルだっけ?」

「AIESECっていうサークルで、海外インターンを売りにしている団体だね。日本だけでなく海外にも多くの支部があって、今回はそのご縁で行く感じ。」

「インドネシアではどんなことするの?」

「向こうの高校で日本語だったり、日本の文化を教えてくる。受け入れ先が結構、語学教育に力を入れててさ。現地の高校で教員を務める予定なんだけど、俺の経験が彼らにとって意義あるものになれば良いなと思ってるよ。」

「まあ後藤は語学堪能だからな。性格も良いし、きっと役に立つよ。」

「そう言ってくれると嬉しいよ。」

それがインドネシアに旅立つ前、僕と彼が交わした言葉だった。