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#14 the monogatary | 月姫

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ゲームクリア。

今話題の人気作、月姫をクリアした。クリアといっても、物語を完結させたのはアルクルートだけ。まだシエルのルートが残っている。聞く話によると、今回のリメイクは分作らしい。まだまだ奥が深い月姫。今後が楽しみで、夜しか眠れない僕なのであった。おしまい。

と冗談はここまで。PVに惹かれ、購入した月姫。素晴らしいゲームだった。月姫は型月の原点であり、傑作である。同人ゲームとして販売された原作は、その何枚にも及ぶグラフィックの数々など、同人ゲームとは思えないその圧倒的なボリュームゆえに、話題作となった。ゆえにそれ以降、多くの2次創作が、世の中に出回った。そんな月姫が今回、多くの年月を経て、リメイクされたのである。

主人公の名前は遠野志貴。彼は幼少期に瀕死になり、その出来事をきっかけに魔眼を宿すことになる。その名も「直死の魔眼」。その対象が何であれ、ありとあらゆる死期を、彼は感じ取れるようになったのである。そんな彼が入院時、遊び半分でベッドの線をなぞる。すると、そのベッドは見事に壊れるのである。周囲はもちろん、その結果を起こした本人も驚く。実はこの魔眼、使っているとめちゃくちゃ疲れるのだ。ゆえに志貴は苦しむ。その線を見ている限り、彼は平常心を保つことが出来ないのだ。しかしここで、彼は運命的な出逢いをする。

病院から離れ、近くの草原で物思いにふけっていた志貴。そんな彼に1人の女性が近づく。赤い髪。その髪は地面に届きそうな程に長く、その髪質は艶やかである。志貴に限らず、1度見たら誰しもが興味を抱く。そんな魅力が彼女にはあった。

「どうしたんだい、少年」彼女は気さくに彼に声をかける。まだ若かった志貴は、そんな彼女と交流を深めていく。そしてある時、志貴は彼女に告げる。「僕、モノが壊れる線が見えるんだ」そう彼が告げると、彼女は眼鏡を取り出し、彼にプレゼントする。その眼鏡を彼がかけると、彼が見る世界は、普通の世界に落ち着いていく。

これが月姫のプロローグ。物語の始まりである。

「こっからが月姫なのですよ」田中はそんな言葉を吐く。田中はオタクである。特に型月にはうるさく、FGOもプレイしているという強者である。どこにそんな余裕があるのか。同じ学生という身分でありながら、僕にとって田中は別次元の存在だ。

そんな月姫リメイクが発売されたのは2021年8月26日。またそんなに日は経っていないが、一足先に月姫をプレイした田中は、その出来の凄さに驚いていた。

「いや~、待った甲斐がありましたな!」「名作ですよ、これは!」「続きが楽しみ!」そんな賞賛の言葉を淡々と述べる。田中とは長い付き合いだが、このマシンガントークには未だに慣れない。いつか慣れる日が来るのかもしれない。でもそんな彼が魅力的だと思っている僕としては、田中にはいつまでもマシンガントークを披露してほしいと思っている。

「プレイした?」そんな言葉を彼が告げる。「いや、まだ買ってないんよ。」そう僕は答える。サークル活動で身を粉にしている自分には、中々ゲームに割く時間が無い。それでも華の大学生。遊べるうちに遊んだほうが良いのだろう。田中も勧めているし、そのうちプレイしたいとは思っている。

田中:ヒロインが魅力的だよね。アルクェイド。かわいい。本当に。はぁ~、現実でもこんな出逢いがあったらなぁ~。まあ将来に期待だね。なんせ俺、面白いから。

吉田:でもその主人公、猟奇的なんだろう。18禁のゲームだし、ちょっと手が出しにくいなぁ~。

田中:いいから一度やってみろって。マジでおすすめ。こんな出逢い、珍しいぜ。毛嫌いするなって。

吉田:まあお前がそんなに言うなら、やってみるよ。

そんな会話を田中とする。いつも通り、坂道を歩きながら。どうやら月姫の主人公は遠野邸と呼ばれる立派なお屋敷に住んでいるらしく、坂道を歩いて通学しているらしい。そんな共通点に思いを馳せながら、僕と田中は会話する。

平日は共に学業で忙しく、田中と会うのはいつだって週末だ。平日に知識をインプットし、週末にアウトプットする。そんな理想的な学生ライフを僕たちは過ごしている。田中とは中学からの付き合いで、家が近かった僕たちは、よく帰り道を友にした。大学生になり、それぞれ1人暮らしを始めた僕たちは同じ大学に通いながら、時々こうやって会い、色んな会話をする。そんな普通の日々が自分にとってはかけがえのない日々であり、貴重なものだと、いつも思う。友情とははかないものだ。だから、大事にしたいと僕はいつも思う。

田中:絶対プレイしろよ。月姫。お前の感想楽しみにしているからな。

吉田:分かったよ。結構ボリュームあるらしいから覚悟して買いますわ。買ったらまた連絡する。

田中:おうおう。真面目なお前の感想、期待してる。

そんな会話を大学近くのカフェで行い、帰路につく。

田中との会話を終え、帰宅する。財布を所定の場所に置き、いつも通り携帯を充電コードに繋げる。そしてベッドに寝そべる。そんな日々。課題は山ほどある。文学部に通う身として、週末は忙しい。幾つかの文学作品に手を伸ばしながら、月姫に思いを馳せる。

課題は山ほどある。でも時にはリラックスるするのも悪くない。そう思い、switchに手を伸ばす。ゲーマーである自分は多くのソフトを有している。しかしやる時間がない。そんな日々だ。でも田中があれほどおすすめするゲーム。気になる。田中とは古い付き合いであり、色々と破天荒な彼だが、その審美眼は超一流。奴が面白いといったゲームは、いつだって名作である。そんな言葉を信じ、月姫を購入する。大学生にとってその価格は痛いが、まあバイトを頑張れば取り戻せるだろう。

ダウンロードに時間がかかる。その間、課題に着手することにした。ゼミの課題だ。シェイクスピアを中心に学ぶ自分の研究テーマはホーキング博士の文学性。少し突飛なテーマではあるが、オリジナリティがあると自分は思っている。頑張ればきっと良い論文になる。そう信じ、僕は今日も課題に向き合う。

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どれぐらい時間が経っただろうか。ありとあらゆる資料を吟味し、検討していたら、数時間が経っていた。ふとswitchに目をやると、ダウンロードが完了していた。まだまだ課題はたくさんあったが、ひとまず月姫を優先することにした。今日は土曜日。日曜日に頑張れば、学業に支障が出ることは無いだろう。そう信じ、僕はswitchに手を伸ばす。

BGMが流れる。どこか悲壮感のある、ゆったりとした音楽。そんな音に耳を澄ませながら、タイトル画面を見る。月姫。タイトル画面にはその2文字が燦燦と輝いていた。

NEW GAMEとあったので、そのボタンを押す。リメイクに伴い、色々な機能が実装されているみたいだ。話題作のリメイク。その出来に心を躍らす。予習としてYouTubeにあった月姫関連の動画は漁った。どれも凄い出来で、Fate同様、今作も人気があればアニメ化するかもしれない。人気があれば。

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プロローグを終えた。どうやら田中の言う通り、今作は傑作なのかもしれない。シエルルートを体験する為にはどうやらアルクルートをまず先に攻略しないといけないらしい。中々のボリュームである。学業優先。そう心に誓い、そっとswitchから指を離す。今日はここまで。また日を改めよう。そうセルフトークし、今日はひとまず寝ることにした。

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田中:で、どうだったよ。月姫。プレイしたか。

いつも通り大学近くのカフェで待ち合わせをし、席に着く。話題は勿論、月姫だ。既に攻略した身として、田中は興味深々である。

吉田:とりあえず購入はしたよ。まだ全然進めてないけど。でも面白そうだね。今後に期待。

田中:おぉ~。いいね。良い感想だ。まずはアルクルートだね。だいぶ加筆されているからボリュームあるけど、BGMとかグラフィックが凄いから、プレイすればするほど深みにはまると思う。

吉田:なるほどね。まぁお前の言うことはいつも正しいからな。お前の言葉を信じるよ。

そう告げると、田中は微笑む。こいつの笑顔は妙に人を引き付ける。天性の才能だろう。落ち込んでも、田中と話すと前を向ける。そんな魅力が彼にはある。

吉田:まあまた今日とかプレイすると思うから、そしたらまた感想を述べるわ。

田中:おうおう、楽しみにしてるよ。

そう会話をし、お互い帰路に就く。