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#11 the monogatary | プレゼント

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今日は僕にとって、大切な日である。僕には恩師がたくさんいる。伯父はそのうちの1人である。僕が辛い時、伯父はいつでも僕の支えになってくれた。そんな伯父のことが、僕は大好きなのである。

そんな伯父と、会う約束をした。場所は池袋。緊張する。今日はいつも僕を支えてくれる伯父の為に、プレゼントを用意した。紅葉色のボールペンである。伯父は喜んでくれるだろうか。そんな期待を胸に、杖を用いながら目的地へ向かう。

実は最近、入院を経験していた僕は完治していなかった。ゆえに歩く際に杖を用いている。しかしながら、こんな弱弱しい姿を伯父に見せるわけにはいかない。目的地はとある池袋のホテル。受付の人に事情を説明し、杖を預ける。よし、これで準備は完璧。あとは本人を待つだけ。

早く着いてしまった。幸い、ここはホテルである。ロビーの至るところに椅子が置かれている。それにしても豪華なホテルである。前に座っているのは中国人の家族だろうか。大きな荷物を携えている。それに比べて自分は軽装備。必要最低限。いつかこんなホテルに泊まれる日が来るのだろうか。

スマホを見る。GoogleにYahooの文字を打ち込む。最新のニュースが目の前に表示される。とりわけ自分は野球をチェックする。推している球団は中日ドラゴンズである。近頃は低迷しているチーム。しかしその投手力は絶大である。良いバッターもちらほらいる。しかしながら長距離砲が手薄である。石川という期待の星はいる。落合時代を再び築いてほしい。そんな願いが僕にはある。幸い、僕の父親も熱心なドラゴンズマニアである。僕や父の応援を糧に、是非再び強いドラゴンズが見たいものである。

まだ時間がある。散策しよう。スマホで音楽を流し、散策する。さすが一流ホテル。ロビーには多くの店。どの店も商品は高価である。「すげぇ。」そんな言葉が口から飛び出す。お金持ちはこういうお店でお金を使うのだろうか。きっとそうなのだろう。お買い物も娯楽の1つである。

♦♦♦

待ち合わせの時間だ。ロビーから離れ、エレベーターへと向かう。行き先は最上階。伯父へのプレゼントはバッグの中に隠す。伯父と会うのは久しぶりだ。その嬉しさに胸が高鳴る。<ピンポン>。エレベーターが到着する。僕はそのエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押す。動くエレベーター。暫しの沈黙。<ピンポン>。エレベーターが到着する。

絶景。最上階からの眺めは格別だった。ここで伯父と食事をするのか。そこは未知の世界だった。今日は僕の退院祝いである。そのためにここまで伯父がしてくれる。伯父に対する感謝の気持ちが高まる。どうやら僕は恵まれているらしい。そんな事実を再度確認する。

「よぉ。」伯父から声をかけられる。いつも通りの伯父。その優しさが身に染みる。