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先を見据えて、八方美人を目指す仕事

 ビジネスにおいて様々な職種がある。その一つに、営業がある。営業と聞いて、その仕事内容はどのようなものをイメージするだろうか。
 私は、営業職は社内では売り上げを伸ばせと圧力をかけられ、社外では邪魔者をされる、という悪いイメージを持っていた。しかし、11月1日に、インターンシップとして営業同行をして、今までのイメージががらっと変わった。

 キリンビールのインターンシップ、4回目は、営業同行である。
 キリンビールの社員、木村さんと私の二人で、4つのスーパーをまわって、キリンビールの商品を陳列する仕事をした。
 私が同行させてもらえた、その日は、とれたてホップ一番搾りの発売日だった。そのため、とれたてホップ一番搾りを買ってもらうため、売り場面積を広く使って目立つように陳列作業をした。

 この時点でわたしの営業のイメージとは異なる仕事内容だった。商品を置いてもらえるように店長にプレゼンしたり、他社との競争に打ち勝つためにパソコンでデータを分析して戦略を考えたりするのが営業だと思っていたが、私が同行したのは、上記のような仕事が終わった後の段階に属するものだった。

 日本のスーパーは季節によって、商品や陳列が模様替えされる。ハロウィンだったら、カボチャの小物が商品の近くに置かれたり、期間限定の商品があったら綺麗に立体的に積まれたり、POPや造花などで人目を引いたりする。他にも、「○本買ったら○○がついてくる!」や「はがきにレシートを貼ってプレゼントが当たる!」のようなキャンペーンが展開される。このように、ただ商品を置くだけでなく、置き方の工夫や、販売を促進するための工夫をする仕事だった。

 スーパーからスーパーを移動する道中で、どうしてこの仕事を選んだのか、どんなことに普段気をつけているか、木村さんに質問をした。

 この職を選んだ理由は、もともとお酒屋さんでアルバイトをしていたので、この職に就いている人の仕事を間近で見ていたから、だと言う。子どもが成長し、フルタイムで働こうと思ったときに、その仕事を思い出して応募をしたそうだ。
 普段気をつけていることは、三方ヨシ!ということ。三方というのは、会社、お店、お客のことで、全員がいい思いになるように気をつけていると言っていた。会社にとって良いことと言えば、自社製品がたくさん売れることだけど、だからといってお店に売り出したい商品ばかり並べさせても、お店は在庫を抱えてしまったり、客にとっても欲しいものが買えなくなったりする。そのため、お店で売れ筋の商品、在庫状況、キリンビールとして売りたい商品を把握した上で、バランス良くなるように自社製品を陳列していると言っていた。

 三法ヨシ!の考え方は、長きにわたって売り上げを上げるために重要だと気づいた。また、ビジネスの関係者と、良い関係で居続けることの重要さは、営業に限らないことだと思った。挨拶や世間話をしたり、相手の仕事が楽になるようにちょっとお手伝いしたり、ときどきお土産やプレゼントをしたり、人間関係を良くする秘訣をこのインターンシップで垣間見ることができた。
 情けは人のためならずということわざがあるが、今ちょっとした気遣いをしておくことで、未来の自分のためになる。これは、短期的な目線だけでなく、長期的に利益を求めようとする視点を持った行動をしているということだと考えた。

 営業同行のインターンシップを経て、営業に対するイメージが変わった。一つは、営業と言ってもそこから仕事内容は細分化されていくこと。もう一つは、営業は嫌われ者ではなく、全方位に対して良い人であるようにバランスをよく見る人だということが分かった。
 さらに分かったことは、利益はお客様が商品を買ってくれることで生まれるが、その販売の現場に一番近い職種が営業だと言うこと。あるスーパーでは、陳列の最中にお客様がとれたてホップ一番搾りの6缶セットを手に取ったり、籠の中からバラのビールを買い物カゴに入れたりしていた。

 キリンビールインターンシップは全5回あり、およそ一ヶ月に一回開催される。ビール原料が原料が生産され、工場で加工され、消費者に宣伝される過程とそれら仕事に関わる担当者の思いを聞いてきた。そして、今回はついにビールが消費者のもとに届く瞬間に居合わせた。ビール造りの苦労や並々ならぬ思いが乗っかったビールが売れていく様を見て、感動した。
 この感動は、家に帰って、とれたてホップ一番搾りをグラスに注いで飲むときも感じた。ビールが持つ物語を原料のところからスーパーにいたるまで想像できたからだと思う。このような物語を知るだけで、ビールがもっとおいしく、食事がもっと楽しくなるので、ビールを飲む機会には、とれたてホップ一番搾りを用意して、このインターンシップで知ったビールの物語をみんなに語りたい。

 


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