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アンビシャス~北海道にボールパークを創った男たち~

今回は読書感想文と備忘録的な記事。

「エスコンフィールドはどうできたのか」

2023年。
ついにエスコンフィールド北海道が誕生しました。

新球場設立の発表から絶対に行きたいなと思いつつ、
完成した姿や映像を見て行きたいなと思いつつ、
一方で遠いからなかなか行けないなぁと思っているとき
この本に出会いました。

めちゃめちゃおもしろかったです。

プロ野球ファンの方だけでなく、
スポーツビジネスに興味のある方、
新しい挑戦をしたい方、
地域活性化を目指してる方、
いろんな方に刺激を与えてくれる1冊です。

エスコンフィールド北海道がどのようにできたのか。
人間模様を中心によくわかる一冊
でした。

作者は、

を書いた鈴木忠平さん。

鈴木さんの本は「嫌われた監督」が面白くて、
「新球場」×「鈴木忠平」は読まないわけにはいかず、
発売してすぐ買って2日で読み終わりました。

今回は読もうか迷ってる人向けに印象に残ったシーンを自分の備忘録もかねて書いてみたいと思います。

登場人物と新球場設立の背景

登場人物

特に印象に残った人物として、
・日本ハムファイターズのメンバー
・北広島市メンバー、
・札幌市長
が自分の中では印象に残りました。

紹介しないとわかりにくい部分があるかもでしたので掲載しました。

それと新球場設立理由のざっくり。

①経営面
・ファイターズは札幌ドームを借りており巨額のお金を支払っていた。
・札幌ドーム内の飲食やグッズ販売等の利益も札幌ドームに支払っていた。
⇒その他にもあるが、経営面としては選手人件費と同じくらいの金額を札幌ドームに支払っていた。
②選手の負担面
・プロ野球の試合時には人工芝が設置されるがこれが薄く、選手のプレーにも影響があった。

ざっくりこんな感じ。
今でもこういった体系の球団もあるものの、最近ではほとんどの球団が形は違えどホームスタジアムと球団一体の経営がなされています。

ここからは本の掲載順に印象に残った話を書いていきます。

「D資金」

D資金のDはダルビッシュのD。
当時ポスティングシステムによるメジャー挑戦の際は、選手の契約により元の所属球団に入札金という形で金銭が支払われていた。
今は上限があるが、当時は無くて(たぶん)、

D資金は、5,000万ドル(1ドル=100円で50億)。
でかい。
これを使ってまずは球団の今の課題を解決(札幌ドームをホームスタジアムとして今より改善できないか)しようというのが物語のスタートだった。

ダルビッシュの移籍からかなりの時間がたったが、新球場設立までの間にこの「D資金」は大きな資産になったと思われる。

エスコンフィールドの開幕式でダルビッシュのコメントが流れたことは、WBCでの活躍だけでなく「D資金」の存在もあるんだろうなと思った。

議論にならなかった新球場案

最初の新球場設立案は議論にならなかった。

「将来的にはそういうビジョンが必要なのかも知れない」
という反応。

ここから先に進まなかった。
結果的に前沢は一度球団を去ることになるのだが。。。

これってサラリーマン的にはすごい共感できる言葉ですよね。(笑)
絶対一度は通る道というか、言われるというか。

だからと言って上司がこう言う事を理解できてしまうからまた困るんですが。(笑)

みんなが本気になって変わろうとしない限り組織は変わらないんですよねって思った話。

親会社の反対

新球場は500億と報道され、これが新聞に抜かれたのが本社への説明前だったのがよくなかった。
親会社日本ハムの営業利益が500億、
年間設備投資が360億の中、
そういった状況で野球場に500億。

これが壁だった。

上の議論にならなかったと話は被るけれど、この時点で、
「いいじゃん。作っちゃいなよ。」というのは株主に対する職務放棄なんですよね。

おかしいことには反対する。それも上司の役目。
そして、本気でやりたいならそれを説得する仕事をしなければならない。
本質は同じだよなーと思った話。

北広島市を知っていますか?

当初北広島市は球場を作り、そこでファイターズの2軍の試合誘致を考えていた。

ただ、ファイターズは札幌ドームを出て新球場を考えていると伝えられた。

北広島市の担当が本気になった理由は1つでないが、野球に関わりがあったことは大きい。
このエピソードも面白いので読んでもらいたいが(ミラクル開成)。

あと1つおもしろいエピソードが。
東京で北海道の各都市の自治体PRイベントに出張した際、
「北広島市を知っていますか?」と調査した。
100人に1、2人しか知らないだろうなと思っていると、

結果は、0人だったそう。

これには愕然としたそう。

きっと誘致すれば全国の野球ファンには知れ渡る。

一方で誘致合戦で戦うのは大都市の札幌市。

それでも本気で取り組んでいこうとする北広島市の担当に感銘を受けたエピソード。

札幌市の苦悩

大都市札幌も苦労していた。
大都市であるがゆえに意思の統一は難しかった。

正直(書いてはないが)、球団としては集客やアクセスを考えれば札幌市内に新球場を作ることが一番理想だったのかもしれない。

ただ、どこに誘致しても反対意見は消えず、球団が目指してるものを提案できなかった。
その苦悩が描かれています。

市議会では直前までどうどうめぐりの議論がなされ、札幌市長が熱を込めて話したエピソードは胸が熱くなりました。

札幌市はどうせタカをくくって球団がでてかないとおもってたんだろと思う人もいるかもしれませんが、実際のところはわかりませんがこの本を読むと少なくとも担当者は全力を注いでいたことが理解できると思います。

日本シリーズ制覇

日本ハムファイターズは北海道の前には東京ドームがホームだった。

当時はガラガラの東京ドームのイメージがあったそう。

そこから北海道に移転し、新球場建設を検討し始めた年。
2016年に球団は日本一となり札幌で優勝パレードを行った。

2016/11/20
本格的な冬を感じさせる寒い日。
親会社役員は言葉を失った。

かつて、ここまで大勢の人が同時に喜んでる光景を見たことがなかったという。

価値観が多様化した現代社会において、大通りを埋め尽くすほどの数の人が同じ瞬間に同じ喜びを共有していた。

東京にいたらこの光景はなかった。
ファイターズが未開の地へ踏み出したから手に入れたもの。
人生観を揺さぶられるできごとだったという。

この年の日本一は新時代(新球場設立)への大きな日本一だった。

運命の日

新球場建設地発表の前日、
北広島市の担当は、家族に切り出していた。

「明日選ばれなかったら市役所をやめようと思う。」

担当として、市議会議員や市民を含め町ぐるみでやってきた事業。
期待を持たせただけに、今の立場にいられないと感じたエピソード。

公務員ですよ。
かっこよすぎるでしょ。
ちょっと泣きそうになりましたわ。

これは多くは書かないので読んでほしい。

「あなたの心にフロンティアはありますか?」

作者が取材で感じたことがこの言葉に詰まっています。

心の中に未開地をもっている人とそうでない人との心の距離は遠く、
そこを詰めることができた北広島市で設立が決まったボールパーク。

新しいことに挑戦することだけが正義ではないけれど、

自分の心にいつもフロンティア精神をもって生きていきたいと感じた。

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