見出し画像

おいしいおこぼれ

4月から部署異動になり、新しい業務に就きはじめた。前任者も県内の別の場所へ異動となったため社内におらず、また私が時短勤務なのもあって引き継ぎがなかなか進まない。

双方の人事課や上司に調整してもらい、4月に入ってからも平日に何日かだけ引き継ぎを受けた。この前任者のおっちゃん、とにかく人望が厚い。
(目上の人だけど、親しみやすいおっちゃんのイメージなのでここではそう呼ぶ。)

うちの部署は毎日いろんな人が出入りする。そして訪れるほとんどの人が、引き継ぎのために来てくれているおっちゃんを見つけたら、通りぎわににこにこと嬉しそうに話しかける。
「あれ、〇〇さん異動やめてもどってきたんか〜?」
「こっちの籍も復活したらいいやん!」
「〇〇くんこの書類、どうしたらいいかなぁ」

おっちゃんも、『せやねん、こっち戻りたいわぁ』『寂しいから、送別会で撮った写真をデスクトップにしてる』『俺のパソコンの権限、戻しといてくれるかぁ?』と。
誰にでも愛想良くて誰とでも楽しそうに会話をし、全員との仲の良さがうかがえた。みんなに愛されてる人だと思った。

おっちゃんが来る日は、私と上司宛に日程のメールが届く。それを知ってる人たちが私に、彼は次いつ来るのかを聞いてくる。みんな心待ちにしている。

おっちゃんはおっちゃんで異動先の仕事があるので、引き継ぎは残念ながら終わった。
しかし大きな仕事がいくつか聞けておらず、この間の土曜日、一日かけて最後の引き継ぎをしてもらった。


土曜日だというのに、私たちの他にも何人か出勤してきた。ちらりと様子を見たが、急ぎの仕事でもなさそうで、ゆるりゆるりとおしゃべりがてら、という感じ。出勤じゃないけどたまたまお出かけで近くに来たからと顔を出す人もいた。見事に全員、差し入れのおやつを持って。

引き継ぎのために来ているとみんな知っていたので、私の分までおやつを買ってきてくれた。
どら焼きとか、可愛いマカロンとか、珈琲とか。
人気者のおっちゃんから引き継ぎを受けることになったおかげで、おいしいおこぼれをたくさん貰った。


おこぼれが嬉しかったのもあるが、人柄が良くて仕事でも信頼が厚いおっちゃんと関わりを持てたことが嬉しかった。
ほんの数日しか会えなかったが、見習うところがたくさんで、尊敬する人がひとり増えた。

私もこうやって、みんなに頼られる愛されおばちゃんに、いつかなれるだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?