小言


冬から春に変わる頃、衣替えをした時にもう着る機会もないような冬服をまとめた
旦那以外の〝誰か〟に会うために買ったと言っても良いくらい、普段でも着ないような精一杯の若作りができた洋服。
夏が終わる秋口の頃が売れ時だと旦那から聞いて、夏が終わるまでタンスの奥にしまっておく

去年の夏服を出した
たくさんの思い出が詰まっている夏服
楽しかった思い出も、苦い思い出も、全てが懐かしくて
まだ1年しか経っていないのに
『もう着れないな』って思った

見る度思い出してしまいそうだったから
全部まとめて、リサイクルショップに行った
10着くらい出したのかな
値段なんてどうでも良かったんだけど
捨てられなくて。

査定が終わった
全部で500円だった
わたしの思い出は500円だった
凄くしっくりきちゃって
キリが良すぎて
もうこの先、一生思い出す事もないんだろうなって気持ちにさせてくれた
500円
煙草を買うのには少し足りないから
子供達と一緒に食べるお菓子をたくさん買った

たった10着だったけど
凄くすっきりしちゃって
たった500円だったけど
最初から最後まで私を満たしてくれた

洋服を買う時
旦那以外の顔を頭に浮かべながら選んでいた
救いようのないバカな自分を頭に浮かべて
『しょーもない』と思いながら当たり前だのクラッカーを食べた
止まらなかった



要らない物を売って
値段が付くだけで嬉しい
それが自分の想像より値が付くともっと嬉しい
部屋がキレイになる
タンスが広くなる
お金が手に入る
こんなに幸せな事ってない
こんな小さな幸せが、いつまでも続いて欲しいと思った




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