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新婚旅行はハワイ?沖縄?by婚約者


ピンクの油性ペンで
私の卒業アルバムの裏表紙に
角ばった字で書いてあります
たった2行の文章なのに
今でも私の脳裏には、しゃがみ込んでピンクの油性ペンを持って
少し隠すようにして書いてくれている大好きだった男の子が
しっかりと、でも少し淡く残っている




中学3年生の夏
私はその男の子に一目惚れをした
まさに〝恋〟に〝落ちた〟のです。
1回も同じクラスになったことの無い
同じ委員会になった事も無い
交わった事が無いその男の子に
ある日物凄い勢いで恋をして
始めて言葉を交わしたその日には
『好き』と『大好き』と伝えて
『結婚して欲しい』というお願いをしていた。

新婚旅行は沖縄かハワイか。どっちかに行きたい!
どっちが良い?どっちでも良い?!ダメだよ!
ちゃんと決めてよ!!!とか勝手に話を進めてたり。

子供の名前は≪翔≫という字を使いたいと黒板に書いたら
私の書いた≪翔≫が間違えていて
笑ながら書き直してくれた彼にまた惚れてしまった
周りは笑っていた
やれやれバカな女が。みたいな

初めて会話してから1時間で
もうその瞬間から私の頭の中は彼でいっぱいだった
いつもギャーギャーとうるさい女だったので
みんなからは、そんなに本気で言ってるわけでは無いと思われていたけど
私は本気でマジで恋をし始めたのだった


それが確か夏。入る前だったかな~
1学期の終わり頃だったかな
その日、私が彼と初めて会話して以降は
やっぱり接点なんて無くて
廊下ですれ違う度に死ぬほどドキドキしたり
調子が良い時は名前呼んでキャーキャー言ったり
休み時間には、彼が校庭のどこにいるのかチェックしたり(ストーカー)

悲しい事に、そんな事ばっかりしていた事は思い出せるのに彼がどんな反応をしていたか。とか、全く覚えていない。
しょうがないよねもう20年前の話だもん


本当に全く接点が無いもんだから
やはり時間が過ぎていくにつれて
その熱も冷めていってた気がする
そりゃそうだ。瞬間沸騰して。ねえ。
それでも、あのフォーリンラブの衝撃は凄いから
冷めたとしても全然普通に好きだった気がする
なんなら、どうしてこんなに好きと言っているケツの軽そうな女に告白をしてこないのか不思議だった
そのようなおバカさんでは無かったのね。
本当良い男。





3学期になった
高校受験も大詰め
私は普通以下のレベルだったので普通レベルのどうしても行きたい高校に受験するにはとにかく勉強するしかなかった
当然彼との接点もなく、かといってグイグイいくのもなんか違う気がしてしまって
そのまま

勉強と友達との思い出作りと。
そんな毎日



卒業式の練習をした日
出来上がったばかりの卒業アルバムが配られて
先生の粋な計らいがあり、3年生全クラスが体育館に集まったその日にアルバムの思い出のページへのメッセージを書き合う時間を設けてくれた

自分のアルバムを抱えて
メッセージを色んな人に書いてもらう時間
彼の姿を探したけど見当たらなかった

彼と同じクラスの男の子に居ない理由を聞いたら
その日その彼は私立高校の受験日だった

絶対に書いてもらいたかった人に書いてもらえなかった
どんどん埋まる思い出のページ
でも1番書いてもらいたかった人に書いてもらえなかった




私はその日から
毎日卒業アルバムを学校に持って行った
彼にメッセージを書いてもらいたくて
でもわざわざ違うクラスに居る彼を訪ねてメッセージを書いてもらいに行くことが出来なかった

あの日の勢いはどこへ
というか、そもそももうあの日が幻だったのでは無いかと思えてしまうくらい
私が彼に一目惚れした日がとても遠くて遠くて
どうしてこんなに好きになれたのに
ちゃんと好きになれたのに
私からもっと話しかけに行ったり
もっとアプローチしたり
こんなに好きならもっと早くに告白なりなんなりすればよかったのに

【もうすぐで卒業】という
なんとも言えない悲しさ・寂しさが
【卒業アルバム】というアイテムが加わって
更になんだかセンチメンタルにさせた。わたしのことを

今、私があの日のテンションで絡んだところで
もしかしたらもう笑ってくれないかもしれないし
迷惑かけてしまうかもしれないし
この気持ちは覚えてる
非常にメンタルが崩壊していた
告白してもないのに振られてる感じ






卒業式前日
もう、これ以上の後悔はしたくない。と
私は小さなメモに自分の携帯の番号とアドレスを書いた
それを明日着ていく制服のポケットに忍ばせた
学校の鞄は後輩に渡す約束をしていたから
ショッパーに卒業アルバムをしっかり入れた
明日、告白しよう
そう決めた




卒業式当日

式が終わって
校庭に後輩と親御さん達が作った花道を通って校門を出る

という卒業式のいつもの流れ
その後は、また校庭に戻って
後輩と写真を撮ったり後輩から手紙を貰ったり
友達とジャンプして写真を撮ったり
思う存分、最後の時間を楽しんだ
ポケットに忍ばせたメモを確認して
彼を探した


、、、、、、いない

え?不在?どちらかというと陰の方だし
こういうの好きじゃなさそうだし
帰っちゃった???え???嘘????

事情を知っている友達も一緒に探してくれた
そしたらいたの

いろんな人に囲まれてた
いろんな人が彼の卒業アルバムを囲んで
メッセージを書いていた

出遅れた
でも、まだ帰って無くてよかった
いてくれて良かった


人がまばらになった時を待って
ようやく近づけるチャンスが来て
わたしは、しゃがんでいる彼の横にしゃがみ込んだ

顔を見る
すかさず自分の卒業アルバムを出して
書いてと言って
書かせてと言って
お互いのアルバムに書き合った

隣に彼がいる感触に物凄いドキドキして
いやもう本当人生1番ときめいて
メッセージが止まらなくて
私は最後に『大好き!!!!!』と大きなハートを添えて
メッセージを書き終えた。

好きだと言いたい
でもアルバムに書いてしまった
これは告白して良いのか。
そんな事より、早く!メモを!!!!!!
もう、なんかメッセージを書き合ってる時間が夢の様で
一瞬で嬉しすぎて
本当は色々話したい事もあったのに
携帯番号とアドレスを書いたメモを渡すのに必死で

『メールしてね!』って言うだけでいっぱいいっぱいで
無事に連絡先を渡せた


耳が真っ赤になってた彼が好きだとやっぱり思った






その後、知らない番号からショートメールが届いた
彼だった。
契約でメールアドレスの設定をしていないようだった
だから、私があの時アドレスしか渡していなかったら彼は連絡できなかったのだ
グッジョブ自分。まじさんきゅう!!!!







その後は、連絡を取り合い続けて
質素なメールに対してグイグイ責める私
怖いものは何も無いので猛アタックした末に
無事に彼氏♡彼女になりました

高校はもちろんバラバラ
時間を合わせて会ったりもしたけど
私は新しい生活に楽しさを知ってしまって
あっさりと別れてしまいました



まじであっさり終わった
もうちょっとちゃんとお付き合いすれば良かったのに
責めてキスくらいしても良かったのに
手を繋ぐこともなく
それは当たり前のように終わってしまった




今、どこで何をしてるんだろう
20年経った今になってもこうやってnoteに書いちゃってんだよ!キモイよね!
私は割と記憶は喪失するタイプなのに
この事は本当に忘れられないし忘れたくもない

忘れたくても
父が卒業式に回してくれていたビデオに
ばっちりと彼とのやり取りを残してくれていたので
いつでもそのビデオを見ればタイムスリップできるわけ

本当ナイスだよ父。
当時は、いやwwこんな至近距離で撮るなよwwww私が大好きって書いてるのとかwwwwモロバレやんけwwwwwwwwってまじでデリカシーないなって思ったけど

時を超えて父の奇行は、私にとって大切な宝物の証拠として残されているのだった






自分が、その彼だと
ピンときたら連絡ください。
うそぴょーん。




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