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○山口代表 定例記者会見 2024年3月5日(火)11時 @衆院第7控室

○山口代表 定例記者会見 2024年3月5日(火)11時 @衆院第7控室

【冒頭発言】
≪東日本大震災からの復興≫
 3・11を前にして、去る2日、福島県の浜通りに伺った。視察を3カ所行い、福島県本部が主催する復興加速化会議は、地域の市町の首長にも参加していただいて開催した。福島県庁に赴いて、県知事に、われわれの活動報告をするとともに、知事の復興に対する考えも伺ってやりとりした。その点について、概要を報告したいと思う。
 視察は最初に、日本原子力研究開発機構の楢葉遠隔技術開発センターを見た。ここでは、事故を起こした原発施設で、放射線量の高い状況から、どう遠隔操作でデブリなどを取り出して、廃炉の過程を安全に行っていくかという基礎的な技術を開発しているところだ。ロボットアームを炉の中に入れて、デブリを取り出すような具体的な装置の開発、炉の中を点検するためのドローンを小型化して、運動性能の良いものにしていくという技術開発が行われ、さらには、階段など複雑な構造を移動できる4足で歩行するロボットを開発中だ。操作の仕方も含めて、着実に技術開発が行われていることを目の当たりにした。
次に、大熊町立の義務教育学校と認定こども園を合わせた「学び舎 ゆめの森」という教育機関を視察した。ここは、0歳から15歳までの対象年齢の子どもたちを教育する施設であるが、非常に、オープンな施設の造り方になっており、大熊町は、読書をこれまでずっと重視してきたということから、その伝統を生かして、あらゆる壁面を活用して、書棚にしている。あらゆる年代の子どもたちに必要な図書2万冊の蔵書持っているということであった。さらに、舞台と食堂を一緒にして、演劇をやったり、音楽をやったり、舞台の外に出られるようなステージと結び付いていて、周辺には復興住宅が立ち並んでいるが、地域住民にもオープンな活動ができる造りになっていた。大変、斬新な建物の造り方であるとともに、教育も大規模な複式学級と、認定こども園の対象年齢の子どもたちも含みながら、いろいろな年代が幅広く交流できるというユニークな試みで、子どもの自由な自発性を育てる点で画期的な試みだと感じた。一方で、カリキュラムを作らないで、教員が学年ごとの授業を行うスタイルは採っていない。しかし、ICT教育で、端末を子どもたちに与えて、学習指導要領に則った学習内容を個々の児童、生徒に活用させることができる。それによって、自発的な学習が進み、最終的には卒業年次で、この義務教育課程の必要なものが確実に習得されるという教え方である。事故によって全てを失った大熊町で、新しい教育の試みとして、これが成功し、良いモデルとして広がっていくことを期待したいと思う。
 三つ目は、福島国際研究教育機構、いわゆるF―REIという施設を視察した。ここは昨年、事務局が発足して、委託研究活動が始まったところである。これからは、自前の研究員をそろえて、研究活動をしていく。さらには、研究施設を整備していく。事務局の隣接場所に広大な研究施設の用地が既に確保されていて、いずれ建設が始まる。国では、1000億円程度の予算規模で整備していく構想が既に示されているので、この研究教育機構が「イノベーション・コースト構想」の中核として、地域のさまざまなイノベーションの企業や研究機関と連携しながら、研究と教育、人材育成の面で司令塔的な役割を果たしていくことが期待される。こうした三つの施設を視察した上で、確実に創造的復興に向けて歩みが進んでいることを実感した。これが、本当に身を結んでいくためには、しっかりと支援を継続していく必要があることも感じた。
復興加速化会議を行い、首長の皆さんからそれぞれ要望をいただいた。意見交換もした。そこで強く感じたことは、地域、町によって、復興の進捗度合いに、ばらつきが出ている。特に住民の帰還や、居住地域の整備が遅れているところがある。進捗状況に違いが出てくることはもちろん、あり得ることであるが、一番遅れているところに、しっかりと目を向けて、その復興を支え、展望を示していくことが重要だと思う。
それぞれの自治体で、帰還を望んでいる住民の方が戻れないでいる状況がある。帰還を望んでいる限り、なぜ戻れないのか。その環境を整えていくことが極めて重要だ。せっかく帰還を希望していながら、条件がかなわず、環境整備が進まないということになると、帰還の希望がだんだん萎えていってしまう。地域、コミュニティーの再生ができなくなってしまう。発災から13年が経つ。帰還を希望する人たちのことをしっかり考えて、帰還が実現できるような環境整備を国がしっかり手を差し伸べていくことが重要だ。第2期「復興・創生期間」として5年間、取り組んでいるが、あと2年間しかない。そこで、首長たちが要望するような住民の帰還や、なりわいの再生、「イノベーション・コースト構想」などに基づく、新たな産業の形成というところまでは、なかなか至りきれないこともあると思うので、その先をどうするかを視野に入れながら、新たな復興計画見直しの議論をしていくべきである。また地域の方々に対する展望、希望をもたらすことができるようにしていくべきだと思う。
与党で政府に対し、被災地の復興のあり方について、提言を重ねてきた。いよいよ第12次の提言となる。今、準備をしているところであるが、被災地のさまざまな意見や要望を受け止めた上で、12次提言に反映していきたい。
最後に、知事と会って、3点指摘があった。一つは、風評を払拭してもらいたいと。残念ながら、福島県産や被災地の食品などについて、輸入規制をしている国がいくつか残っている。大部分は、国際社会の中で解除されているにもかかわらず、さまざまな外交的な取り組み、思惑も含めて、輸入規制が残っているのは、極めて不当だと。科学的根拠に基づいて、一刻も早く解除してもらいたい。特に、アルプス処理水を巡っては、科学的根拠に基づいて、国際的な監修の下で対応が進んでいるにもかかわらず、日本産の水産物を全面的に輸入規制している隣の中国など、全く不合理な対応であるということを厳しく懸念を示していた。政府として風評を払拭する取り組みを一層強めることが重要だと思う。
また、指摘があったのは、風化ということである。時間の経過とともに、つらい過酷な災害、その間の生活は、むしろ乗り越えていきたい、記憶の外に消していきたいという気持ちになることはもちろんあり得るわけだが、二度と繰り返してはならないことと、まだ帰還できてない人々がいるということ、復興の進捗度合いに差が出ているということを、しっかり見据えた上で、風化させない政府の継続的な取り組みが必要であると強調していた。
もう1点は、F―REIのあり方について、ここが極めて重要な拠点になることは間違いないが、「イノベーション・コースト構想」は、さまざまなイノベーションの研究や機材の製造・開発のポイントがいくつもある。再生可能エネルギーの水素活用など取り組んでいるところもある。F―REIだけではなく、全体が連携して、「イノベーション・コースト構想」がネットワークとして生かされ、成果を上げていく進め方を期待したいということだった。以上、知事からの3点は真剣に受け止めた上で、12次提言に生かし、その後の復興計画の見直しの議論にも反映させていきたいと強く思っている。

【質疑応答】
≪防衛装備移転≫
Q、きょうの参院予算委員会で、西田参院会長が次期戦闘機開発の必要性、完成品の第三国移転などについて質問した。これに対する首相の答弁をどう評価するか。
山口)国会の予算委員会という場で、首相がきょう西田実仁議員の質問に対して、かなり丁寧に、できるだけ分かりやすく説明しようという姿勢で答弁をされていたことが印象的だった。先月の党首会談の折にも、このテーマについては、国民の理解を進めていくことが重要だという首相の認識も示されていたので、国会の論戦の場で、TV中継付きの下で丁寧な発信をしたことは良い機会だったと思う。その上で、西田議員からいくつかの論点で指摘をして、答弁があった。これについて、党内でも受けて、しっかり理解と議論を深めていくことが大事だと思っている。きのうから始まった参院予算委員会であるが、他党の議員からも防衛装備品の移転について質疑が行われているので、ようやく国民に、こうした課題についての国会での議論が伝わる機会になったかと思う。国民の皆さんの受け止めなども注視しながら、さらに議論を進めていくことが重要だと思っている。

Q、特に、どこが論点になると考えるか。
山口)次期戦闘機の開発、取得が必要であることは、F-2が耐用年数に限界がくることは明らかだから、その点での認識を持った上で、政府・与党として一昨年、共同開発を決めたわけだ。もう一つ、わが国で単独で開発するという選択については、技術の面、コストの面で限界があると。これを国際共同開発によって、3カ国の優れた技術を総合して、いいものを取得すると。それからまた、複数の国の参加によって、生産する量が増えることによって、コストダウンにつながっていくと。それが、ひいては、わが国の防衛費の費用を効率的に生かすことができると。こうしたことは織り込み済みで、一昨年、閣議決定をしたわけだ。
 ところが、閣議決定した時には、完成品を第三国に輸出するという前提はなかった。つまり、完成品を第三国には輸出しないという前提で決めたわけだ。しかし、政府は、決めた後の3カ国の協議の過程で、完成品の第三国輸出が他のパートナー国から要請されることによって、さてどうするかと。これまでの方針を変える必要があるのではないかと。そういう考えに至ったということだ。きょう初めて、その点について、なぜ変わったのかということを首相から説明がなされたと受け止めているので、その内容について、わが党としても検討するとともに、国民の理解を得られるかどうか、ここもしっかり注視していく必要があると思っている。

Q、党内からは、「歯止め」が必要ではないかとの意見が出ている。具体的に、どういった歯止めが必要だと考えるか。
山口)歯止めという言葉が妥当かどうかは別にして、きょうの質問でも西田議員から指摘があったけれども、一般的に共同開発の完成品を第三国に輸出することを認めるべきだという結論にすると、あらゆる装備品が輸出できるようになってしまうのではないか、それでいいのかと。これまで、わが国が武器輸出を抑制する立場で長年、取り組んできた国民の理解、国際社会の日本に対する信頼が一気に崩れてしまうのではないかという懸念を持たれかねないと。その点についての丁寧な議論が必要であるという問い掛けだったと思う。その点について、政府として、どう対応するか。これまでの一般論としての、完成品の第三国輸出を認めるべきということだけでは、十分に国民の理解を得られないのではないかという問題意識が出てきていると思うので、それに対応する取り組みを政府にもう一段、求めていきたいと思う。
 いずれにしても、どうするかということについては、いろいろな意見もあるし、他党の議員からも、いろいろな指摘も出ているところであるので、まずは、きょうのやりとりを基に、今週、政調で議論がなされるものと思っている。

Q、きょうの首相の答弁は、第三国移転を認めるかどうか判断するのに十分なものであったか。今後の国会審議の中で、首相にどういった説明を求めたいか。
山口)そこも含めて、きょうの答弁を踏まえて、政調でよく議論を重ねて、国民の皆さんの捉え方を背景にした意見の交換を、しっかりやることが大事だと思う。
 先ほどの質問にあったが、きょう特に、第三国輸出を前提にしなかったのに、それをやるべしと変わっていった理由について、首相から、首相の言葉での説明があったと思う。これまでの報道や、言いぶりからすると、第三国輸出を認める方がコストダウンにつながる、これがメリットだというような理由付けが多かったわけだけれども、きょうは首相の言葉で、要すれば、日本が次期戦闘機を求める性能、求める理由にふさわしい共同開発ができるようにするためには、完成品の第三国輸出ということが、他のパートナー国と同じような取り組みができるという条件の下で、わが国の必要となる戦闘機の性能が取得できるようになる、そういう交渉が可能となるというような説明であったように思う。こういう説明は、あまりこれまで国民の皆さんは聞いたことがなかったと思うので、そのことも含めて、今後しっかり議論を深めていく必要があると思っている。

≪政治資金問題≫
Q、政治資金問題を受けて、衆院各委員会の安倍派の理事を交代させるとの報道がある。このタイミングでの交代判断についての評価を。
山口)衆議院の政倫審の取り組みなどを通じて、自民党が、今後どう対応するかというのは自民党自身が考えるべきことであるから、そのあり方について、われわれから意見を申し上げることは控えたいと思う。いずれにしても最終的に説明責任をしっかり果たして、政治への信頼を回復していく結果をもたらしていくことが重要であるので、そうした議論の場をどう形成していくかということも含めて、さまざまな努力が必要だと思っている。

Q、参院政治倫理審査会について、具体的な日程調整が進むことになったが、衆院を踏まえて、どのような形で、どのようなことが明らかになることを期待するか。
山口)まず参院で政治倫理審査会が、実際に開催されたことはないので、やるとすれば初めてのケースになるから、その先例としての重みということを考えながら、適正なあり方を検討してもらいたいと思う。それと参院の場合には、一定の条件・要件がある場合には、要求ができるということで、既にその条件に基づいて要求がなされている。自民党には31人、プラス離党した人も含めて32人要求が出ているから、これをどう対応するかということが当面の焦点になると思う。
衆院でも51人の要求が出る中で、最終的にはまず第1弾として、総理も含めて6人が対象になったので、参院としてどうしていくかということをしっかりと優先順位を決めて、弁明と質疑の機会を持つべきだと思う。
衆院のやり取りが一つの前提になると考えるので、やり方としては、やはりフルオープンでやるということが望ましいと思うし、また衆院の議論の中で参院の議員の名前も指摘されるような場面があったように思うので、そうしたことも含めて説明責任が尽くされていく結果になるように、また、政倫審のやり取りの結果が、政治の信頼回復に結びついていくようなあり方を参院として、しっかり検討し、結果を出していくべきだと考えている。

Q、衆院政倫審では、派閥で組織的に幹部の不記載が続いていた背景などは明らかにならなかった部分もあるとの指摘も出ている。代表は、政治不信を払拭するための説明責任を果たす機会にしてもらいたいと、かねてから言っているが、先週行われた政倫審がこうした機会になったと考えるか。さらなる実態解明に向けて、自民党に求める姿勢があれば。
山口)つぶさに、やり取りを全部聞いているわけではない。しかし、後でたどったことを元に、感想を言うと、まず岸田総理は、総裁としての立場で臨まれたと思うが、歴史上、内閣総理大臣が政倫審に出たのは初めてだ。しかしまた、違う派閥の取り組みの内容については全部知りうる立場にはないと思うので、ご自身の知る立場、あるいは報告書などに基づいて説明をされたと思う。
プラスして、再発防止のためにどう取り組むべきかという総理の見解が示された。特に議員が責任を負うことが重要だと。その上で、一定の過失等がある場合には、議員自身が責任を負いうる政治資金規正法の改正を、公明党の提案も参考にしながら、取り組んでいきたいと明確におっしゃられた。そうした再発防止策の方向性を示したことは一つの成果だったと思っている。また、ご自身の政治資金パーティーは在任中やらないことも明言した。ここも、実際にこれまで開いていたものを今後やらないということを明確に国民に約束したわけであるが、こうしたことも成果と思う。
法的責任はともかくも、政治的に道義的責任もありうると。それらをどう取るべきか。これは処分なども含めて、党として判断をしたいとも言及された。ここは自民党の中のことであるが、この政治責任をどう判断するか。ここは注視する必要があると思う。そうした内閣総理大臣として、党の総裁として初めて出席をして、いろいろやり取りした中ではいくつかの見るべき成果があったと思っている。
一方で、特に安倍派の幹部4人のやり取りの中で、少し食い違いがあり、不透明な部分があるように受け止められる。ここが、やはり説明責任が尽くされていないという部分になろうかと思う。先ほどの総理の法改正に対する方向付けというのは、武田議員も含めて5人のメンバーが会計責任者の政治資金の処理について自分は知らなかったという答弁に終始しているわけだ。だが、政治家がやはり最終的に責任を負う場面がありうるということを総理が重視して、法改正をもって再発防止策を作っていくという方向を示したことが重要だと思うが、一方で、説明責任の中身について、安倍派の幹部の中で、少しニュアンスの違いが出て、不透明感が残っているというところは説明責任が十分ではないと指摘されてもやむを得ないと思うので、今後の取り組みを待ちたいと思う。

Q、安倍派の事務総長を務めた自民党の下村博文氏が政倫審の出席準備をしていくと表明した。議員本人の申し出が事実上の政倫審開催の要件となる中で、衆院政倫審を再び開催するのであればと述べている。改めて与党として、どう対応すべきか。
山口)それは下村さんご自身の姿勢と、また党として、どうこれまでの政倫審の実績を踏まえて、どう対応していくかにかかっているので、ぜひ説明責任を一層果たすという責任感の下で、信頼回復に向けての取り組みを期待したいと思う。

≪次期衆院選≫
Q、岸田首相は、きのうの参院予算委員会で「4月の衆院補選に合わせて、衆院解散に踏み切ることは全く考えていない。政府・与党としては予算成立を図るということに尽きる」と述べた。発言への評価は。
山口)総理は4月の解散を明確に否定されたわけなので、それはその通り受け止めたいと思う。大事なことはやはり、今、これだけ政治不信が深まっている状況、それを裏付けるように支持率が下がり続けている状況であるから、信頼を回復するトレンドを作り出さない限り解散はすべきではないと思う。                       以上

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