お祭りの日には

神社のすぐそばに小さな鳥居があった
そこは木がうっそうと茂っていて
なんとなく踏み込めない感じがある

おくには小さな祠があるのだとか
誰かが行方不明になった
といううわさもあったが
よくある都市伝説といったところか

夏まつりの三日間
屋台やちょうちんのあかりで
空気さえもが
オレンジ色に染まって見える

ちりん…

鈴の音が聞こえた気がして
鳥居の方をおもわず見た

どうしたの?
ねえ、鈴の音がしなかった?
あ!クレープ!
なおは気のせいだよと笑いながら
小走りに屋台に向かう

ついていこうとして
なんとなく目を戻すと

あ、ねこ

ベージュ色のきれいなねこが
じっとこっちを見ていた

鈴の音はこのこだったのか
それにしてもきれいなこ

吸い寄せられるように足が進む
左右の目のいろが違うようだ
なんていうんだっけ
手を伸ばして抱き上げる

ちりん…
ちりん…また鈴の音

音が遠のくような感じがして
こころなしか鳥居の朱色が
浮かび上がるように目に映る

ねこが腕からするりと抜けると
鳥居の奥へと歩いていく
ついていかなきゃ
と思った瞬間

どこ行くんね、そっちはいかんよ
おばあちゃん?

急にがやがやと降ってくるみたいに
にぎやかな音が鼓膜をゆらす
クレープをゲットしたなおが
きょろきょろしているのが見えた

もう~どこにいたの

ふと気づくと
亡くなったおばあちゃんがくれた
赤い鈴を握りしめていた

気を付けないといけないよ
今夜のような
お祭りの日には

騒ぎに浮かれた神様が
いっしょに遊ぼうと
ほこらの方に誘うのさ
つられて入ってしまったら
いつ帰してくれるやら

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