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『保護者からの質問に自信を持って答える!吃音Q&A』note連載 第1回:吃音の始まる時期

エントリー編

1:吃音の始まる時期

母親
私の子に吃音が始まったのは3歳5カ月頃でした。3歳児健診では言葉の問題はなかったのですが,下の子が生まれて,上の子にはあまり構えなくなり,私の愛情不足がこの子の吃音の原因でしょうか?

吃音の発症年齢のデータを下記に示します。吃音は2〜5歳で主に始まります。1歳半健診ではほとんど吃音が始まっていません。
それだけではなく,3歳までに約60%発症していますが,逆に言うと,3歳以降に約40%も発症しています。

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母親
3歳5カ月で始まることもあるのですね。でも,ある日を境に急に始まったのです。何か,私たちの接し方のストレスが,吃音が始まるきっかけとなったのでしょうか。

下記の図より,吃音の始まり方が3種類あることが分かります。
1~3日で急に始まるパターンが41%と最も多いです。
1~2週間くらいで始まるのが32%,3週間以上かけて徐々に始まるパターンが27%です。

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母親
このデータを見ると,急にある日に始まることは,吃音では一番多いパターンなのですね。少しホッとしています。
でも,なんで「私の子に吃音が始まったのだろう?」という疑問は残ります。やっぱり,下の子が生まれたことが関係したのではないかという気持ちがあります。

確かに,アメリカの吃音の教科書に,「下の子が生まれることがきっかけになるかもしれない」と書いてあります。
ただ,「兄姉など上の子がいると,兄弟げんかなどのストレスが発症の一員となる」とも書いています。

母親
そうすると,一人っ子は吃音が少ない?ということですか?

一人っ子には吃音が少ないというのは本当でしょうか?
例えば,中国では1979年〜2015年まで一人っ子政策をしていました。つまり,中国は一人っ子が多いが,他の国と比べて,吃音者が少ないというデータはありません。
また,私の吃音外来に来る人は一人っ子もたくさん来ています。
日本の疫学と比較して,吃音児は一人っ子が少なくない英語論文も書いています。

母親
そうなのですね。この2〜5歳の間に始まることがポイントですか?

そうです。始まるのは,本人の急激な言語発達の影響だと考えられています。「ボクこれ食べたい」などの3語文を話せるようになった頃です。育て方ではなく,本人の体質で始まると考えて良いと思います。


菊池良和(九州大学病院耳鼻咽喉科 助教)

続き(note連載第2回)はこちら



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