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中央区南○条西19丁目

 現在、南3条から南13条までの西19丁目は設定されておらず、西18丁目の次は西20丁目となっています。
 西19丁目は、どうして設定されていないのでしょうか。


大正14年8月26日北海道庁告示第554号(関係分のみ・原文縦書き)

大正十四年八月二十五日札幌市字名変更ノ件左ノ通許可セリ但シ図面ハ当該市役所ニ備置ク

         記
変更及新設丁目
 従来ノ丁目

南三条西十丁目乃至西十九丁目
 山鼻町ノ一部
南四条西十丁目乃至西十九丁目
 同上

(以下。南5条から南14条まで西19丁目を設置する旨の記載があるのですが、引用が長くなりますので、ここでは省略します。)


 大正14年の条丁目設定の際は、このように西19丁目が設定されていたのですが、以下のとおり、昭和16年の改正で、西19丁目は廃止されてしまいました。


昭和16年7月4日北海道庁告示第921号(関係分のみ・原文縦書き)

札幌市字名中左ノ通変更シ昭和十六年七月十日ヨリ之ヲ施行ス但シ区域図ハ当該市役所ニ備置ク

変更字名
 従来ノ字名

南一条西二十丁目
 大通西二十丁目ノ一部
 南一条西十九丁目ノ一部

南二条西二十丁目
 南一条西十九丁目ノ一部
 南二条西十九丁目ノ一部

南三条西二十丁目
 南二条西十九丁目ノ一部
 南三条西十九丁目

南四条西二十丁目
 南四条西十九丁目

(中略)

南一条西二十丁目乃至西二十八丁目
 同(注 円山町字円山ノ一部)

南二条西二十丁目乃至西二十八丁目
 同

南三条西二十丁目乃至西二十八丁目
 同

南四条西二十丁目乃至西二十八丁目
 同


 この改正は、旧円山町の札幌市編入に伴い実施されたもので、札幌市街地に隣接する旧円山町の区域には、札幌市の条丁目を延長する形で、条丁目が設定されました。

 旧円山町区域の条丁目は、札幌市の区域が西に飛び出していた北2条以北を除いて西20丁目から設定されたことや、札幌市街と旧円山町の円山地区、旧山鼻村では、街の区画の向きなどが異なっていたことから、その境界付近で調整をする必要が生じ、あわせて条丁目の変更廃止が行われたようです。

 この改正では、南3条から南6条までの西19丁目が西20丁目に、南6条から南14条までの西19丁目が西18丁目に、南20条から南23条までの西15丁目が西14丁目に編入される形で廃止されました。
(なお、現在の南14条西19丁目は、昭和35年に再設定されたものです。)

 確かに、今回廃止された西19丁目、西15丁目は、市町境界の道路上にあり、また、地番の設定もなかったようですので、隣接する条丁目に編入されたのも無理はないと思います。
 それでは、どのような形で編入されたのかを見ていきたいと思います。

「昭和16年行政区域及名称」から
(北海道立文書館 F-2/3965)

 本題に入る前に、説明の必要はないのかもしれませんが、図の見方を説明します。
 上の図の中央付近に南一条西二十丁目との記載があり、その左(西)側に斜線部分があります。
 この斜線部分は、南1条西20丁目に変更された区域を意味します。
 また、南一条の文字の右横に点線が描かれています。この点線は大通と南一条の境界線です。
 つまり、斜線部分の南1条西20丁目は、点線上側の大通西20丁目と南側の南1条西19丁目(の各一部)から構成されていることを意味します。

 少々ややこしい話になりますが、なぜ縦に並んでいるのに、大通が西20丁目で、南1条が西19丁目なのかと思われる方もいるのではないかと思います。
 これは、明治23年にこの地域に条丁目が設定された際、本来、西20丁目が設定されるべき西20丁目道路以西の区域に、なぜか南1条と南2条については、西20丁目が設定されなかったからです。

 なお、南1条西20丁目には、旧円山町字円山から構成されている区域(斜線部分の左(西)側)もあるのですが、更にややこしくなりますので、ここでは言及しないことにします。
 本題に入る前に、いろいろと書いてしまいました。

部分拡大図

 ここから本題に入ります。
 先程の図を拡大しました。南3条西18丁目の全域を黄色に、南3条西19丁目の全域を紫色、南4条西19丁目の全域を深緑色に彩色しています。

 これらの条丁目の区域は、とても狭いですが、なぜ、これほど狭いのでしょうか。町界線の告示を見てみましょう。


大正14年9月16日札幌市告示第106号(関係分のみ一部略・原文縦書き)

札幌市ニ於ケル従来ノ字名中札幌市会ノ議決ヲ経北海道庁長官ノ許可ヲ得左ノ通変更ス

変更字名
 区域(境界)南
       北

南三条西九丁目乃至西十九丁目
 南三条西九丁目ニ於ケル南三条一号線道路ノ中心点ヨリ南三条線道路ノ中心ニ見通シ其以西南三条線道路ノ中心
 南二条境界

南四条西九丁目乃至西十九丁目
 西九丁目ニ於ケル南四条一号線道路ノ中心点ヨリ南三条南ノ境界線ト平行シタル線
 南三条境界(注 南三条西九丁目ニ於ケル南三条一号線道路ノ中心点ヨリ南三条線道路ノ中心ニ見通シ其以西南三条線道路ノ中心)

変更字名
 区域(境界)
 東
 西

西十八丁目(起点南三条終点南十四条)
 西十七丁目境界(注 西十八丁目予定道路線)
 西十九丁目予定道路線

西十九丁目(起点南三条終点南十三条)
 西十八丁目境界(注 西十九丁目予定道路線)
 藻岩村界(注 旧円山町界)


大正14年第1回札幌市会(原文縦書き)
議案第21号(大正14年2月16日原案可決確定)字名変更ノ件
議案参考資料
「町名変更新設ニ関スル標準」

四、従来条丁区域ノ標準
(3)条ノ区域ハ左ノ如シ
(ホ)南一条
 創成川以西ハ大通ノ境界ヨリ南一条道路ヲ中心トシ南北ニ於ケル半町宛ヲ以テシ其ノ区域ハ一町間トス其ノ以東ハ大通道路ヨリ南一条道路迄一町間トス但シ南一条道路ハ南一条ノ区域トス
(ヘ)南二条以南ハ南一条ノ区域ノ例ニ準シ三条四条ト順次南ニ進行ス

(4)丁目ノ区域ハ左ノ如シ
(ロ)西二丁目
 西二丁目道路ヨリ西三丁目迄一町間トス但シ西二丁目道路ハ西二丁目ノ区域トス
(ハ)西三丁目以西ハ西二丁目ノ区域ノ例ニ準シ西三丁目西四丁目ト順次西ニ進行ス


 文面だけではわかりづらいと思いますが、南3条西18丁目、南3条西19丁目、南4条西19丁目がとても狭いのには、根拠があり、結果的に狭くなったということが、なんとなくおわかりいただけたのではないかと思います。

 この改正で、南3条西19丁目は、南2条西19丁目の南半分とともに、南3条西20丁目に変更され、また、南4条西19丁目は、南4条西20丁目に変更されました。

 なお、ややこしくなりますが、南3条西20丁目、南4条西20丁目ともに、旧円山町字円山から構成されている区域(斜線部分の左(西)側)もあります。


 さて、南3条西18丁目は、大正14年の設定以後、区域の変更なく現在に至るわけですが、地図にはどのように表されているでしょうか。

町の区域の設定図 A-1

 町の区域の設定図です。なお、この図は南3条西18丁目が新設された大正14年に作成されたものではなく、後年、札幌市の手により作成されたもので、西19丁目が記載されていないことが注意すべき点になります。

 南3条西18丁目は、南4条と書かれている右側、1308ー1と1308ー2の上の三角形の部分になります。ほとんど道路上にあるように見えます。

札幌市町名図(昭和51年)

 昭和51年現在の札幌市町名図です。南3条西18丁目は、南2条西19丁目の下にある三角形の部分になります。
 ほとんどが道路の区域のように見えます。

札幌市町名図(平成2年)

 平成2年頃の札幌市町名図です。町界線については、昭和51年とほぼ変わりありません。

法務局公図(マイラー)

 こちらは、平成18年に札幌法務局本局管内の不動産登記情報のオンライン化により、以後、更新されなくなったマイラーの公図(閉鎖された地図に準ずる図面)です。

 この時点では、南3条西18丁目名義での土地登記がなかったのか、単なる錯誤なのかはわかりませんが、この図では南3条西18丁目がないことになっているようです。

札幌市地番図 09-08-4
(平成31年1月1日現在)

 札幌市が作成した、平成31年現在の札幌市地番図の該当ページです。
 こちらは、マイラー公図とは異なり、南3条西18丁目があることになっています。


 なお、ここで取り上げた町名図、地番図の条丁目の境界(字界)線は、厳密なものではなく、参考程度のものであるという断り書きが付されており、参考程度の町界線の情報をもとに考えたことを書きましたので、実際には違っているかもしれませんので、ご注意ください。


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