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Q.永吉さん、福岡は新しいものを生み出すのに適していますか?

永吉さんは国内初のデジタルバンク《みんなの銀行》の頭取である。頭取だけど、足元はスニーカー。そんな永吉さん自身が《みんなの銀行》をよく表している気がする。旧態依然なイメージのある銀行業界にあって、福岡から国内初のデジタルバンクを立ち上げ、注目を浴びる永吉さんに“今”を聞いてみた。

銀行はこのままでいいのか?
という危機感と焦燥感。


伊藤 永吉さんとは以前お仕事をご一緒させていただいたこともありますし、高校の先輩ということもあって、勝手に親近感を持って、連絡をさせていただいたのですが、現在、《みんなの銀行》の頭取というとても責任の重い役職なんですよね。気軽にお声かけしてしまって、すみません。

永吉 いえいえ。こちらこそ。

伊藤 今日は、何かと話題の《みんなの銀行》のことと、福岡のことをお聞きしたいんですが、まずは、《みんなの銀行》について。《みんなの銀行》って僕らは、どんな銀行だと理解すればいいんですか?

https://www.minna-no-ginko.com/

永吉 まあ……、銀行と名前についているし、ちゃんと銀行業免許を持っている銀行なんですよね(笑)。僕らは“デジタルバンク”というジャンルで、スマホひとつアプリひとつですべてのサービスが完結するという新しい銀行になります。似たようなもので言うとネット銀行というジャンルがありますけど、ネット銀行が普通の銀行とどこが違うかと言えば、極論、リアルな店舗を持っているかどうかということなんです。

伊藤 《みんなの銀行》もリアルな店舗がないのでは一緒ですね。

永吉 そうです。だから2021年1月の記者発表会で「新しい銀行を創る」と詳細を発表した時に、メディアの人達がこぞって“地銀初のネット銀行”って報じたんですよ。僕らからすると、地銀初でも、ネット銀行でもないんですが……。「ネット銀行ではなく、《みんなの銀行》はデジタルバンクです」と言い続けていたら、最近、ようやく“デジタルバンク”を僕らの代名詞として使ってもらえるようになりました。今年1月、同業である《東京きらぼしフィナンシャルグループ》さんが《UI銀行》を開業されたんですけど、先陣をきった僕らの普及活動の甲斐もあって、初めからデジタルバンクと紹介されています(笑)。

話が逸れてしまいましたけど、デジタルバンクではお客さまに電話や郵送などでコミュニケーションすることが基本的にないんです。一般的なネット銀行では口座開設時に、例えば郵送でキャッシュカードを送るなど、お問合せやサービス関連にまだアナログなやりとりを行なっていたりします。裏側は人間によるオペレーションが結構残っていて、伝票入力や情報処理をやっているところがあるんですよね。《みんなの銀行》ではそういったところもすべてデジタル化していて、全自動で動いています。銀行の業務全般をどうやってデジタル化するか、どうやってネット上で完結できる銀行にするかというアプローチが基本スタイルなので、そこの違いが一番大きいです。ただ裏側の見えないお客さまからすれば、まだまだネット銀行と「何が違うの?」みたいにどうしてもなっちゃうので、そこを理解してもらうためにはもっともっともっとアピールが必要だと思っています。

伊藤 永吉さんは《福岡銀行》のグループ企業として必要であるという考えで、《みんなの銀行》を立ち上げたんですか?

永吉 伊藤さんとの最初のお仕事はお金やライフスタイルに関するオウンドメディア《mymo》の立ち上げでしたが、このメディアを一部の機能として搭載した銀行公式アプリ《Wallet+》というサービスを、2016年7月にローンチしたのがすべてのはじまりでしたね。もう6年前になりますけど、今では福岡銀行をはじめ全国で12の地方銀行に利用されるサービスに成長しました。実はこれも銀行界では初めての取り組みでした。

このサービスを創るために、《iBankマーケティング》という会社をグループの外に切り出して。当初は、僕のお財布から一万円で起業した社内ベンチャーみたいな位置づけでスタートして、見よう見まねというか。毎日大変な日々だったんですけど、今のように銀行の外に出てやってみたら、結構いろいろとやれるなってわかってきました。

https://www.ibank.co.jp/

伊藤 《福岡銀行》の中だとできなかったことですか?

永吉 僕らの中では、出身母体の銀行のことを大きな巨大タンカーに例えたりするんですが、でっかい船は多少波や風が強くてもあんまり動じないじゃないですか。嵐や台風が来ても、転覆することもなく。でも一方で、《iBankマーケティング》みたいなスピードボートはちょっとした波や風、嵐に遭遇したら、一発で転覆してしまうかもしれないけど、速さではタンカーより奔る。そんな感じでチャレンジに応じて、できることや見える世界がかなり変わったと思います。

ただ《iBankマーケティング》は銀行そのものじゃなかった。アプリ上のUIやUXというデザインを活かして、お客さまにとってシンプルで使いやすいものにするような表層の部分は何とでもできたんだけど、銀行そのものじゃないから、金融商品や機能そのものを生み出すことができなかったんです。僕らの銀行本体もいろいろなことはしているんだけど、大きくは変わらないまま進んでいて。いろんな業界でルールチェンジやパラダイムシフトがどんどん起こっていくのに、「銀行はこのままでいいのか?」という危機感と焦燥感を感じていました。

伊藤 外に出たからこそ肌で感じたことですよね。

永吉 そうですね。そこで見たり感じたりしたことを銀行本体に伝えるのは、僕らの役目だよね?みたいに思っていましたけど、本当はそんな余裕は全くなかったんですよ。新規事業として《iBankマーケティング》を立ち上げて、少数精鋭で業務をこなしていて、もう毎日が七転八倒みたいな状態だったから。ただ、体感した僕らにしかできないことがあるよねと思っちゃったんです。そこから、世の中の変化やスピードについていくために、ゼロベースで新しい銀行ライセンスをとって、《みんなの銀行》を作ろうと動きはじめました。「最初から元の銀行でやればよかったじゃん」とか言われると思うんですけど、やっぱりいろんな制約があって簡単にはいかないんですよ。そのためにスピードボートに乗って漕ぎ出して行ったわけなんですけど、そこでは銀行そのものの仕組みには手を入れることができなかった。どうやったらスピーディーに銀行を変えることができるかを考えたわけですが、「もうゼロから創るしかない」という結論に至ったんです。

変化をしないと、
今の世の中にはフィットしない。


伊藤 お話を聞いているだけで、僕にはできないなあと思ってしまいます(笑)。紆余曲折ありながらでも、これが永吉さんのやりたかったことなんですよね?

永吉 そうですね。僕がやらなかったとしても、銀行業界全体でDXという文脈の中で一生懸命デジタル化を進めているところなので、いつかは既存の銀行も、今、僕らがやっているような取り組みと同じような方向に向かって行ったとは思います。ただそれには、実際どれほどの時間やお金がかかるのかは全く見えないですね。銀行の歴史は150年も前の渋沢栄一の時代からはじまっているので、長年の積み重ねによってできている社会インフラとしての仕組みなんです。人が紙と判子で処理する仕組みが150年も続いてきて、インターネットの普及と共にここ20年くらいで急激に変化した感じですから。今起きている多くの銀行のデジタル化は、先ほど言ったような紙と判子を使う人的な作業が裏にしっかり残っていて、それをただ表面上でデジタルに見せているだけ。本当の意味でゼロからフルデジタルにトランスフォームしていこうとすると、これまでに蓄積された仕組みを一枚一枚ペラペラと剥がしながらデジタル化を進めていかないといけないんです。それだけでも10年くらいはかかるんじゃないかな。

伊藤 《みんなの銀行》は地銀初の新しいネット銀行でもなければ、《福岡銀行》をアップデートするためのものでもないんですね。

永吉 そうですね。本当に新しいチャレンジです。地銀初ではなく国内初というのが正しいし、ネット銀行ではなくデジタルバンク。誰もやったことがないことをしているんで、誰も正解やゴールとかがわかっていない。こうありたいというビジョンやミッションはもちろんありますけど、本当にそのようにうまくいくのかも見えてない状況ですね。

伊藤 その先どうなるかとかも見えてない?

永吉 そう。ただやっぱり変化をしていかないと、今の世の中にはフィットしない。《みんなの銀行》のメインのお客さまは誰かというと、Z世代、そしてひとつ上のミレニアル世代やY世代を加えたデジタルネイティブな人達。そんな20歳〜40歳未満の方々に対して、銀行が提供するものの価値はどう変わっていくべきか、どんなサービスなら使いやすいのか、といったことをずっと考えています。はっきり言って、これまでの銀行のメインのお客さまとはまったく異なるんですよね。

もう少し言及すると、生まれた時からデジタルと共にいるZ世代の価値観に沿ったサービスを作らないといけないと思っています。今では、FinTechや「〇〇Pay」のような銀行じゃないプレイヤーがどんどん参入してきて、金融ビジネスの垣根が下がっていっています。この状況下で育ってきた若い人達からしたら、「銀行口座を持つメリットって何?」「銀行口座って、持っとかないかんもの?」みたいな感じだと思います。

伊藤 銀行でないとお金を運用できなかったり、借りることができないことももうないですしね。

永吉 アメリカでは早くから、将来、銀行が必要なくなると考えている人が多いというアンケート結果が出ているんです。特にミレニアル世代に顕著で、「5年後には必要なくなると思う」と回答している人がその世代の4、5割いるみたいな状況です。日本ではまだそこまでの状況になっていないかもしれないけど、確実に若い世代が銀行から離れていっている。新しい金融消費やサービスに触れ、生活の中に銀行がなくても困らない若い人達がいる世の中です。だから僕らも若い人達の動向をしっかりと捉えて、《みんなの銀行》のお客さまになっていただかないと、本当に銀行の10年先はないんじゃないかと思っています。そのためのチャレンジを、今からしているんですよね。

絶対ウケると思っていたことが
まったく通用しない世界。


伊藤 2021年5月にサービス提供開始してから、口座開設数など計画していた通りに進んでいるんですか?

永吉 そうですね。もともと計画していた数字に近い形にはなってきています。今年5月で一周年を迎えたんですが、アプリのダウンロードでは100万件、40万口座が開設されました。いろんなマーケティング手法を駆使して、お客さまへアプローチしていますけど、想定外のことばかりで(苦笑)。メインターゲットとしているデジタルネイティブ世代のお客さまは僕らの予測を超えた行動をとることも多いので、本当に毎日何かしらの新しい発見があります。失敗と成功を経験して、勝ちパターンを見つけてアプローチしているんですが、それでもうまくいかないことがたくさんあって、もうわかんないことだらけですよ、はっきり言って(笑)。

伊藤 そんな中、日々難しい決断を迫られてるわけですよね。永吉さん、これどうしましょう?指示ください!みたいな。

永吉 「こんなのどうですか?」とか聞かれますけど、これまでの銀行員としての経験とか勘とかで絶対ウケると思っていたことが全く通用しない世界なので難しいですよね。定期預金や投資に関するセールスにしても、従来だったら店舗に来た人に対面でコミュニケーションできていたけど、今僕らが対峙しているのは店舗に訪れない人達ですし。さらにテレビも観ない、新聞も読まない方々なのでどうやって関係を構築していけばいいのか……、ですね。

伊藤 これまでとは違ったコミュニケーションを常に考えているんですね。

永吉 先日も、突然、口座数がめちゃくちゃ伸びて、パンクするみたいなことがあったんです。こちらからは特に何もアプローチしてないんですよ。キャンペーンを企画して増えたんだったら、読める話だと思うんですけど、ある時、いきなり一気に口座数が急増して、口座開設のプロセスがパンクしてしまう。でも、何がきっかけでそうなっているかわかんないという(苦笑)。そこで、いろんなSNS上のコミュニケーションについて分析していると、どうも関西方面のエリアで発信されたTikTokでうちに関する動画がバズっているらしいみたいなことがわかって。それで、それを見た大学生たちによる口座開設がものすごく増えたみたいなんです。うちが何もやっていない動画で、ですよ。知らない誰かが何かのアクションを起こして、それに反応してお客さまがやって来る……、そんな世界なんです。そんな世界の人達と付き合っていかないといけないから、本当に正解がわかりません。

追いかける人がいない世界で
やることは楽しみしかない。


伊藤 僕らが《みんなの銀行》を見ていて、こんなアクションが起きたら、「次のフェーズに行ったんだな」とか思えることって何ですか?

永吉 今、「BaaS(Banking as a Service」」と言われる、銀行機能をAPI(Application Programming Interfaceの略)という「接続の口」を介して、銀行以外の事業者の方が利用できるようにする新しい事業展開を進めています。《みんなの銀行》は個人向けの銀行サービスを提供していますが、その銀行機能、サービスを事業者向けに裏側から提供して、その事業者のみなさんが提供しているサービスの向こう側にいるお客さま(個人)に使ってもらうビジネスがこれから来ると思っているんです。すでに海外でも、「BaaS」や「エンベッデッド・ファイナンス」という表現で、そうした動きが盛んになっています。

《みんなの銀行》のアプリではなくて、どこかの事業者さんのアプリから、預金残高を照会したりとか、ショッピングでの決済をしたりとか。さらには複数のお客さまで利用できたりとか、そういう世界がこの先きっと来るはずなんです。来るというか、僕らは今そこを目指してやっています。そういった機能を持った事業者さんのアプリに出会ったら、僕らが次のフェーズに行ったと思ってもらっていいと思います。

伊藤 どのくらい先の話ですか?

永吉 数年後くらいです。計画では、2、3年のうちにはそういう世界を体験してもらえることを目指しています。

伊藤 やっぱりすごいスピード感ですね。

永吉 スピードが命ですよね。

伊藤 今、スタッフは何名ですか?

永吉 今は福岡と東京で約200名です。

伊藤 これまでの銀行にはいなかった種類(職種)の人達も多いんですよね。

永吉 そうですね。エンジニアやデザイナー、マーケターを中心に、6割超がキャリア採用のメンバーです。僕みたいな、《ふくおかフィナンシャルグループ》が振り出しの銀行員は大体4割かな。

伊藤 これまでの銀行とはかなり違ってますよね。

永吉 銀行員として入行し、銀行員として定年退職するという世界で僕も暮らしてきましたが、今はまったく違った世界ですね。《みんなの銀行》ではアプリ開発、保守運用だけでなく、これまで制作会社や広告代理店にアウトソーシングしていた業務のほとんどを自分たちで手がけています。要は、銀行村の住人がこれまでの純血種族からいきなり多民族に変わったみたいな(笑)。

伊藤 この2年くらいでの変化ですよね。

永吉 そう。当初10名のチームから、一気に200名になった。すごく刺激はありますけど、マネージメントの部分ではこんな経験はしたことがないので本当に難しいです。そこにプラス、コロナ禍に伴う制約もありますから。これまで同じ釜の飯を食ってきた純血種族内で新しいチャレンジをするのでなく、スキルもバックグラウンドも異なる多民族内でコミュニケーションを図らないといけないから、それは大変で。毎月のように新メンバーは入社して来るんだけど、みんなマスクをしていて顔がわからないし、飲み会もないから、どこかで会っても誰?みたいな(苦笑)。

伊藤 正解や先の読めない世界で、かつそんな不安な環境でも、永吉さんは面白がれたり、ワクワクしたりできているんですよね?

永吉 そうじゃないとやってられないですよね(笑)。その正解や先の読めない話については、もし正解が見えた時には猛スピードで結果が出るものなんです。例えば、これまでの商品キャンペーンとかだと、チラシやポスターなどの紙と店舗や営業員といったリアルを中心にコミュニケーションをとっていたので、どうしても時間がかかっていました。あるキャンペーンを考えたとして、チラシを作って、店頭で展開して、特典の当選者を抽選して、当選連絡して、ノベルティを渡して……、多分早くても3ヶ月間くらいはかかります。下手したら、企画から結果分析・報告まで1サイクル回すのに、半年かかるみたいな世界だったんです。それがデジタルの世界にシフトして、コミュニケーションをすべてデジタルにすると究極1週間で結果までわかってしまう。だからトライアンドエラーを何度もできるし、そもそもデータ上でやっているから、数値化もできて、手応えがすごくあるんです。そういうことの積み重ねを僕自身は楽しめています。新しくできることがどんどん増えていく過程を味わえるのは良いことなんだと実感しています。追いかける人がいない世界で自由にできることは、僕にとって楽しみしかないですね。

10年後を思い描きながらの新しい会社づくり


伊藤 福岡の話も聞かせてください。《みんなの銀行》が福岡の地に本社を置くことに何か理由はありますか?

永吉 やっぱり僕らの母体である《ふくおかフィナンシャルグループ》が福岡ですからね。グループの経営理念にもある「失敗を恐れない行動力」をバックに、この地でチャレンジしていきたいと思います。なんか銀行員って失敗するとバッテンがついて、「もう昇進できません」みたいな印象がありますよね。ドラマ『半沢直樹』の世界。何かあったらすぐ「出向!」って言われて、外へ飛ばされちゃうみたいな(笑)。そんなイメージを持っている人も結構多いと思うんです。実際にそういう減点主義な部分は少なからずありました。ただ、うちのグループは「地銀初」みたいなことをいっぱいやってきた会社です。僕が働いてきた20年間を見ても、いろいろとチャレンジをしてきているんです。とにかく大きなことやってみようとか、やってみてダメになったとしても、それはそのまま無駄にはならないとか。「失敗が次の成功に繋がる一点になる」という考えがあって、それがグループのDNA的なものになっています。

僕が《福岡銀行》の経営企画部門から、《iBankマーケティング》をスタートできたのも、社長の後押しによるものでした。バックキャスティング的な考え方で10年先の銀行、金融業界を見据えたプロジェクトのデザインをしてほしいと言われて。社長から直接、そのような宿題をいただき、初めてのことで手探りでしたけど、あるべき理想の10年後を思い描きながら、新しい会社や事業を創るという責任重大な仕事を任せてもらいました。そういった上司の「任せ方」と部下の「頑張り方」のバランスも含めていい環境だと思っています。今もこうして福岡の地で、チャレンジを続けていける銀行グループがバックグラウンドにあるのはとても大きなことだと思います。

街の包容力や収容力は、
すでに出来上がっている。


伊藤 個人的には福岡に対して、どんな思いがありますか?

永吉 地政学的にも歴史的にも、福岡、そして、九州は面白いと思っています。例えば、長崎の出島から世界のいろんなものに触れられるようになり、江戸へ伝達していったとか。福岡の鴻朧館が中国大陸や朝鮮半島からの使節団に対する最初の迎賓館だったとか。そういった土地にまつわる歴史・文化の背景がいいですね。仕事柄、全国いろんな方々と話しますけど、「新しいことって西の方から起こってきますよね」と言われることが多いですし。その西の方で指しているのは九州だったり、福岡だったりというのは皆さんの感覚的にあるみたいなんですよね。それは、すごく誇らしいこと。福岡出身で良かったと思っています。

伊藤 福岡の街はどんどん様変わりしています。福岡に長年住んでいる永吉さんから、今の福岡の街はどう見えていますか?

永吉 《天神ビッグバン》は、悪いタイミングに重なっちゃったなという気がしますよね。コロナ禍で人が来ない、観光客も来ない。以前のインバウンド客が盛んだった頃はこんなはずじゃなかったわけですよね。インバウンドやオリンピックの対策として、ホテルがたくさん建ちましたけど、ある時期、開店休業状態になってしまいました。とはいえ、街のポテンシャルとしては絶対にあると思っています。新たなビルができたり、ビルが建て替わりもしたので、街の包容力や収容力はすでに出来上がっているはず。だから、そこに今後どれだけ魅力的なコンテンツが揃っていくかだと思っています。

伊藤 そのコンテンツには何が必要だと思いますか?

永吉 活気があるというか、元気があることがすごく大事だと思います。そのためにやっぱり若い人達を中心に、盛り上がる場所がいるんだろうなと思っています。コンサートやエンターテインメント的な体験をメインに、その隙間時間にインスタ映えするグルメスポットを巡るみたいな街歩きの楽しさが、これからも福岡の魅力のひとつになるんじゃないかなと思います。

伊藤 福岡ではデジタルにおける創業支援など、スタートアップ的な観点でも福岡の魅力が語られたりしますよね。永吉さん的にそのイメージと街の力は比例してると思いますか?

永吉 デジタルの領域で行くと、6年くらい前から「オープンイノベーション」という言葉が使われはじめましたけど、当時からその言葉を福岡でもよく耳にしていました。「社内にオープンイノベーションの担当者ができました」って話で着手は早かったですが、すぐには機能していなかったかもしれません。最近になって、ようやく新しいチャレンジが見える形として出てきたなと思います。

“国内初”がすべて東京からである必要ない。


伊藤 福岡のことを聞いておきながらなんですが、デジタルバンクだから地域性はあまり関係ないんですか?

永吉 そうですね。最初は本社を東京にした方がいいんじゃないかという議論もありました。東京の良い点は対メディアに関すること。僕らはデジタルバンクなので、全国のメディアに向けてプレスリリースを案内するんですが、東京には金融やテクノロジー領域の専門メディア、専門記者が多く集まっているので、技術的な情報に敏感ですし、取材でもかなり深掘りしてきます。同じソースでも、専門メディアのいる東京と福岡ではそこに違いが出ることがありますね。ただ、それ以外は東京でないと、ということもないです。福岡本社から空港まで地下鉄で15分、飛行機に乗って東京まで1時間半あれば着いてしまう距離だから、朝イチの便に乗れば9時半からの会議にも間に合います。だから別に高いオフィスを借りなくても、ここが活動拠点で問題ありません。

コロナでもだいぶ変わってきました。うちのメンバー200名中6割いるキャリア採用の中にも、入社前までは東京で働いていて福岡に何の縁もないけど、移住してきた人がいっぱいいます。

伊藤 転職きっかけで福岡へ?

永吉 東京でもこんな“国内初”みたいな面白い仕事って、そうないんじゃないかなと思います。まず仕事に興味を持ってもらって、「オフィスが福岡なら、いい街だし、住みたい」って。今までだと移住に足踏みしていた人達も、こんなチャレンジングな仕事だったらやりたいと言ってくれています。そうは言っても2拠点あるから、東京がいい人は東京で働いてもらえればいいんですよ。

伊藤 絶対に福岡であるべき理由はないと思いますが、総合的には《みんなの銀行》にとって福岡という場所がより良さそうですね。

永吉 そうですね。“国内初”がすべて東京からである必要ないじゃんってところですよね。むしろ「本社どこなん?」みたいなことでもいいくらい。海外から見たら、別に東京だって、大阪だって、福岡だって、あまり変わらない範囲ですから。「日本で面白い人がいる。面白い会社がある」とか、「日本に面白いサービスがある」くらいでしか、多分、捉えないからですね。だったらあまり場所は問わないよね?って思いますよ。

edit_Mayo Goto
photo_ Taishi Fujimori



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