『すべての夜を思いだす』(清原惟、2024)

同軸の引きが多分10回程度あったと思うが、最も新鮮に映ったのは1回目のハローワークで、女性どうしが見る見られるの関係にあると示すものは並、そのほかはカットの動機が不明瞭だったように思われる(特に土鈴前での微妙な引き。さらに見上が玄関前でダイの母を待つ同軸は私にはダブりすぎに見えた)。同軸の良いところはポンとキャメラ位置が変わることで編集にリズムが生まれる点だが、こうも多いと持て余している感さえある。
ヒップホップにせよダンスにせよ、要所要所で「本当にそれに興味ありますか?」と見ているこちらの居心地が悪くなるのだ(まったく邪推するに、他人の映画を見過ぎではないか)。
俳優への関心がずば抜けて高かったと思われるのは重心を腰に固定したかのように歩き回る兵藤久美で、『MADE IN YAMATO』竹内里紗篇から採られたのだろう。ただやはり枠組みをなす物語や主題にも頭を捻らざるを得ない。さすがに同工異曲も極まってきたので、他人の脚本で撮るべきだろう。それでまた自分で書けば良いのだし。

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