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便利すぎるものは疑いから入ってしまう。

僕は便利すぎるものがどうにも嘘くさく感じてしまいます。
例えば薬のオロナイン軟膏です。オロナインのパッケージをよく見ると効能の欄にびっしりと治すことのできる症状が書いてあります。そんなに色んな症状をこんな白くて滑らかな物質が治せるとは僕にはどうにも考えられません。例えば、「火傷」などたった一つの症状を愚直に治す薬ならば全然信用できるのですが、効能をたくさん書きたいがあまりパッケージの文字を全体的に小さくしてしまうオロナイン軟膏はなんだか知らないけど、関わったことのあるイベントをXの自己紹介欄にひたすら列挙しているイベンターのようでどうにも信用ならないのです。

以前彼女と旅行でとある温泉旅館に泊まったのですがそこの温泉の看板にも効能が親の仇ほど書いてありました。それだけでも僕は冷めていたのに、その看板の後半の文字が温泉の熱気や成分の影響なのかほとんど消えかかっていて、その消えかかっている文字を上から油性マジックでなぞってまでして効能をアピールしていました。最初から印刷されている文字ならまだしも油性マジックで書かれた効能は絶対に効く気がしません。
一緒に行っていた彼女は一気に色んなものが治る温泉に入ることが出来て満足していた様でしたが、僕は思わず「もっとリウマチとか一つの症状を愚直に治す温泉に入りたかった」と言ってしまいました。
妙に気まずい空気が流れました。嫌な空気を誤魔化そうとテレビをつけても、全然知らないローカルタレントが ”僕なんでも出来る便利な人間ですよ ”と思っていそうな素振りではしゃいでいて、いたたまれない気持ちになりすぐ消してしまいそのまま特に会話もなくその日は就寝しました。

次の日の朝はご飯や味噌汁や漬物、味付け海苔、鮭の塩焼きなど色んなものでご機嫌を伺うような便利な朝食が出ました。もっとステーキとか一つのメニューで愚直に腹を満たしたかったです。

そんな僕の態度に痺れを切らした彼女が「どうしてそんなに便利な物が嫌いなの?」と僕に聞きました。僕は「オリックスにいた平野恵一だってセカンドやれたりショートやれたりあまりにも便利すぎて怪しんでいたら、阪神に行ったりオリックスに戻ってきたり最終的には阪神の監督になったりよく分からなかったじゃないか」と言い返しました。
怒った彼女は荷物を持って勝手に帰っていきました。
旅館からは15分おきにバスが出ていて便利でした。

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