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ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル』 第2章 第4節「ジェンダーの複合性、同一化の限界」要約

 本節のテーマは、(ジェンダーの)アイデンティティを固定する基盤的な《象徴界》の《法》を前提としないで構築される「同一化(identification)」について考えること、つまりは、《法》無しで(ジェンダーの)アイデンティティを突き止めることである。

 これまでにバトラーは、第2章第2節ではラカンとリヴィエール、第3節ではフロイトを分析し、この3者の枠組みの中でジェンダーの「同一化(identification)」がどのように機能しているのか(はたまた、「機能する」と言えるのか)を検討してきた。その検討の中で浮上したのは、これらの枠組みの中ではジェンダーの同一化は二元論(ex.ラカンであれば、ファルスを「もつ」orファルスで「ある」という二元論)のなかで固定されているがために、この二元論から排除されてしまうような項目が現れ出て、この枠組みが見せかけでしかないということが露呈してしまうという事態であった。このような事態を批判してきたバトラーは、これまでの議論とは打って変わって、今度は(上述したような)単一の《法》を前提としない、多層的な同一化・《法》の複数化の可能性を探ろうとする。

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