承認欲求に寄生された宿主

最近SNSで街歩きスナップや廃墟探検などと称して、街や廃墟を撮影してその写真をSNSにアップすることが流行っている。最近は街に飽きたのか、地方の集落や住宅地をめぐって写真を撮る人達が増えている。
地方で集落住まいの筆者としては、ある日突然から見知らぬ人が住宅地に入って来るようになったら落ち着いていられないだろう。なぜならその人が純粋に写真を撮っているだけの人か、それとも観光を装った空き巣の下見なのかの見分けがつかないからだ。
それと集落は顔ぶれが同じなので、家の前を全く知らない人が通れば足音や雰囲気が全く異なるので、家の中にいるだけでも違和感を覚える。

大抵、集落や住宅地をめぐって写真撮影をする人は、普段は都市部に生活拠点を置いている場合が多い。都市部の景色とは違った景色を見たいが故に地方の村落を訪れるのだろう。
都会の感覚であれば、隣に人がいても無関心なのは当たり前で、都心で撮影していても、特に誰も関心を持たない。

地方の集落では事情が違う。よく田舎と都会の違いとして、田舎の人は干渉したがるというのが挙げられるが、集落で同じ顔ぶれで過ごしていると、お互いに気ごころ知れているので、いろいろとお節介などは当たり前であるし、今でこそ変わってきているが家などもカギはかけないのが普通で、近所の人が漬物や野菜のおすそ分けを勝手にご近所の家の中に置いていく行為もざらである。これが地方と都市の違いの一つである。都市部であっても、年季の入った住宅地なら、流石に鍵をかけないはなかったとしても、似たようなことはあるだろう。

集落や住宅地はある種のプライベートエリアであることを忘れてはいけない。集落や住宅地の中を通る道路はそこの住人たちが優先的に使うものである。
そのプライベートエリアに都会の感覚で足を踏み入れるのが、昨今の街歩き写真家達である。
集落の全景を撮影するならいざ知らず、彼らは珍しい(SNSで流行りそうな)住居を見つけるとそれを撮影し始める。その家の住人からしたら堪ったものではない。
SNSに投稿し、その写真が流行ると同じような構図を求めてこれまた街歩き写真家がその集落を訪れるようになるし、流行った投稿に触発されて同じように街歩き撮影を始める者まで現れる。
今まで顔見知りしかいないのが日常だった集落に、ある日突然から見知らぬ人たちが出入りするようになれば、そこの住人にとってはストレスである。
これは集落住まいの筆者だからこそわかる感情である。

自分が真に珍しい、美しいと思ったというよりはSNSに操られて行動している、それはまるで寄生虫に乗っ取られた昆虫のようである。
他人にすごいと言われたい承認欲求と、いいねや表示数が欲しいという欲求がうまく重なり合ってしまっている。承認欲求の強い人間とSNSはとても相性が良いのである。
行動する前に考えたほうが良い、それは本当にあなたが真に望んでいるものか、それとも目先の欲求に操られているだけなのか。

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