インスタグラムをやめたので語ってみる

筆者がインスタグラムに登録したのは2014年。当時はまだ海外に住んでおり、中学3年の後期で卒業前だった。僕が住んでいた国では中学生になると、進路が大きく二つに分かれる。高校か専門職学校への進学の二択である。専門職学校は卒業と同時に資格が得られるので、例えば自動車整備士や電気工事士になりたい場合は専門職学校に進学することになる。一方、将来がまだ決まっていない子や大学など更に進学したい子は高校へ進学する。自分のやりたい事をかなえるための手段として学歴や資格を取得するという点では、日本と価値観が異なる。

さて、当時はiPhoneでいうと4、4sが現役で、アンドロイド端末ではサムスンのギャラクシーシリーズが同級生たちの間で人気だった。そんな中筆者はノキアというブランドの端末を使っていた。
当時のノキアは廃れつつあるメーカーの一つで、何とかユーザーを引き留めようとWindowsを搭載したWindows phoneであるLUMIAシリーズを展開していた。
当時の筆者は新品の携帯電話など簡単に買ってもらう事はなかったので、ノキアの古い端末を使っていた。この端末にはSymbianというOSが載っており、これはios、Android、Windowsのいずれとも互換性はなく、提供されるアプリも独自のストアでダウンロードする形式だった。

ある日、同級生がインスタグラムというSNSの話をしていて、その話題に入らせてもらった。簡単に言うと写真を投稿してみんなと共有するサービスである。すでにフェイスブックのアカウントは持っていたが、フェイスブックと大きく違う点は実名でなくハンドルネームで登録できること。
当時は画像もしくは10秒から15秒程度の動画が投稿できるという、きわめてシンプルな機能のSNSで、画像のアスペクト比も1:1固定だった。だから「真四角の写真=インスタグラム」のような概念がこの当時は一般的だった。コメントを投稿することはできたので、それを利用して知り合い同士がチャットのようなことをする場面もあった。また、文章を書いたメモ帳の画面をスクショしたものを投稿して、フェイスブックやツイッタ的な使い方をする人もいた。

筆者の持っていたノキア製スマートフォンではアンドロイドやiPhoneのようなインスタグラムのアプリは提供されていなかった。その代わりに第三者が開発した、インスタグラム投稿専用アプリというのが提供されていた。このアプリは文字通り投稿専用で、閲覧はできないが有料だった。
どうしてもインスタグラムが使いたかった筆者はこのアプリを購入した。しかし次の試練が待っていた。前述のとおり当時のインスタグラムに投稿できる画像はアスペクト比が1:1に限定されていたので、まずは携帯のカメラで撮影した画像を1:1に切り抜く必要があった。そこで写真を簡単に指定のアスペクト比にトリミングして、必要に応じてフィルターまでかけられるアプリも入手した。

当時のインスタグラムに写真を投稿するフロー(筆者版)
1・携帯のカメラで撮影
2・トリミングアプリで1:1に切り抜く
3・何らかのフィルターをかける
4・投稿専用アプリで加工した画像を読み込む
5・投稿する
6・投稿できたかをPCで確認する

PCではインスタグラムのアカウント登録や閲覧は可能だったが、投稿はできなかった。一方、投稿専用アプリでは投稿以外はできなかったので、投稿したらPCで確認したり、フォロワーの投稿を見たりしていた。

高校への進学を決めて中学を卒業、親がアンドロイドスマホを購入してくれた。サムスンのGalaxy Xcover2という、防水が売りのスマホで、それ以外のスペックは当時のほかの機種に劣っていた。
購入したスマホに最初にインストールしたのはやはりインスタグラムだった。撮影から投稿、閲覧まですべて一つのアプリ、一つの端末でワンストップに行うことができる、これほど画期的なことはなかったと、いまだにその時の感動は忘れない。
高校ではインターネットを使った授業が行われることからモバイルデータプランの付いたキャリアも契約してもらった。データは無制限だったので、今までは家や公共のWifiに縛られていたが、これからは携帯の電波が届く範囲であればどこでもいつでもインスタグラムに写真を投稿できる。まさに夢のような世界が広がったと感じた。

時代が進むと同時にインスタグラムも変化してきた。1:1のアスペクト比でしか投稿できなかったのが、やがて自由なアスペクト比で投稿できるようになった。また、DM機能も追加されてフォロワー同士で密にメッセージを交換できるようにもなった。やがてストーリーという縦画面の動画が投稿できるようになるなど、別のSNSアプリの昨日まで追加されるようになった。
この辺から筆者のインスタグラムに対する興味は薄れていった。UIも以前と全く異なっている。

筆者は写真を撮ることも趣味なので、インスタグラムとの相性はよかったのだと思う。画像のアスペクト比や解像度に制限がなくなってからは、一眼カメラで撮影した画像も投稿できるようになった。この辺から少しずつこじれてきたと筆者は思う。要はインスタグラムに投稿するためだけに写真を撮影するようになったのである。やがては撮影機材にまでこだわるようになり、お小遣いをはたいては身の丈に応じないような高いカメラやレンズを購入してみたりする。コロコロとカメラを買い替えたりなど、まさにSNSに操られるような心理状態に突入したわけである。

このままでは幸せになれないと思った筆者はインスタグラムをやめることにした。
やめてからもカメラを持って出かけることはあるが、以前のようにインスタグラムで映えそうな画角を求めることはなくなり、出かけることも写真を撮ることも楽しいと感じるようになった。

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