【本】 気候変動・脱炭素14のウソ(渡辺正著)を読んで/CO2増加傾向はほんとう。ただし、「CO2は悪なのか?」という問題提起
14のウソに入る前に以下章がある。
ウソの内容もさることながら、「ホント」(真実)とされるこの事実だけを押さえておくことが出発点。
まず世界には CO2濃度を定点観測する場所が120箇所以上ある。
日本では、1987年岩手県大船渡市の綾里(りょうり)からCO2濃度の定常的観測を開始し、他に2か所存在している。
日本最東端の南鳥島(東京都小笠原村)と
日本最西端の与那国島。
各観測所の観測データはこちら(月平均、年平均の順)
気象庁は、その観測結果を、毎年3月と10月にまとめて公表している。直近では2024年3月にあった。
しかし、歴史上一番古い観測所としてはハワイ島にある「マウナロア中腹」の観測所。ここでも1958年に観測開始以来(約70年間)、ずっと二酸化炭素濃度は上昇しており、本は、この毎年増加の方向で記録を更新続けることについては、何の新しさもないと指摘している。
ただ増加傾向であることを報告し続けることが大事なのだろう。
以下は、二酸化濃度曲線でキーリング曲線(Keeling curve)といわれるものであるが、マウナロア(Mauda Loa Observatory)のものだ。
なお、チャールズ・デービッド・キーリング(Charles David Keeling、1928年4月20日 - 2005年6月20日)とは、次の人物
ちなみに、2022年11月のマウナロア火山噴火の際、データが取れなくなっているとのニュースが流れた。
しかし、こちらから、マウナロアのデータについて色々な周期のものを見ることができ、計測が継続されていることがわかる。
本によれば、観測所の位置が北半球か、南半球化によって、年間の推移について植物の光合成の活発度の影響を受けるが(春から夏は光合成が勢いを増しCO2濃度が上がる、秋から冬は逆)、それを均せば、全世界120以上の観測所のCO2濃度はほとんど違いがなく、どこでも同じ変化を示しているとのこと。
実際、以下の記事では、「ハワイのマウナロア観測所で測定した大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は、2021年5月に月平均で419ppmに達し、正確な測定を開始して以来最も高い水準に達したと発表した」が、気象庁の観測データでも、綾里では2019年3月と4月に月平均で419ppmに達している(他の2か所の観測所ではそこまで行かなった。)。
このように、地球のどこでも(自然に近い環境であるならば)CO2濃度はずっと上昇してきており、他の観測所におけるデータとの相関性、類似性が高いということだとすれば、CO2濃度の上昇傾向や進行度合いを捉えるという点では、この観測所でデータが取れなくなっても、他の観測所のデータが補完的に役に立つだろうと思う。
まとめると、地球規模においてCO2濃度は上昇傾向にあり、それは事実だということ。
そのうえで、それが事実であるとしても、
❶CO2濃度の増加が、すべて人の活動によるものなのかは不明である。
というのは、地球の大気には総量約3兆トンのCO2が含まれるが、人間活動によるCO2の年間排出量(※)は約1%にとどまり、その影響は小さい。
さらに、CO2は、同じく大気中に含まれるH2Oと比較すると大気の0.04%に過ぎず、その中のさらに数%の変動が大きな影響を与えているとは考えられない。
なお、CO2排出量に関しては色々な組織の公表データがあるが、「国際エネルギー機関IEA」の発表データによれば、年間で見た全体の排出量(エネルギー燃焼、産業排出量、フレアリング?)の数字として、本では2021年までの数字(330億トン)を紹介。2022年のIEAの数字はさらに増加して約374億トンだが、それでも約3兆トンに対しては約1.24%にとどまる。
❷CO2増加が、地球温暖化・温室効果に与える影響力も不明。
地球表面の暖かさはほぼ太陽エネルギーに由来し、太陽光は、地球に届くまでに赤外線に変わり、大気がさらに赤外線を吸収した後、エネルギーの一部が地表に放出され、地球表面が暖まる。地球の大気には、上記のCO2約3兆トンのほか、数十倍ものH2Oが含まれており、それによる太陽エネの吸収率や温室効果はCO2よりずっと大きい。
❸何より、CO2は地球上の恵みであるという発想が新しい。
地球上で植物が光合成を行い、これを通じて吸収する年間約4000億トンのCO2は、生物の呼吸と腐敗を通じてほぼ同じ量だけ大気に戻ってくる仕組みになっている。何て素晴らしい互恵関係にあるのだろう。植物に必要なCO2の増加は、地球の緑化をもたらし、食糧増産につながっている。
私には正解はわからないが、すくなくとも、現段階では、気候変動対策という意味では、CO2を悪者にしてその削減を声高に叫ぶよりも、災害の危機に対する備えの強化、強靭化のほうが重要なのではないかと思っている。優先順位の問題として、いざというときのセーフティネットを強化し、公助・共助・自助のバランス、良い連携の在り方を示すことのほうが、緊急を要するように思う。
本の内容についてはさらに理解を深め、このページを更新していく予定。
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