24/8/21「ふるさと納税」

「ふるさと納税」を学び、知るには、総務省のポータルサイトがおすすめ

ふるさと納税に関するメリットや注意点を説明したサイトは色々あるが、やはり総務省のサイトは充実している。

今年8月2日に(その後一部のデータを8月24日に微修正)、恒例の現況調査結果についても公表しており、各メディアも報道していた。年々増加しているとのこと。一大マーケットだ。

概要:https://www.soumu.go.jp/main_content/000960670.pdf

最近の話題は、今年の6月25日に、総務省がふるさと納税のポータルサイトにおけるポイント付与を来年10月以降、禁止するとの方針を発表したこと。

ポータルサイトそのものが禁止されるものではなく、ポイント付与が禁止される。

以下、松本大臣の記者会見(2024年6月25日)

・・・告示とQ&Aの見直しを考えている・・・

「返戻金目当てではなく、寄付金の使い途や目的に着目して行われることが意義がある」とし、要するに、本来の制度の目的、つまり税金の目的(これは考え始めると実は深いテーマであり、然程わかりやすいものではないのと思うが)に対して、付随的・副次的な目的が主役になってしまっていることに対する懸念を表明したものだ。


以下は、見直し事項として、大臣から言及があったもの

①募集の適正な実施に係る基準:ポイント等を付与するポータルサイト事業者等を経由した寄付の募集の禁止(令和7年10月から適用開始)

②食品産地の適正表示を確保する措置(令和6年10月から適用開始)

③地場産品基準:「区域内の工程が製造ではなく企画立案等であるもの」「区域内の宿泊等の役務」について、自治体で生じた付加価値や地域との関連性をより重視した形の見直し(令和6年10月から適用開始)

早速、6月28日に改正内容が公表されている(概要、改正告示の新旧対照表、Q&A)

▶上記の①募集適正基準の見直しがまさにポイント付与禁止(話題のテーマ)に関わるが、
総務省告示第179号(令和6年6月28日最終改正)
特例控除対象寄附金の対象となる都道府県等の指定に係る基準等を定める件の第2条第1号ロ
が次のように改正された。

※なお、概要資料には、2条2号が改正になったような記載があるが、正しくは1号ではないかと思う。

 地方団体による第一号寄附金(法第三十七条の二第一項第一号及び第三百十四条の七第一項第 イ 一号に掲げる寄附金をいう。以下同じ。)の募集として次に掲げる取組を行わないこと。

イ 特定の者に対して謝金その他の経済的利益の供与を行うことを約して、当該特定の者に第一寄付金を支出する者(以下「寄付者」という。)を紹介させる方法その他の不当な方法による募集 

ロ 次に掲げる者を通じた募集
 (1)
 (2) 第一号寄附金の寄附に伴って寄附者に対し金銭その他の経済的利益(第一号寄附金に 係る決済に伴って提供されるものであって、通常の商取引に係る決済に伴って提供され るものに相当するものを除く。)を提供する者(第三者を通じて提供する者を含む。) 【新設】

ハ 返礼品等を強調した寄附者を誘引するための宣伝広告(当該地方団体と第一号寄附金の募集に関し契約を行った者及び当該地方団体の返礼品等を取り扱う者が行うものを含 む。)【太字部分追加】

告示2条1号(上記サイトの告示新旧対照表)

▶なお、②も募集適正基準の見直しの一環であるが、これに伴い、2条3号が新設され、③の地場産品基準の見直しに伴い、5条3号ロ、7号の2、7号の3が新設された。(これらの詳細は省略)

ここでポイント付与禁止に関する要件をまとめると

禁止されるポ―タルサイト事業者とは:
・寄付金の決済にともなって
・寄付者に金銭その他の経済的利益を提供する者であり、
・この経済的利益には、「通常の商取引に係る決済に伴って提供されるに相当するもの」は含まれない。

上記条文より要件抽出

考え方についてはQAを見ることになる。
なおあいまいであれば以下の連絡先に問い合わせることになるだろう。

気になるのは「通常の商取引に係る決済に伴って提供されるに相当するもの」とは?

以下は問1の3

▶ ポータルサイト運営事業者等により、直接・間接を問わず寄附者に付与され るポイント等(「マイル」、「コイン」等その名称を問わず寄附者に付与される 経済的利益をいう。以下同じ。)については、広く「第一号寄附金の寄附に伴 って寄附者に対し金銭その他の経済的利益」に該当する

Q&A 問1の3

▶ いわゆるポイントサイト等を経由してポータルサイトに遷移し寄附 を行った際に当該寄附に伴って付与されるポイント等については、当該ポータ ルサイトの運営事業者等により直接寄附者に対して付与されるものでなくて も、寄附に相当程度関連するものであると考えられることから、「第一号寄附 金の寄附に伴って寄附者に対し金銭その他の経済的利益」に該当する

Q&A 問1の3

▶ クレジット会社やキャッシュレス決済事業者等により、ふるさと納税 に係る寄附に係る決済に伴って付与されるポイント等については、「第一号寄 附金に係る決済に伴って提供されるものであって、通常の商取引に係る決済 に伴って提供されるものに相当するもの」に該当するが、これらのうち、ふ るさと納税に係る寄附に係る決済を対象として追加的に付与されるものにつ いては、「通常の商取引に係る決済に伴って提供されるものに相当するもの」 に該当しない。

Q&A 問1の3

許される(経済的利益から除外される)のは、クレジット会社等が、寄付に係る決済時に、他の決済同様一般的に付与するポイントの類だ。よって、その他の態様により追加的に付与される類のものは、クレジット会社等によるものであっても許されない経済的利益に該当するようだ。そのため、こうした利益を付与するクレジット会社等を通じて行う募集もNGとなる。

(告示第2条第1号ロ⑵の「第一号寄附金の寄附に伴って寄附者に対し」提供 される「金銭その他の経済的利益(第一号寄附金に係る決済に伴って提供され るものであって、通常の商取引に係る決済に伴って提供されるものに相当す るものを除く。)」に該当すると考えられる例)
・ ポータルサイト運営事業者等が寄附者に対して、寄附に付随して付与する ポイント等
・ いわゆるポイントサイト等を経由してポータルサイトに遷移し寄附を行 った際にポイントを付与する当該寄附に付随して付与されるポイント等
・ クレジット会社やキャッシュレス決済事業者等が、寄附に係る決済に付随 して付与するポイント等のうちふるさと納税に係る寄附に係る決済を対 象として追加的に付与されるもの及びふるさと納税以外のサービス等の 利用状況等に応じて追加的に付与されるもの

Q&A 問1の3

なお、Q&Aの問2~4では、「返礼品等を強調した寄附者を誘引するための宣伝広告」(告示第2条第1号ハ)について扱っている。この規定自体は以前からあるが、今回の改正で、「自治体」が行う宣伝広告だけでなく、「当該地方団体と第一号寄附金の募集に関し契約を行った者及び当該地方団体の返礼品等を取り扱う者が行うものを含む」ことが明確化されたため、ここでも、ポータルサイト事業者の宣伝広告がやりすぎていないかブレーキが掛けられることになる。

(※なお、法令等改正の場面で使用される「明確化」というのは、多くの場合、今までなかった新しい規制を課するものではないという意味合いが込められている。以前から解釈上は含まれていたと考えられるものの、曖昧であったため、エンフォースメントも十分に行われていなかったという状況に対し、文言上明確に規定してエンフォースメントを適切にやっていきますよ、的な意味合いを持っているといえる。)


ポイント付与する今のポータルサイト事業者を通じた募集の仕組みがダメということになると、まず見直すべきは、ポイント付与の方法・内容になると思う。

そのうえで、さらに、宣伝広告の方法が色々問題になるだろうと思う。


楽天の署名活動についてはこちら。
7月9日には100万件の署名が集まったと発表。

今はどこでもポイント、ポイント、レジでは会員カードやアプリを取り出してわずかなポイントを積み上げていく。いたるところでPOSデータと会員情報をセットで落としていくことに最近すこし嫌気がさしてきているところ。

まだ態度決定できず、流されるまま、その時に気分に応じて参加している。

総務大臣いわく、納税者は、このふるさと納税という全体の仕組みの運営に要するコストのごく一部しか負担していない(寄付という意味を実質付与する2000円相当のことをいうのだろう)のに、それに加えて、さらにポイント言う追加的メリットを得られていたのを、今回適正化するとのこと。

また、日テレNEWS NNNによれば、自治体から仲介サイトへの事務手数料(寄付金額の約10%)を支払っており、その中にポイントの原資が含まれているとの見方もあり、総務省は、競争緩和で手数料の減額が期待できるとしている。

楽天は、ポイント原資はすべて自社負担であると反論。

ただ、どこからその原資を工面し、何のために楽天はその原資を負担するのだろうかという疑問がある。

総務大臣は、各企業のことはコメントできないが、(全くないとは言えない程度の趣旨か・・)寄付金額からポイント原資も流れているのではないかとの見方は維持しているようだ。

ちなみに、告示2条の募集適正基準には従前から以下の規定がある。

イ 特定の者に対して謝金その他の経済的利益の供与を行うことを約して、当該特定の者に第一寄付金を支出する者(以下「寄付者」という。)を紹介させる方法その他の不当な方法による募集 

告示179号第2条第1号イ

QAによると:
ふるさと納税に係る事務の一部を委託するため、広く一般に地方団体 の情報を提供するために活用されている民間事業者が運営するいわゆるふる さと納税ポータルサイト(以下「ポータルサイト」という。)や、観光協会・ まちづくり協議会などに対し地方団体が委託料を支出することは、「特定の者 に対して謝金その他の経済的利益の供与を行うこと」には該当しない。

総務省Q&A 問1

事務手数料は、ここでの「謝金その他の経済的利益」には該当しないとされている。ただ、お金には色がないし、名目次第で事務手数料にもその他の謝金にもなりうるものだ。総務大臣も、実施的に見て謝金その他の経済的利益であるとするものではない。集客のためのポイント付与でコストがかかっており、それ見合いであるとすれば、委託手数料であるということもできる。いずれにしても、この規定自体は、自治体と仲介業者の間の金銭授受を規制する規定ではあっても、ポイント付与を直接規制する規定ではないのだ。

一方で、委託料の内実は委託した事務に見合うものであるべきであるが、自治体の広告宣伝、顧客紹介が事務だとして、そうした類の事務手数料は仲介業者の顧客基盤と販売力に応じて決まるのが世の常であり、それにポイント付与が大いに貢献しており、本来のニーズを超えて肥大化しているとすれば、健全とは言えないように思う。そして、その結果、事務手数料も高額化していき、同時に自治体に対する交渉力にも繋がるとすると、他の事業者が淘汰されていくだけだろう。

こうした状況が、そもそものふるさと納税の趣旨(自治体において納税資金で地域のため本来の自治体の仕事を存分に行ってほしい、寄付者には納税者意識や地域への感謝の気持ち等から主体的に寄付先を選択してほしい)に反するのはその通りであり、自治体と仲介業者、仲介業者と寄付者との健全な取引環境を確保して制度の全体最適を図るうえでは、こうした規制もやむを得ないのではないかと思う。

今年公表された調査結果によれば、他は割合的には減っている中、事務費用の占める割合は昨年度より増加している、ということはいえる。過去からの推移を含め、詳細な分析結果を総務省は押さえているはずだから、そうした分析データも使ってぜひ補足してほしいと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?