保守政治家「わが政策、わが天命」石破茂著、倉重篤郎編著 講談社

素敵な装丁 見返しは濃い茶


本屋で思わず手に取って、これを機としてそのまま購入。

読んで、色々知らなかった来し方が書かれており、とても親近感を覚えた。

書かれている考え方も、こう言っては失礼かもしれないが、良い意味で期待を裏切られたかのように、極めて真っ当なことを述べておられ、大変勉強にもなる。保守とリベラルが交錯するバランスの上に立脚。思想の一貫性と寛容の精神。巷で耳にする防衛オタクとかなんとか、人気がないとか、面倒見が悪いとか。。それは一面的で狭量な評価だ。政権批判も辞さないとも、ネガティブなニュアンスで語られる。はて、人から成るものに完璧なものなどあるだろうか。完全な一致もないだろう。異なるものとの相互交流によって人は自らを客観視し相対化することができる。特に身内の苦言は気づきを得る身近なツールだ。これがないとただ堕落と腐敗に至るのではないのか。企業の不正も組織の不正も自浄が利かなくなるのはこれが理由だ。

いずれにしても、この本を読んで私にはまるで異なる人物像が得られた。そして共感できるところが実に多い。

たとえば台湾有事の問題に関しても、かつて海外のニュースで聞いたことを思い出した。

時期としては、今年の4月に、アメリなど日本がフィリピンを訪問して3カ国の防衛協力を発表した頃のこと。その識者は、中国が台湾侵略に進むか懐疑的な論調だったが、そこでは、いかにアメリカが軍事的なハードパワーで世界において圧倒的に優位にあるか(dorminant)を述べ、一部で軍事的挑発行為も見られるものの、中国の現実的な台湾政策は一貫して相互互恵を目指したものだとした。意図を持ったレトリックがこうした事実を覆い隠して過剰に脅威を煽っている。なお、日本はアメリカにsubservientだと淡々と述べられていていた。従属する、へつらう、媚びるという形容詞だ。

世界の緊張を読み解く上では、核抑止の関係だけでなく、アメリカの軍事的な優位を常に意識することが必要だと感じた次第。

日本も防衛費を増強するのであれば、我々は正しく脅威を理解した上で必要な国防力がどのようなものかを考え備えることが大事だ。同時に主体的な外交的努力を常に怠らないことが大切なのだ。

環境問題も、脱炭素ばかりが言われがち。
でも環境問題はむしろ災害の脅威の高まりであり、防災省創設には大いに賛同できる。

<追記>

読書後、こちらの週刊現代の記事を見た(24年8月5日掲載)。本の編著者である倉重篤郎(毎日新聞客員編集委員)が書いている。
既にマイルストーンは次の局面に移行してはいるが。

この本の感想について石破氏のコメントの紹介。

「何というか。『等身大の私』、『素の私』のようなところが出ていると思います」というのが石破氏の感想だ。

上記の週刊現代

それはよかった。
ただ、この種の本を出すことに最後まで消極的であったという。自己宣伝臭を嫌ったとか。倉重さんの考えとしては、

ただ、日本政治の最高権力者になるかもしれない人物について、この際その素の姿を世に広く知ってもらうという公益性の優先、という理屈で半ば強引に押し切った、という経緯がある。

上記の週刊現代

一般の読者(有権者)としては、これは大変ありがたい企画だ。

最後にこの夏の読書のテーマについても尋ねている。

米国政治を動かすクリスチャン・シオニズムとは何か。それとロシア正教とプーチンとの関係について、でしょうか。

『プーチン重要論説集』('23年・星海社新書)
をきちんと読んでみたい

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