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結論から話し始めて最後に話が散らかっちゃってた過去の自分に伝えたいメモ

「結論から話しなさい」

100ギガ回は見聞きした言葉である。
学校だと言われない。式と答えしかりで順番に説明して答えが合ってれば良い。

社会で結論から話すべきとされるのは、相手の思考コスト節約のためである。時間がない中で、相手が何を言おうとしてるかわからない話を聞くのは苦痛だ。
「○○の承認を通すためにレビューしてほしいのですが」みたいに、目的を最初に言われれば、以降の話を聞くのが楽なのだ。

この結論から話すということは、言いたいことが整理できてなくてもそれっぽくできてしまうことに罠がある。
過去の僕は未熟すぎて、途中でふらふらと話が旅に出てしまって冒頭の結論に帰結できないことがよくあった。
たとえば、5分のスピーチ。プレゼンでもなんでもいいのだが、話を着地させることって意外と難しい。

たとえば、ジブリ映画でナウシカが一番素晴らしいと言いたいというスピーチがあったとする。
「ナウシカが一番素晴らしい理由は、腐海の蟲と分かり合おうとする姿がかっこいいからです」と冒頭で結論を述べたとする。以降は、他に好きな部分を次々と並べてアピールする。
「空も飛べるし強いし面白いしドキドキするし、音楽も良くてとにかく最高なんです」と結んだとする。

はい。冒頭の主張と違う着地をしました。
「結論から話しなさい」の文法に従うと失敗である。
ただ、説得の論法だと最初に大きな主張をしてから補足をしていく手段もある。
「私の長所は新しい技術への学習意欲です。興味があれば調べたり検証しますし、応用情報技術者という資格もあります。5大クラウドの私用アカウントがあって技術ブログも書いてますし、AWSとAzureは資格にも挑戦しました。技術セミナーやセッションも視聴します。気になることがあると調べずにはいられない性分なので、飲み会の店探しなんかでも重宝されます」
みたいな話だと、特に結論がなくてオッケーだ。着地点がちょっとずれても会話は成立する。

ただ、「結論から話しなさい」と言われるシーンでは、最初と最後に話す結論は一致しなければならない。

ちょっと話が変わるが、プレゼンの神様の澤円さんの話って結構あちこちに飛ぶ。本を読んでても遠慮なく脱線する。主題と全く関係ない話を展開することもしばしばである。しかし内容は決して破綻しない。誰かを退屈させることもない。
これは「澤さんの話」というブランド力と、「面白く伝える基礎能力」のずば抜けた高さと、「派手な脱線からも復帰できる力」があるからこそだ。一番重要なのは、最後の復帰力である。
強力な得点力があるからこそ多少型破りな構成でも見るものを魅せるのである。

つまり、最後にきちんと結論に戻ってくることに集中できればそれなりに形は整う。
で、そのために、PREP法といううってつけの手法がある。

P=Point(結論)
R=Reason(理由)
E=Example(事例、具体例)
P=Point(結論を繰り返す)

kindleランキング2位を記録したり、パクリ本が出たことで有名な私のズルい本は全編をこのPREP法で作った。
編集からはR(理由)が弱いとかE(事例)のボリュームが多すぎるとか、PREPの指摘をもらって組み立てた。章ごとのバランスも整えて、説得力のある構成を狙った。

これは結論を綺麗に落とし込むために必要な要素を理解するために、非常に都合がいい論法である。
R(理由)とE(事例)が同じになったりしても説明可能だが、最後にバシッとPという結論に向かうことが大事である。逆に、結論に向かっていない内容はそぎ落とす。脱線するとしても関係ある範囲で、かつRとEに許されるボリュームの範囲でやる。
特にこの時のテーマは世の中のビジネス書へのアンチテーゼだ。スタンダードと思われてるものを否定するには強力なロジックが必要だった。

原稿の一部を見てみよう。以下は生原稿からの抜粋である。

ビジネスシーンでいい大人が「好き嫌いで動いている」なんていうことは、にわかには受け入れがたいことだ。だから、理屈ではなく感情が優先された実例を軸に構成した。
E(事例)が強ければ説得力が増す。この事例では、仕事のミスも多く提案も上手ではない先輩が、「人柄を好かれている」という一点だけで大口取引を継続している例を記載している。
この先輩は本当にミスが多く、発注されても手配が漏れる営業マンだった。その「また忘れたのか。しょうがないな」と取引先の社長はいつも先輩を許した。しかもなぜか嬉しそうなのである。
この二人の関係はちょっと他人にはわからない。しかし、厳しい競争社会で熾烈な争いを強いられる中で、社長にとっては先輩の支えが大きなものだったのだろう。
先輩にだけ社長は本音を漏らしたし、第一取引先として全面的な味方であるはずの僕や他の人には、本音とは真逆の強がりを言った。

論理的に説明が難しい「好かれることの効果」に説得力を持たせるにはE(事例)が必要で、ここがP(結論)に向かっている内容であれば、着地は非常に容易だ。

しかし、PREP法にも欠点がある。
最初に全体像が整理できてないとこの論法が使えないことだ。つまり、材料が全部揃っている前提があってこその調理法なのである。各要素のバランスが悪いと、最後のP(結論)が綺麗に仕上がらないのである。

私もnoteなんかだと面倒なので、思いつくままに書いてしまう。ビジネス書だから時間をかけて整理して美しい形に仕上げようと思うが、仕事じゃなければやらない。

でも、話を着地させることが下手だった時代の僕には一番教えたい話だし、誰かの役に立つといいなと思って書いておこうと思った。

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