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わかる人が仕事を進める

「わからない人同士が話をしたって進まないんじゃないの?」
新卒のときに営業課長から言われた言葉である。

課長はめちゃくちゃ仕事ができる。
売りすぎて競合他社から怪文書が流されるくらいずば抜けた実力を持っている。

ところが、できる営業マンだからといって、何にでも詳しいわけではない。特に商社の仕事は薄利多売で取り扱う商品が膨大なので、わからないものを売ることの方が多い。問い合わせを受けて調べて仕入れて売る。
顧客のよくわからない要求で、マニアックな部品を、しかも存在するかどうかわからない品物を探す。

そうなると、やっぱり詳しい人を探し当てる勘どころみたいなものが重要になる。冒頭の言葉のように、わからない人が集まって相談しても解決しない。

僕はそれから20年弱たった今もその言葉を噛みしめる。仕事が進まないときは、何か根本的に間違っているものだ。
・仕事を振る相手の役割と違うものを頼んでしまった
・役割は合ってるが、該当の仕事の知識がなくて進められない
・役割は合ってるが、忙しくて手を付けられない
・役割は合ってるが、関係者と調整して仕事を進める能力がない

要約すればミスマッチとか能力不足とかになると思うが、「わからない人には進められない」と表現することもできる。

だが、仕事というものは往々にして「どう進めればいいかわからない仕事」というものがある。
僕も今そういう面倒な仕事を抱えている。関係者が多すぎるし、物事をまとめるのに時間と手間がすごくかかりそうな厄介ごとである。

課長の教えに従えばわかる人を探すべきなのだが、それがいない。役割的に僕がやることでもないのだが、他に頼めそうな人もいない。
じゃあどうするか。

必要なタスクを分解して、わかる人に頼むことにした。
・契約面の調整は営業に
・契約したものを管理するのは管理部門に
・設計などの不明点は自分が
・技術的に支援を頼む相手は必要な権限を持つチームに

それでもまだ分解できずに浮いてしまうものがあったが、こういうものは一つずつやっつけていけば楽になるものである。ただ、プロジェクト全体に影響を及ぼすことなので、先は長い。
その間、PMに進捗を急かされることになる。(僕も自分がPMではない案件に駆り出されてアサインすることがある)

誰にもよくわからないことを分解して作業分担する。それが正しいのかどうか知らない。こんなことのせいで、僕の仕事もあふれてる。一円の成績にもならない。

でも、課長だったら鮮やかにやってのけただろう。
課長は泥臭い仕事を厭わない。
手間がかかる仕事を、しっかり手間をかけて消化する。
やっぱり僕もやらないとなぁと思う。
課長は僕が商社を辞めた後に、所長になったという。

ああ、めんどくさい。技術に集中したい。稼ぐ仕事をやりたい。セキュリティをやりたい。新しい提案をしたい。他のやるべきことをしたい。

しかし、これだけ面倒なことだからこそ、他人任せにしたらどうにもならないものだ。さっさと片付けて脳内の課長にドヤ顔しようと思う。

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