第三十二話 公開虚言
秦山明が入部し、メンバーの層が厚くなった梁山華道部。
栄花は生徒会との約束通り、弓道部に所属したまま兼務として梁山華道部にも時折り顔を出す。
花の妹、栄宝は憑依霊の力はないものの明の身の回り世話をする為に部室にちょくちょく現れるようになった。
今日は木曜日なので毎週水曜日の奉仕活動もない為、秦山明の真名開花を目指して特別研修が開講していた。
「んで、あるからして、真名開花とは憑依霊の生前の名を思い出す事で憑依霊の力を100%引き出す秘術でゴザルよ!」
「それは、さっきから何度も聞いてるヨ!だから真名ってのは、どーやったら思い出すんだヨ!」
講師を買って出た天王洲燕は、自分の知る範囲のうんちくを延々と繰り返すだけで、秦山明が痺れを切らしている。
「こんな研修は無意味だわ。誰もマニュアルで真名を思い出した人なんて今まで居なかったもの。」
呉羽が燕と明の漫才を聴きながら呆れ顔で呟く。
「そうね。アタシ達も憑依霊を操れるようになった時には、既に真名を知ってたわ。」
阮小三姉妹の長女、阮小二葉が同意する。
「当然だろうな。そもそも真名開花なんて秘術自体が虚言なのだから…。」
「そうねぇ…真名開花は虚言…って何言ってるのがっきゃん!?」
学究の言葉に釣られそうになり、慌てて我に帰る呉羽。
「何もない。王倫子が生み出した秘術、真名開花など、只の虚言だと言っているのだ。」
学究のとんでも発言に呉羽と阮小三姉妹が目を丸くした。
「やはり、そうでしたか。」江戸s宋蘭が後に続く「皆さんのトレーニング、見てて違和感ありました。道場の時は真名開花すると生前の姿、一緒だけ現れる。でも部室だと変わらない。それとても変です。」
「だが、技の威力は間違いなく強くなる。呉羽、この矛盾お前ならどう考える?」
「強くなっているのは憑代と憑依霊がシンクロしているからで、道場だけ姿が変わるのは道場側の演出?」
「断定は出来ぬが、その可能性が濃厚だな。」
「なんで、そんな事を…。」
「王倫子は秘術を完成させる為に生徒会の電子科学研究会に支援を受けたと聞く。」
「始めから高山廉の仕業だったって事?」
「科学の力だけでは説明がつかぬ事もある故、別の何か…例えば、呪いや暗示、洗脳もあり得るか…。」
「まって、それってシロちゃんの例の漢字だらけの写真…!」
「うむ。生徒会の誰かが、我が祖国の呪術を悪用し憑代達を洗脳している。」
「まんまと手のひらで転がされて、さも自分達だけの能力だと思い込んでたなんて…。」
「今は、そう思っていれば良い。逆にとことんまで茶番に付き合ってやれ!そして彼奴等が油断したところを噛みついてやれば良いのだ!勝てば官軍負ければ賊軍。今はとにかく力を蓄える時だ。」
呉羽の目が鋭く一点を見つめていた…。
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