居住用不動産の贈与税に関する配偶者控除 ②遺留分との関係

 この制度を利用するにあたっては、遺留分についても意識する必要があります。

遺留分侵害額請求権とは

 遺贈や死因贈与等を受けた人に対して、相続財産の中から法で定められた割合の金額を請求することができる権利のことで、一定の法定相続人に認められております。遺された方々の最低限の生活保障を趣旨としていることもあり、この場合の法定相続人として、兄弟姉妹(及びその代襲者)は含まれません。(民法1042条1項柱書) また、下記の通り生前の贈与についても、一定期間に行われたものについては請求の対象となります。
 近年の相続法改正により、「遺留分減殺請求権」から名を改められました。その理由として例えば、遺贈を受けた者と、遺留分を主張し請求する者(この者を「遺留分権利者」といいます)との間に直接のつながりがない場合でも財産の共有状態が生まれてしまう等、従来の現物の一部返還によるトラブルを避け、金銭の支払いで解決する趣旨です。

民法1046条
1 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

遺留分の対象となる生前贈与

 遺留分侵害額の算定基準としては、例えば次のように規定されています。
 

民法1044条
1 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。


 原則的に、贈与者が亡くなる1年前にその(生前)贈与を受けた財産については、遺留分の対象としての相続財産の算定式に含まれます。ただし、その財産に関して贈与者と受贈者の双方が、遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは1年以上前の贈与についても遺留分計算の対象となります。
 
 贈与税の配偶者控除の対象となる居住用不動産の贈与についても、夫婦間のあげた側ともらった側の両方が、その贈与により相続財産を減らしてしまうことを認識していたときは、相続開始後に遺留分権利者から請求を受けた場合、請求者に対して金銭の支払いをしなければならなくなる可能性があります。


 いずれにせよ、大切なのは早めに準備しておくことです。
 遺留分の問題も含めて、今手元にある財産を誰にどのように分配するのかを考えておくこと。可能な限り、資産の分け合い方について家族や身内と話し合い、共通理解を事前に得ること。これらのことが、相続開始後もお互いのより良好な関係を築いていく上で重要だと考えます。

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