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『そして誰もいなくなった』を読んだ

 そういえば、アガサ・クリスティ氏の『そして誰もいなくなった』を読み終えました。僕にしては珍しくミステリー小説を読んでみて、その中でも名作中の名作ともいえる一冊を読んでみた次第ですね。
 僕は、あんまり海外の本と言うのが苦手なのかもしれなくて、というのも翻訳者さんの翻訳のセンスが問われる場面もあるからですね。勿論、僕は英語が全く読めないので翻訳してくださっている時点でとてもとてもありがたいのですけどね。例えば、名翻訳といって僕が思いつくのは、R.D.レイン氏の『Do you love me?』を訳した村上光彦氏の翻訳、『Do you love me?』を『好き?好き?大好き?』と訳したのが思いつく。直訳してしまえば「私の事好き?」なのを、よりそれを言った彼女の狂気や依存を映し出す、素晴らしい翻訳です。

 とはいえ、『そして誰もいなくなった』の翻訳に問題があったのか?と言われると結果的にそうでなかったし、途中から読む手が止まらなくなって、犯人が誰なんだ…!!!というワクワク感が良かった。そのワクワクに拍車をかけるのが、小説の登場人物たちの心情表現ですね。人間らしい、どんどん周りの人間が殺されていく恐怖、死ぬたびに容疑者が減るのでどんどん犯人がこの中にいる…という疑心暗鬼が増幅する描写、どれをとっても良かった。
 僕の思うミステリーの落とし穴が、異様に登場人物が事態を把握していて頭が良い事、だと思うのです。これは良くないミステリーですね。作者の頭の中で完結しているせいで僕らに伝わらない。でも、この本は、登場人物がみんな等身大の人間なのですね。どんどん人が死ぬ異常事態に、おかしくなる人、指揮を執る人、全員の人間性が垣間見える。

 やはり、名作には名作と言われるだけの面白さがあるのですね。とてもいい読書体験でした。たまにはミステリーもイイですね。
 そして、途中で翻訳者の話をしましたが、この本の良いところである『心情表現』も、翻訳者さんのセンスが試されるところです。「I love you」を「私はあなたが好き」と訳すのか、「大好き」と訳すのでは、言って良そうな人や、状況が変わってくる。しっかりと、その人の今の心の状態や、人柄を理解したうえで翻訳していく、翻訳の難しいところだな、と思います。なので、どんな翻訳者さんにも読めるようにしてくれてありがとう…!!!という気持ちをもって海外の本を読みたいと思います。

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