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自宅に籠もりがちな時に読むべき徳弘正也作品2選+

今日ジモコロでこういう記事が掲載されました。みんな読んで~!

それで「こんにちは!ライターの大坪ケムタです」用にギャグ漫画絡みの写真を……と単行本を引っ張り出そうとしたら、ほぼ徳弘正也先生のしかなかった。ほぼってことはないけど、せっかくなんで固めて撮ってみました。

コメント 2020-04-07 210434

コロナで弱った徳弘クランに届け…!俺たちは仲間だ!玉袋を広げれば空も飛べるはず!

徳弘作品といえば、アニメ化もされた下ネタとジャンプ王道バトル漫画の奇跡の融合『ジャングルの王者ターちゃん』、下ネタとディストピアSFの悪魔合体『狂四郎2030』あたりは大好きな人多いと思いますし、最近『もっこり半兵衛』がツイッターで話題になってたりしてましたね。連載デビュー作『シェイプアップ乱』も当時読んだ人には頭に残るセンセーショナルな作品だったと思います。今読むと少年誌でこんなおっぱい出てたのか、とびっくりする。

ただ、打ち切り感ある作品もそこそこあるんですよね…。

最近読んだこれに影響されて全作レビュー!とかやりたかったんですが、思いついたのが記事掲載前日なので、あまり知名度がない作品の中でもこれは読んで欲しい!という2作を紹介してみます。いつのまにか電書化されてたし。

まずは『ふんどし刑事ケンちゃんとチャコちゃん』(2巻完結)。

徳弘先生初の青年誌連載で、ほぼ『シェイプアップ乱』連載終了のタイミングで新創刊された『スーパージャンプ』で連載開始。途中から『ターヘルアナ富子』『ターちゃん』などの週刊連載が重なったこともあり不定期連載になり、2巻完結です。

警察学校を主席で卒業した新人熱血刑事・茶屋四郎、通称チャコ。鼻曲署捜査一課に配属された彼がコンビを組むことになったのは、署きっての敏腕警部・剣崎二郎、通称ケンちゃん。射撃の腕もナンバーワンの鬼警部、しかしただひとつ彼が他の刑事たちと違ったのは、プライベートではサドの力士をパートナーに持ち、仕事となれば率先して女装して潜入捜査もこなす男色警部だったのです……。

今見ると主人公のケンちゃんのホモ&オカマネタ(当時の表現)が全開で、今読むには「現在では差別的な表現がありますが…」という注釈を入れるべきではないだろうか、と心配になるレベルなんですが、それまでの『シェイプアップ乱』でもたびたび見せていたバイオレンス&人情噺としての物語の隙のなさが本当に素晴らしい。

どれも1話完結の物語なんですが、ケンちゃんが自らが射殺した犯人の娘を育てていたり、レイプ犯を捕まえるも被害者が取り下げたのに怒って私刑を加えようとしたり、父親が刺殺された刑事という幼馴染女子とチャコの恋愛話など、ビターな話が多いんですね。少年誌連載の『シェイプアップ乱』だと不幸な子が出てきても最後はハッピーにまとめてたりするんですが、こちらではすんなりと正義が勝つ物語では終わらせない。その後『狂四郎2030』で全開になった部分をここで先んじて見せてます。あとたしか少年誌はきんたまに毛は書けないけど、青年誌は書けるそうでそこも先駆的表現。

個人的に好きなのは「逃亡者赤ひげ!の巻」。ケンちゃんと娘のまゆと一緒に信州の田舎に休暇に訪れたチャコ。素朴な過疎の村では通称・赤ひげと呼ばれる医者が、ひとりで村の老人たちを診察治療するだけでなく、畑の手伝いなどその世話をしながら過ごしていた。ただ、チャコはその善人の正体が手配中の爆弾技術に長けたテロリストだと気づく。そのことをケンちゃんは既に気づいていたが、赤ひげの村に尽くす姿と老人たちの擁護により逮捕を断念していた。
そんな上司のことをなじりながらも、チャコも情にほだされて村を後にしようとした夜、土砂が崩れて老人のひとりが岩の下敷きになってしまう。クレーンでないと動かせない巨岩。駆けつけた地元警察の前で、赤ひげは爆薬を出して老人を救出する。無事に老人は助かり、赤ひげは逮捕されるも、物語は「翌年赤ひげこと剛田たつおの裁判が開始され 信州の山奥から上京した30人の村人が弁護団席に座った」の一文で幕を下ろす。

こんな話ですが、物語中6回もキンタマはみ出してるコマがあるし(しかもほぼ無意味に)、いきなり1P目でCAに女装したケンちゃんが「ちえみって呼んでチビでのろまな亀の頭…」とひどいスチュワーデス物語パロディから始まる。あと肥溜めに落ちてウンコまみれ、という田舎ギャグもあり、と皆が知ってる徳弘クオリティの下品なギャグ満載。でもストーリーで持っていかれるんですよね。

同じく徳弘漫画好きでイベントもやったことある鶴岡法斎さんとは「ドラマ化してほしいよなー」「誰がコンビがいいかなー」とは前からよく話していて、昔は阿部寛と小池徹平あたりでドラマ化してほしい…と思っていたけど、今じゃ誰だろなー。吉田鋼太郎と染谷将太かな…(おっさんずラブと初恋に引きずられてる)

それともう一作、ぜひ読んでほしいのが『Wrestling with もも子』(2巻完結)。徳弘先生にとって少年ジャンプ最後の連載で、ずばり打ち切り作なんですが、これは青年誌に連載していれば&タイミングが良ければもっと注目される作品だったと思うんですよね。

八田学園に入学した格闘技オタクの岡イサム。クラスにとびきりの巨乳美女を見つける。それは全日本女子レスリングジュニア3年連続チャンピオンの持合もも子。彼女が通うちびっ子レスリング道場が潰れるのを知り、下心とレスリングへの興味で学校にレスリング同好会を作るべく奔走する。同じくスケベ心で仲間になったのはヒョロヒョロの和田正弘とデブの松波健一郎、しかしこの男子3人がいずれ日本レスリング界に旋風を起こすことになる…前に漫画は終わってしまったのだけれど。

ストーリーは運動マット一枚からスタートしたレスリング同好会が、彼らを敵視する相撲部と対戦し、外無双やタックルといったレスリング技で圧倒するのが1巻の山場。2巻ではもも子の先輩でもあり彼女に惚れている先輩の国見、アメリカ帰りの木田コーチら木田道場勢との対抗戦が描かれ、その勝敗がついたところで完結。レスリング取材もかなり綿密に行っていたようで、学園名の「八田」は日本レスリング界の父・八田一朗、木田道場はレスリングの名門・木口道場など、レスリング関連を匂わすネーミングも多い。

徳弘先生にとって連載では初のスポーツ漫画となるのが本作。どれだけ下ネタ書いてもさわやかに落とせるところが、やっぱり徳弘先生の素晴らしさで。そういう意味では学園ものは多いのにスポーツもの少ないのはもったいない。

『ターちゃん』で好きな回のひとつがターちゃんとペドロが戦う回(新11巻ペドロ対ターちゃんの巻)なんですが、ずっとターちゃんの弟子として携わってきたペドロがトーナメントで対戦相手となり、真剣勝負を行うことに。それまでの稽古の思い出をずっと頭の中でめぐらせながら戦っていく中、ターちゃんに初めてパンチをかすらせるペドロ。それを「ナイスパンチ!」と言われて思わず涙が溢れてしまう。その直後にスリーパーを極められて負けてしまうんですが、その「師匠に認められて嬉しい」ってスポーツライクな泣きを入れてくるところがたまらんのです。

ちなみにこの「涙が溢れ出るペドロ」、ジャンプ50周年記念のシリーズで出たターちゃんのLINEスタンプの中に選ばれてて「セレクターわかってる!」とめちゃくちゃ歓喜しました。

と『もも子』から話がずれましたが、『狂四郎2030』もだけど才能が超えてしまう残酷な部分と努力が積み上げるもの、両方とも書けた上で爽やかな物語を書けるのが素敵。

そんな爽やかさありつつ、『ターちゃん』も『キン肉マン』同様、連載途中でギャグからバトル漫画に転換した作品なんですが、バトル展開になっても下ネタは入れ続けたところが徳弘作品たるところ。どんなにシリアスな流れでもターちゃんは金玉を出すしエテ吉は交尾をする

連載は1997年。ちなみにオリンピックで女子レスリングが正式種目に採用され、吉田沙保里ら4人がメダリストになったのは2004年のこと…。この時期に青年誌に書いてたらなあ。でもやっぱ下ネタ多すぎだったかなあ。ただこの作品の後、スーパージャンプに移って『狂四郎2030』を書くことになるから結果的には良し、としましょう。

2選、というのも中途半端なのでもう一作、徳弘正也短編集1『彼女の魅力は三角筋?』より『美女は肉料理がお好き?』

第17回赤塚賞佳作作品で、これをきっかけにデビューすることになったと言っていいわけですが、今読むと構成がすごく落語っぽい話なんだけど、連続美女殺人犯の謎に迫りつつ、美人の姉が犯人である弟を思うあまりに殺して料理して出していた、てな人肉食というエグい真相から「こういうのを”人を喰った”話っていうんですよ」「アハハハハ、こりゃいいやー」ってひどいオチだ!最高!

その他『水のともだちカッパーマン』『ふぐマン』『バンパイア』『亭主元気で犬がいい』『黄門さま〜助さんの憂鬱〜』もいずれ紹介できれば。とりあえずはディストピア漫画の傑作でも読んでディストピアな日常耐え抜きましょう。ゲノム!

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