最近読んだ本の感想「ヒトラーの馬を奪還せよ」
歴史の事実として、「ヒトラーの馬(闊歩する馬)」は発見されたことが分かっている。
その発見にたずさわった本人が著者なので、そこに至るまでの経緯を知ることができる。重さ1トンもある大きな馬のブロンズ像が長い間、隠されていたのはなぜか。そして今になってなぜ売りにだされたのか。
「刑事コロンボ」というテレビドラマをご存じだろうか。このドラマでは、冒頭で殺人の様子が描かれる。そして殺人課のコロンボが、よれよれのコートを着て、かなり年季のはいったクルマであらわれる。そして数々の証拠をつみあげ、真犯人をおいつめていく。真犯人に質問した最後に、帰りがけに「あー、もう一つだけ質問があります」というのがお決まりだった。
著者は、なじみの美術商から、秘密情報としてトーラック作の「ヒトラーの馬」が売りにだされていることを知る。トーラックは、ヒトラーがひいきにしていた芸術家で、その馬はヒトラーの総統官邸の前に置かれていた。しかし、ソ連による攻撃で総統官邸とともに、破壊されたと思われていた。
トーラックは、その馬のミニチュアを5体作成していたが、著者はそのミニチュアから作られた贋作と考えた。
しかし、ヒトラーの生前最後の映像から、ソ連の攻撃前に、その馬は総統官邸からどこかへ移されたことを知る。
ナチの芸術品であるため、その調査は難航をきわめ、ときに拉致されたりと身の危険を感じることもあった。売主も代人を通じて接触してくるが、売り物が極秘のものなので、著者たちを警戒している。
その後の調査で、ソ連侵攻後にソ連兵士の運動場となっていた場所に、その馬が、ナチ芸術であることをかくすため金色に塗装されてい立っていた。あるアーティストがたまたま、その場所を訪れ、映像に記録していた。そしてそれを活動の際に公開していた。その映像は出てくることはなかったが、誰かがそれを写した記録フィルムがみつかり、著者はその情報を真実と確信する。
その後、ドイツ財産たる「馬」の売買にかかわったということで訴追されないように、ドイツ警察とともの調査を継続。
そして運命の2015年5月、ドイツ警察による強制操作が3か所で行われた。なかなかみつからず、著者は、見つからなかったときのことを考え冷や汗状態。最後に強制捜査の場所からすこし離れた大きな倉庫で、それはみつかった。
強制捜査が開始される前から強制捜査の様子を描いた部分は、ドラマティックだった。
いまでも、ネオナチ(広義の)が存在すること、当時のシュタージ(秘密警察機関)の危険な行動、アレクサンダー騎士団などのあやしげな組織があったということが驚きだった。
筆者アルテュール・ブラント(Arthur Brand) は、オランダ・アムステルダムで美術コンサルタント会社を経営しており、またの名を「美術探偵」。200以上の盗難美術品の発見を手がけ、「美術界のインディ・ジョーンズ」の異名を持つそうです。
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