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『マニア垂涎?』

 この話は2016年4月にトラベラーズノートのウェブサイト「みんなのストーリー」に掲載された旅のストーリーです。現在も掲載されています。そのままここに掲載いたします。現在も「みんなのストーリー」に毎月一作旅の話を書いています。これは掲載第102作目です。

 定期的にチェックするブログがいくつかある。トラベラー各位も様々なブログをチェックなさっていることと思う。私がチェックしているブログの一つにパンチ田原さんのブログがある。パンチ田原さんをご存知の方はかなりのプロレス好きだ。トラベラー各位の中にもプロレスファンは多いと察する。入場券のスクラップとともに観戦記をトラベラーズノートに記していらっしゃる方もいらっしゃるだろう。(私はスポーツ観戦記用に別に一つ用意しようと思ったことがあった)

 パンチさんはプロレス団体にリングや会場設営に必要な備品(椅子や柵など)を貸す会社を経営されている傍ら、リングアナウンサーやレフリーもこなす方である。好奇心旺盛で、ブログにもそれが表れている。私がそのブログで楽しみにしているのは、本に関することと文房具に関することだ。特に本に関することは選書の参考になる。絵本に関する記述も多いので、絵本のファンの方はチェックする価値があると思う。

 一番楽しみにしているのは、レスラーに関わるものを紹介する“マニア垂涎”というタイトルのものだ。役得がないと入手出来ないものもあるが、私がニヤリとしてしまうのは、御自身がファンだったころから長いこと大事に持ち続けていたものにそのレスラーのサインを入れて貰ったものが紹介されたときだ。大事に大切にしていたものに命が吹き込まれてグッと存在感が増した様子を目にしたときは何だか嬉しくなってくる。サインを入れて貰う際のレスラーとのやり取りも微笑ましくていい。

 トラベラーにとって“マニア垂涎”的なものは何だろう。トラベラーの数だけ旅のスタイルがあるのと同じで、トラベラーの数だけこだわりがあって、旅を経てコレクションしているものもあるだろう。

 機内や空港のショップなどで入手するモデルプレーン(模型飛行機)はその一つに入るのではないだろうか。“マニア”とか“こだわり”というフレーズがついて回るものの筆頭のように思える。自分が搭乗した機種のものは必ず入手するなど、それぞれの基準でコレクションされている方は多いのではないだろうか。

 私も飛行機自体は好きだが、興味があるのは航空機に施されたそのペイントやカラーリング、エアラインのロゴだ。機種やその特徴や性能などに全く興味がない・・・というか分からない。その程度の飛行機ファンだが、旅を重ねているうちに気が付くと手元にあるモデルプレーンが結構な数になっていた。

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これが恐らく初めて買ったモデルプレーンです。25, 6年前ですな。

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これまで航空機のカラーリングはたくさん見て来ましたが、このカラーリングが一番好きです。空港で見たときの存在感といったらなかったです。その後もう一度ロゴの変更とともにカラーリングが変わり、後にもう一つの老舗に吸収合併されて屋号が消えてしまったのは周知の通りです。このカラーリングが施された他の機種もいくつか持っていました。赤い尾翼を見ていてある話を思い出しました。いずれ書きたいと思います。

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それぞれ弟から貰いました。いろいろと思い出があります。

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これは「Kaohsiung」で書いた仕事が完了した後で取引先からいただいたものです。台湾の国内線なので結構なコレクターズ・アイテムかも。

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これらはシンガポールでの仕事の後で香港へ回らなくてはならなかったときに機内で買ったのかもしれません。機内で注文・後日自宅へ配送・・・だったかも。MEGATOPは窓から射し込んで来た日差しを一杯に浴び続けたわけではありませんがいい色に焼けてしまいました(苦笑)。大学のゼミの先輩であるKさんは両方ともお持ちだろうか・・・。

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そしてこれはその香港での仕事が終わり台北へ向かう機内で買ったのかもしれません。このカラーリングはあまり記憶にありません。ちなみに日焼けによる変色ではございません(苦笑)。

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未開封・・・(笑)。

 写真のものの他にまだいろいろと手元にあった。仕事でなければ組まれなかった旅程により他社便に搭乗したために入手出来たもの、取引先からいただいたもの、業界にいたからこそ入手できたものなど様々だ。マニアやコレクターの方々から見たら、入手できた状況は間違いなく役得だったのかもしれない。

 航空会社に入って1, 2年が過ぎたころに、自社のモデルプレーンを買って友人・知人、そして親戚へ随分と贈った。当時は機内の免税品として買うのが最短で入手できる方法だった。アメリカの本社へ行けば、社屋の中にある社名のロゴが入ったグッズを売っているストアでいつでも買うことは出来たが、本社へ頻繁に行く仕事に就くのはもう少し後の話だった。

 ある日亡き祖母が我家へ遊びに来たときに、当時テレビの上に飾っていたモデルプレーンを熱心に磨いていた。母が何をしているのと尋ねると、私が次に入手出来たら祖母にもあげると約束してくれたから楽しみにしているのだと笑顔で答えたそうだ。その後しばらくして入手できたモデルプレーンは祖母宅の一角に無事に収まった。その祖母とはハワイに二回行ったことがある。孫の中で一緒に海外旅行をしたのは私と弟だけである。祖母が亡くなったときにそのモデルプレーンは棺の中にそっと忍ばせた。

 免税品の売上を管理している頃に、乗務員の一人がある日本人のお客さんのクレジットカードの取扱いで粗相をしてしまい、何故か私がお詫びに行ったことがあった。何度も利用して貰っていた方だったので、菓子折りと一緒にモデルプレーンを組み立てて持って行き差し上げた。

 菓子折りを差し出して一通りお詫びをして“お怒り”が収まった頃に、恐る恐る差し出したのがよかったのか、もう二度と乗るかと叩きつけられるかと思ったが先方は大喜びだった。通された会議室からエレベーターまで送ってくれた後で、手にしたモデルプレーンを子供がするように飛ばす真似をしながらオフィスへ戻って行く後ろ姿を見送った。モデルプレーンに関する話はあり過ぎてキリがない。

 モデルプレーンは飛行機の形をしたただのプラスチックだが、眺めているといろいろと思い出させてくれて、空想を掻き立ててくれる。ふらりと立ち寄った店に飾りとして置いてあるのに気が付くと思わず見入ってしまい想像が始まる。飛行機だけにどういう経路でここにそのモデルプレーンが辿り着いたのかとか、売ってくれと申し出た人はこれまで何人いたのだろうかとか。そういえば故百瀬博教さんのところにあったPAN AMの古いモデルプレーンはどこに行ってしまったのかとふと思った。百瀬さんが亡くなったあとで次の持ち主のところへ無事着陸できたのだろか・・・おっと、またモデルプレーンから空想してしまった。

 このストーリーを最後まで読んで下さったモデルプレーンのコレクターのトラベラーの方、ここでお見せしたモデルプレーンに関してトラベラーズノートに問い合わせるのはお控え願いたい。ものとの出逢いも旅先での人との出逢いと一緒で一期一会ですよ・・・なんて改めて申し上げることは、トラベラー各位なら重々承知のはずなので野暮だったかな。

追記:                               マニア垂涎?・・・といえば、このバンドのファンにとってはこれらもコレクターズ・アイテムになるのだろうか。この4月に来日予定の彼らのDVD “FLIGHT 666” はなかなかのロードムービーです。チェックしてみて下さい。そういえば、トラベラーズファクトリーでこのモデルプレーンを見かけたことはありませんか?(笑)

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