ミニアルバム「NEAR」について

2010年の結成以来、奈良を拠点として活動を続けてきたthe PARTYS。
2017年発売のシングル「memory」から7年振りの作品となるミニアルバム「NEAR」が7月27日にリリースされる。
本作のレコーディングには岸田繁(くるり)がRecording Co-producerとして参加し、一部楽曲(M2,3,4,6)のアレンジやヴォーカルのディレクションなどを手掛けた。
また、レコーディングエンジニアとしてfolio / Hue's / ウワノソラ / GIVE ME BACK! / ピーナッツくん などの音源制作に携わる玉田デニーロ(衛星)が参加。
CDはライブ会場および一部店舗にて販売。
取扱店舗は随時公式HPやXにてアナウンス予定。
CDの発売に先立って、7月13日0時より各種配信サービスにて配信開始。
そして同日21時には公式Youtubeチャンネルにて収録曲「十月」のMVが公開される。
生活を送る、日々を紡ぐ。あなたの暮らしに寄り添う全6曲。
4人の「いま」と時間の積み重ねを感じられる一枚となっている。

配信URL:
linkco.re/xnvx4spX

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というわけで、the PARTYSの新しいミニアルバム「NEAR」リリースまであと2週間です。
そして配信は13日の0時から、体感的には今日の夜中0時からです。
配信が始まるので、全6曲の個人的解釈による解説をしていこうかなと思います。

歌詞はふーちゃんが書いているので、歌詞やメロディーなどについてはCDに付いているふーちゃんのセルフライナーノーツを参照いただければ。

the PARTYSの曲は基本的に僕がコード進行、和音の構成、曲の大まかな構成を作っていて、それにメロディーを乗せてもらい、乗せたメロディーに合わせてコードを変え、それに合わせてまたメロディーを変え、出来上がった輪郭にベースとドラムを付け足していく、というような感じで編曲をしています。
それを踏まえた上で、以下の解説を読んでもらえたらより良くわかるのではないかと思います。
それではどうぞ。

1.彩光
音源制作を始めてから1番最初に取りかかった曲。
家でイントロのコードを思い付き、それをそのままスタジオに持っていった。
コードが半音ずつ下がっていくという僕の得意(手癖)満載の曲。
基本的にふーちゃんの歌メロがキャッチーでポップなので、ポップになりすぎないよう、リードギターのフレーズでいい調整ができたと思う。
聴きやすい曲やけど、よく聴いてみるとリードギターのフレーズはエッジが効いてて、盛り上がりすぎず、無難に攻めすぎず、高い平熱を保っているような感じ。
普段ギターソロになるとファズを踏んで上がりきっていく事が多いが、今回は踏まずにしっかりとフレーズを考えた。
くるりリスペクトを持ちつつ、自分なりの解釈で弾く王道ギターソロ的な。
そしてアウトロをとにかく長くした。
ずっと続いている平熱から徐々に体温が上がっていく感じ、最後まで溜めに溜めて、一気に爆発する気持ちよさが詰まっていると思う。
ここでもファズは踏まず、平熱が上がっていくという感覚を持ったまま最後まで突き抜けた。
今のパーティーズを1番体感しやすい、アルバムの1曲目に相応しい曲ができたと思う。

2.ロンリー
ライブではほぼ毎回セットリストに入っている定番の曲。
構成は非常にシンプルで曲自体も短い。
あえてイントロの単音フレーズをふーちゃんに弾いてもらう事で、イントロの爆発力が増していると思う(単純に僕のギターの音の方がでかいので)。
この曲はふんだんにファズを踏み、勢いのみで録った。
ギター2本、ベース1本、ドラム、最小限の音だけで。
歌はふーちゃんと僕でユニゾンして最初から最後まで歌っている。
全然違う声質の歌が歌えるのは男女で組んでいるバンドの強みだと思う。
個人的にこの曲はbloodthirsty butchersを意識してギターを考えたりもしたが、結局ふーちゃんの歌が入るとどう足掻いてもパーティーズになってしまうね、と思った曲。

3.ガールフレンズ
初めて聴いた人はとても驚いたと思う。
自分でも驚いている。
曲のほとんどの主旋律を僕が歌うというパーティーズの曲では初めての試み。
試みというか、プリプロ(レコーディングをスムーズに進める為の事前準備)1週間前のスタジオで急に歌ってくれと頼まれて、歌う事になった。
歌の上手さは聴いてもらったら分かる通り、下手である。
ただそれが曲の青臭さと合っていていい塩梅なのかなと思っている。
曲の雰囲気は1990年代の歌謡曲をイメージ。
松田聖子のような雰囲気の曲に仕上げたくて、あえてベタなコードを沢山使ったりもした。
そしてギターソロはこれまたベタベタなツインリードギターのギターソロ。
プリプロを聴いていて、ツインソロのイメージが頭から離れなくて和音を考えながらフレーズを作った。
ライブではふーちゃん初めてのギターソロになる。
僕の歌、ふーちゃんのギターソロ、初めての事が多いこの曲、ライブで間違わずに完全再現できるかは不明である。。。

4.BACKYARD
イントロのギターが気持ち良すぎる曲。
僕の重めでどっしり構えたバッキングから始まり、各所に散りばめられたリフレインするふーちゃんのアルペジオ。
全体的にちょっと変なコード進行にしたかったので、変なタイミングでコードを変えたりした。
サビのコードや和音の構成に関してはレコーディング時、岸田さんの協力のもと、一部を練り直し今回の構成に変更した。
岸田さんの細かな配慮ですごく綺麗にまとまったと思う。
間奏では2人ともコードを鳴らすのに抵抗があったので、単音フレーズを混ぜたりしながらふーちゃんに弾いてもらった。
これも綺麗にハマった感覚。
イントロ、Bメロでふーちゃんが弾いていたアルペジオを今度は僕がサビ頭、アウトロで弾くという、全編通してアルペジオをバトンのように繋いでいく曲になった。
アウトロのギターソロではファズを踏み、ゆっくりと曲が終わり、最後にはノイズだけが残る、みたいな感じにした。
歌メロをなぞってギターを弾く、これもまた僕の手癖だ。

5.投影
この曲の大きなポイントは、前半と後半で全く違う曲になったような展開があるところ。
ゆったりと進む前半と、テンポが上がってダウンピッキングのバッキングから始まる後半と、ヘンテコだが意外と上手くまとめられたと思う。
歌メロが他の曲に比べて動く曲なので、ギターは邪魔をしないように考えた。
が、やっぱり普通の事はしたくなくて、前半サビで動くアルペジオを入れたり、後半サビで歌メロに被せるフレーズを作ったりと、結局なんやかんややってしまった曲。
この曲を作っているときにくるりの「リボルバー」という曲を聴いていて、イントロの勢いに改めて感動し、アウトロは勢いだけでいったれ!と謎に親近感を得て作り上げた記憶がある。
今思うとこの親近感、一方的すぎる。

6.十月
7分半の大作。
元々はもっと歪んだギターで、アウトロにはギターソロがあって、オルタナティブな曲だった。
LOSTAGEの「Good Luck/美しき敗北者達」という曲のイメージそのまんまで作って完成した曲。
だったのだがレコーディング当日、1テイク録り終えた後に岸田さんからの提案で曲のイメージをガラッと変える事になった。
歪んでいたギターはPavementのようなこもったクリーン寄りの音にしよう、ベースは休符を入れてリズムを付けよう、アウトロはギターソロをやめよう、など。
するすると進みそれで録ってみるととてもドラマチックな曲になった。
この曲は本当に岸田さんがいなければここまで辿り着けなかったと思う。
本当にドラマチックで、ノスタルジックで、僕たちの全てが許されたような、そんな気持ちになった。
それとこの曲はゲストプレイヤーとして、跡祭のしんごさんにトランペットを吹いてもらった。
これもまた、開けた窓から風が入ってくるような、すごくいいところにトランペットが入ったなと思う。
イントロから曲が終わるまで、7分半に込められた僕たち4人の人生、大袈裟じゃなく、本当にそんな感じで、人生が詰まったような曲になった。
この曲を作るために今まで懲りずに活動してきたんかなと思った。
本当にいい曲になったと思う。
今のパーティーズによるみんなに贈る最大の愛。
楽器の構成はふーちゃん、僕は共に1カポで半音上げ、だいは4弦だけ1音半下げ、僕のバッキングのルートの音をだいが担ってくれている。
楽器の絡みも絶妙で、これもまたよくできた構成だ(自画自賛)。
歌もいつもと違う、ラップのようなポエトリーリーディングのような、それもまたこの曲の良さを引き出してくれている。
パーティーズを知らない人にも聴いてもらえる曲だと思う。

プリプロ、レコーディング、ミックス、マスタリング、音にまつわる全てを玉田さんにお願いした。
「NEAR」を一緒に作るために尽力してくれて、本当に頭が上がらない。
この人がいなければここまでの音源にはならなかった。
バンドに寄り添い、同じ目線で考えてくれて、本当に有難い。
もはやパーティーズは4人ではなく、5人のチームみたいな、そういう関係性になっている。
兄弟であり仲間であり友達であり、その対象が玉田さんで本当によかった。
本当にありがとうございました。

長々と書いたが、
前作から7年半、活動自体はマイペースだけど地続きに生活と共に音楽が傍にありつづけたバンドのミニアルバム。
パーティーズというバンドがただただ好きで、ただそれだけで続けられている。
僕達が好きで続けている事にみんなも好きと言ってくれて、この上ない幸せです。
本当にありがとう。

世間一般的な流行りの音楽では全くないし、歌い出しまで1分以上かかったりもする。
でもそれでいい、それがいいのです。
僕達は僕達のやり方で、今までやってきたし、これからもずっとやっていく。
それがどこかの誰かの灯火になればいい。
灯火が少しずつ大きくなって、いつか大きな灯りになるように。
そしてその灯りが今後10年、20年、小さな火種になっても消える事なく続きますように。

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