【提案】冒険者思考のフレームワーク【#1】
※この内容はフィクションを含みます。
世界のディズニーパーク、特に「東京ディズニーシー」において存在感を放つ架空の組織、S.E.A.(Society of Explorers and Adventurers)。作り物でありながら、「新たな知識の探求」というS.E.A.の理念は現実の社会においても重要な目的となりうる。S.E.A.アカデメイアnoteは、その創作物としてのS.E.A.に最大のリスペクトを払い、S.E.A.から学ぶ者として望ましいマインドを私的に纏めた記録である。
人類の多くが神の存在を信じていた時代。
人々は自らの運命や宿命を受け入れ、農民は農民、羊飼いは羊飼いとして生きていた。運命を信じる人にしてみれば、農民は王様にはなれないし、羊飼いは神父にはなれない。
では、冒険者や探検家たちは、生まれながらにそうだったのだろうか?
今や世界中から冒険家を志す人々が集う、地中海の港町"ポルト・パラディーゾ"。
もちろん彼等のお目当ては、冒険家探検家学会(Society of Explorors and Adventurers)、通称S.E.A.の拠点である要塞だ。
20世紀に入って、ザンビーニグループの出資やフライト・ミュージアムの特別展をきっかけにS.E.A.の人々に羨望の視線を向ける人たちが増えた。
新たな知識の探求に迷い無く突き進む彼らは、どう生き、どう考えるのか。
知りたいと望む冒険者も多いのではないだろうか。
私もまた、その1人だ。
このノートは、S.E.A.という組織が世界をどう見て、どう関わっているのかを解き明かし、それらを体系的な思考法に落とし込むという試みの中途結果である。
そして、私自身が世界に対してどう向き合うかという、世の中に対する意思表示である。
#01 ・要塞を構成する「知」の正体
私はこの要塞を歩くたび、考えることがある。この知の要塞を構成する要素は何だろう?
ルネサンス風の装飾、ガリオン船、ペンデュラムタワーに錬金術師の実験室──フォートレスは実に知的なオブジェクトに溢れている。
様々な見方はあるが、私はこの場を作り出す空気の中に、3つの要素があると考える。
すなわち、Science〈科学〉・Engineering〈工学〉・Art〈アート〉である。
実験室やペンデュラムはサイエンス、フライングマシーンはエンジニアリング、イリュージョンルームの巨大壁画はアートといったように、要塞の施設を恣意的に区分することはできるが、それはあくまで結果としての「知の要塞」の姿でしかない。
部外者である我々は要塞という結果しか見ることができないが、これらのものがどういうプロセスで作り上げられたのかということに想像を巡らせると、「知の要塞」の本質が見えてこないだろうか。
ここでそのプロセスを、Science・Engineering・Art の頭文字をとって「SEA思考」と呼ぶことにする。
#02 ・ドリームフライヤーの仮説
S.E.A.といえば、要塞の他にもうひとつ有名な施設がある。ハーバーの丘の上に立つ、ファンタスティック・フライト・ミュージアムだ。
1901年には2代目館長カメリア・ファルコの生誕100周年を記念した特別展が開催され、開館以来の賑わいを見せている。
ここでは「飛行」に関する様々な展示を見ることができる。
もっと言えば、「人は如何にして空を飛ぶか」という課題に対して採られた数多のアプローチを見ることができるのだ。巨大な耳で飛行する象に跨り滑空する人々の絵や、かつて構想された飛行機械の設計図などが飾られ、自由な発想で夢を叶えようとする当時の人々の躍動が感じられるだろう。
さて、ここでフライト・ミュージアムの展示を以下のように分類してみよう。
「空を飛ぶ」という大きな夢を、最初に可視化したのはアートだった。
アルキタスの「鳩」に始まり、巨大な耳で飛行する象に股がり滑空する人々など、じつに様々な想像の産物がミュージアムには飾られている。
しかし、それはあくまでも想像の中での話。
なぜ、人は空を飛べないのか?
そしてなぜ、鳥は空を飛べるのか?
神学の世界では「何を当たり前のことを。人は鳥ではないからだ」とか、「神がそのように作ったのだ」と一蹴されてしまうような問いだ。
サイエンスはその答えを「質量の大きな物体にはより大きく重力がはたらく」「気圧や気流を利用することで鳥は飛行する」と表現した。
サイエンスを具体的な形に落とし込むのが、エンジニアリングである。重力や流体力学など様々なサイエンスを具体的な形にしたのが「飛行機械」と呼ばれるものだ。ここでの複合的な考察が、新たな創造物(アーツ)としてのパッサローラや真空飛行船の概念を産み出した。
空への憧れが最初にあった。人々はアートでそれを表現した。
その後、サイエンスによって分析された課題をエンジニアリングが具体的に解決し、新たなアーツが誕生する。さらにその結果をサイエンスが観察し、更なる課題を提示……
先人たちの考察で見事にループを描き、その末に実装したのがカメリアのドリーム・フライヤーなのではないだろうか。
#03 ・冒険者の思考法
S.E.A.の人々はどうやら物事を3つの視点で捉えるらしいことがわかった所で、簡単にそれぞれの視点について紹介していこう。
1 科学思考=観察、仮説、検証
個別の事象から普遍の法則を見出す思考。事象を観察し、仮説を立案/検証。常に「その仮説は正しい」という結論が出るとは限らない。仮説に固執せず、間違っていたらすぐに別の仮説を立案しよう。
2 工学思考=課題の分解、解決策の選定
ひとつの抽象的な課題を網羅的に分解し、複数の具体的な課題にする思考。そして最適な解決策を選定。その際、スピードやコスト、インパクトなどを評価軸にするとよい。
3 芸術思考=自分を起点とした課題設定、ビジョンの視覚化
課題設定型の思考であり、アートとしてビジョンを視覚化できるのも特徴。観察できる事実から課題を見つける科学思考に対して、アート思考の起点は自分自身。自分が抱いた感動や違和感をとことん掘り下げて、問いを投げかけてみよう。世間の誰もが「無価値」と投げ捨てようが、そのアイデアは君にとって無限の価値を持つ。
S.E.A.会員の人々は、このプロセスによって多くの課題を提示し、優れた技術や文化を後世にもたらした。S.E.A.の理念に賛同し、それに倣う団体であるS.E.A.アカデメイアの我々もまた、SEA思考をそれぞれ使い分け、あるいは複合的に用いることで、現実の問題とより上手く向き合うことができるだろう。
次回は、S・E・Aそれぞれの思考法がどのようなものなのか、より詳しく迫っていく。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?