受け継いでゆくもの


待ち合わせの駅前ロータリーに白馬ならぬ黒い車で飛び込んできたノブオ先輩。

「やまわきくん遅れてすまない!さあ行こう」
製薬会社社長だけにとどまらず
地域の観光、行政にも関わるノブオ先輩は多忙なのだ。
「相変わらず、お忙しいですね。いろいろ事業や公職に関わっていらっしゃるのに引き受ける基準とかあるんですか?」
「いや、ないよ。頼まれたら断れないんだよ」
「え!・・・そんな受け身な感じなんですか!」
「ん・・・ちょっと違うなぁ、受け身と言うのでなく、僕に話が来るというのは僕の課題なんだと思うんだ。僕がやることで価値がある。だから断らない。」

ノブオ先輩はコスパを重視するので迷いがない。
損得勘定なく感情もオープンに公開している。
フィギュアが大好きで集めていったら入り切らず博物館を作ってしまったことや
会社の経営にバンド活動、とにかく飛び抜けてイカしてる!
そんなノブオ先輩のことがツカサくんも大好きだった。
楽しそうにノブオ先輩を追っかけてる姿が印象に残っている。
ノブオ先輩に意地悪な質問をして嬉しそうに笑っていた姿が最後だったかな。
ツカサくんは挨拶を告げないまま遠くに行ったので、ノブオ先輩と話したいと思ってやってきたのだ。

「ねぇ、オレのこと話してきてくんない?」と
ツカサくんの声がした気がして目が覚めたのは
ツカサくんが姿を消して四十九日経った日の夜のことだ。
ノブオ先輩には、ツカサくんの訃報を知らせて以来だったし、
特別な要件もないのでためらったけど、
ツカサくんのことと、ノブオ先輩にも聞きたいことがあるから会いに行っていいですか?と向こう見ずにお願いした。
ノブオ先輩からの返事はシンプルに「いいよ」だけだった。
説明をしなくてもわかってくれた安心感に包まれた。

「わざわざ来てくれるんなら、君の聞きたいことの他に質問を集めて収録しよう」
ノブオ先輩の提案で動画として記録に残した。
ツカサくんが師匠のように慕っていたノブオ先輩の魅力がよくわかったよ。
それから、ノブオ先輩の一番のファンは私が継いでいくね。

https://youtu.be/yMxcH0lg6ko

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