夕食の前に、アイスクリーム

その時、私は大人になったと思った。

夕食の前に、アイスクリームを食べてやったのである。

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友人に、ワインとアイスクリームをこよなく愛するお姉さん（以下、Mさん）がいる。

Mさんは、美味しい食やお酒を教えてくれたり、人生に喝を入れてくれたり、一人っ子の私にとっては文字通り“お姉さん”という存在で、慕っているひとだ。

大学生の時に、そのMさんと一緒に横浜へ出かけた時の話をしたい。

横浜美術館で、確か奈良美智展を観た。散々歩き回って、日も暮れて、さあご飯を食べに行こうっていうタイミングで、Mさんは目を輝かせて「アイスクリーム、食べない？」と言った。

「え！」と思った。けれど、「はい！」と答えていた。へとへとになったこの口に、冷たくて甘いアイスクリーム、めちゃくちゃ食べたい。

Mさんが買ってきてくれたチョコレートのアイスクリームは、大人の味がした。夕食の前に食べるアイスクリーム、なんて美味しいんだろう。子どもの頃なら許されなかった。大人になるって最高！

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たまにこの時のトキメキを思い出して、歳を重ねることの伸びやかさを噛みしめている。ルールは、自分で変えられるんだ。

私もいつか年下の友達に、そういうサプライズができる存在になりたいと思っている。最近の私は、「夕食の前に、ビール」になっちゃってるけれど。