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そうだ、天理に行こう(交通安全祈祷ツーリングその1)

「明日、バイクでどこか行こう。」

19日の昼、そう思い至った。

というのも、17日にバイクを納車してからというもの、天気予報は面白いほどに曇りと雨模様が続いていた。
そんな中、2月20日は5月下旬並みの気温になって晴れるという予報が出ていたのだ。

22日を休みにして22~25日で4連休を作り、どこか遠出してしまおうと思っていたが、天気予報を見る限りアホほど寒い上に雨そうだった。
ならば2月にしてはどうかしている気温の20日にバイクで遊んでしまおうと、22日の有給予定を返上し、20日に急遽休みを取ることにした。

19日は当然仕事だし、出かけるのなら20日朝から。

さてどこへ行こうか……、と考える。

「安全運転の祈祷とお祓いに行こう。」

そう思いつく。
新車でバイクを買ったのだし、バイクは当然死亡リスクも車よりも遥かに高い。せっかくならやっておいても良いだろう。

神の存在を信じている訳ではないけれど、「日本の文化として」経験しておくのも良いはずだ。

行くか、石上神宮。

祈祷……と思いついてすぐにそう出てきた。

奈良県の天理にある「石上神宮」。
日本最古級の神宮。
敷地内から七支刀が出土し、国宝に指定され、ご神体として祀られている。

オタク日本男児たるもの、やはり「刀」には一定量の憧れがある。
それに加えて、石上神宮には僕の好きな「歌碑」もある。

'未通女等が 袖布留山の 瑞垣の 久しき時ゆ 思ひきわれは’
”巫女の皆さんが神を迎えるために袖を振る布留山の瑞垣が生きてきた年月のように、
僕も長い年月、君に恋をしています”

という、万葉集にも乗っている柿本朝臣人麿の歌。

……まぁもちろん、万葉集からこの歌を知ったわけでもなく。
僕の好きなシリーズの伝記物のゲームの詠唱でこの歌が出てくるから、というしょうもない理由だけれど。

この歌碑があるというだけで、個人的に伊勢の神宮よりも石上神宮の方が好きなくらいだ。
本当に不純な動機で好きで石上神宮には申し訳ない。
この歌、完全にCBR400Rの納車を待っていた時の俺だな……などと考えながら、石上神宮のHPを見てみる。

各種祈祷は9時頃くらいから。

高速と名阪国道で自宅から石上神宮まで2時間弱ってところ。

諸々のマージンを見込んでも6時半に出ればおそらく9時くらいには着くだろう。
そう見込む。
雨雲レーダーを見ても明日一日中は大丈夫そうだった。

よし、行くか、と決め込んだ。
そうと決まれば……と仕事後、夜ながらも先日の雨の中の豊田方面のツーリングでかなり泥をまとってしまっていたCBR400Rの洗車をざっと済ませて翌日に備えた。

街が起きる前に動き始める

翌日、6時頃目が覚め、身支度。
祈祷に行くから(?)と、少しだけ気合を入れて買ったライディングジャケットを下ろす。
デイトナの防風インナーと、タイチのプロテクターを身に着け、ジャケットの袖に腕を通す。

20℃くらいまで気温が上がる予定だけど、一応インナーダウンを荷物に忍ばせておく。

平日の日が昇る前から出かける準備をしている瞬間というのは、やはりワクワクする。
非日常感がある。
バイクに乗って出かけるのであればなおさらだ。

シートバッグにレインウェアを詰め込み、バイクをガレージから出して。エンジンをかける。
薄暗い住宅街の道路に、排気音が心地よく響く。

若干クレームが来そうだなと思い、手早くナビをセットし、インカムの電源を入れて跨る。

安全運転で行こう

「さて、行くか。」
誰にも聞こえてないだろう独り言を、ヘルメットの中でぼやきながら、ギアはNのまま一度無意味にアクセルをわずかに開ける。
げんかつぎのようなもの。

わずかに甲高くなる排気音と共に、起き始めた街へバイクで出る。

初高速道路

そのまま白川のあたりから高速に乗り、名阪を通り亀山の関までワープ。
ETCは先日の猿投グリーンロードで動作確認もしていたため問題ないのは分かっているんだが、やはりあのゲートを通るのは車でもバイクでも緊張する。

初めての高速は風もそこそこあり、怖くないと言えばウソだったが、概ね問題は無かった。
風は感じるもののの、流されるようなことは無く……木曾川を超える橋やらも心地よくわたることができた。

木曾川を渡るころには日の出とあたり一面の霧による非常に綺麗な風景も見ることができた。
当然写真は無い。

モトブログをやっていなくとも、Goproなんかがあった方が後から映像で振り返れてよいかもしれない、と感じた。

要検討。

名阪国道

関からは名阪国道で天理まで行くことになる。
おおよそ一般道とは思えない巡航速度を乱さないようにしつつ、流れに乗る。

伊賀のドライブインにて一度休憩と、思ったより寒いのでインナーダウンを着ることに。

伊賀ドライブイン。実際、寒い。

雨……というか霧というか、両方。
天気良いはずじゃなかったか?なんて思いながらも天理を目指す。

伊賀を超えたあたりから霧がすさまじく、20m先の視界が怪しいくらい。
徒歩ならば20m先が見えれば問題ないが、ここは巡航速度をブログでかけない程度には過激な自動車専用道路。

何度か通ったことある名阪国道だけれど、見たこともないくらいに皆安全運転をしている。

少し早めに出ておいてよかったなと思いながらも、きわめて安全運転で天理まで名阪国道を抜けていく。

途中「針テラス」の看板を見て、バイク乗りの聖地であることも思い出したので、今度盛り上がってそうな時間に来たい。

ラスト付近のΩカーブも個人的にバイクでは楽しめる曲率で良かった。
名阪国道は流れこそ早いものの、ドライブに丁度良い。
無料だし距離もあり、休憩個所もあり、関西圏までワープできる。

石上神宮へ

そのまま名阪国道を天理で降りると、5分もしないうちに石上神宮に着いた。
来るのは3回目。

とりあえず参拝客用駐車場にバイクを止め、石上神宮へ。

いそのかみじんぐう

時刻は8時半。
かなり安全運転をしたもののの、ほぼ予想通り2時間で着いた。
ヒップバッグに忍ばせていた缶コーヒーを飲みながら、石上神宮の中へ。

天理は霧がでており、過去来た中でも一番神秘的だった。

霧に包まれ霊験あらたかな石上神宮
神秘的で厳かな雰囲気

鳥居の前で手を合わせ、歌碑のまえに立ち止まり手を合わせる。

特に意味は無いけれど歌を口に出してみながらそのまま奥へ。

平日朝となるとやはり、自分しかまだ参拝客は居なさそうだった。

以前来たときは敷地内で放し飼いにされていた鶏もまだ小屋の中。
朝ということもあり、ひっきりなしに鶏が絵にかいたような「コケコッコー」と朝を告げていた。

この鶏の「朝に鳴く」という習性は古来より「朝を告げる鳥」として神聖なものや神の使いとして扱われており、
石上神宮で鶏が飼育されているのもこれが由来らしい。

小屋の中で鳴き声を上げる鶏をわずかに観察し、本殿へと向かう。

礒上神宮

本殿に入り、とりあえず賽銭と二礼二泊一礼を済ませ、祈祷の申し込みを済ませる。
住所、名前の読みを丁寧に聞かれ、疑問に思いながらも説明し、祈祷を待つ。

どうやら朝一でもう2名分の祈祷の予約が入っており、それと一緒になるから待ってほしいとのことだった。

その合間に本殿手前の広場にバイクを乗り入れておいてほしいとのことだったので、参拝客駐車場にとめていたバイクを異動させる。
鳥居をバイクで通るという若干の不謹慎さのようなものを感じながらバイクを進める。
霧に包まれた日本最古級の神社という厳かな雰囲気の中、二気筒の「ドドドドドドドドド……」という少々やかましい音を響かせるのは、すごくいけないことをしている気分になる。

社務所前の広場にバイクを止め、本殿へと戻る。

9時まではまだ時間があったため、ともう一度敷地内を回りつつその間に交通安全のお守り、お札、シールを買っておいた。

祈祷が始まる時間になると本殿の中へと案内される。
あまり信心深くない僕でも、雰囲気が違う気がした。

あれだけ聞こえていた鶏の鳴き声も聞こえない気がした。気のせいかもしれないけど。

神主?さんの指示に従いつつ頭を下げたり手を合わせたり、概ね意味は分からないけれどありがたいだろう祝詞を聞く。

途中ご神体の前に移動し、しっかりと頭を下げるシーンもあった。

途中、ありがたいだろう祝詞の中に突然「HONDA CBR400R」という単語が出てきて笑いそうになってしまった。
ああ、だから丁寧に読み方を聞かれたんだな、とここで気づいた。
祈祷の最中の祝詞の中で読み上げるためだったんだ。

30分ほどの祈祷が終わると、本殿の外へ。
僕のほかに一名の方はおそらく祝詞の言葉的に新事業の商売繁盛と、健康祈願……か何かだったと思う。

そのまま神主さんの後に続いて広場に止めたバイクへ。

神主さんがバイクの四方からお祓いをしてくれると、祈祷が完了した。

祈祷を受けるCBR400R

「祈祷に使ったお札です、家の高いところに南もしくは東を向けて飾ってください。」

と何か入った紙袋を貰った。
それをヒップバッグへとしまい込み、先ほど買ったシールをとお守り、お札をバイクへ。
お守りはマルチバーへ結び、札はタンデムシート下のスペースへ、シートは左側の後輪のシャーシ部へと貼った。

これは事故に合わなくなるカスタム

事故を起こさなくなるカスタム、として機能してくれることを願う。

と、9時半にしてメインの予定が終わってしまったので、とりあえずコンビニへ。
石上神宮という七支刀の加護を受けたCBR400Rはほんの少しご機嫌だったかもしれない。

霧も晴れ始め、天気は良くは無いもののあからさまに気温が上がってきていた。

コンビニで簡単な朝ごはんを買ってスマホを見る。
どうやって帰ろうか、R25号の旧道を通ろうか……と地図を見みつつ、前日Twitterで「琵琶湖」という単語を見ていたため、琵琶湖を通って帰ろうかとも思ったが、
ルートを調べてみるとかなり北上しなければならず、さすがに遠いと断念。

しばし、グーグルマップを眺める。


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「伊勢志摩スカイラインへ行こう」

バカだったと思う。

描いていたら長くなったので分割。

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