鍵盤

前回は、こっそり仕事パソコンにDTMソフトを入れてDJ的な事をまた始めた経緯について書きました。

仕事でもパソコンを使い、DJ的な事でもパソコンを使い、バーチャルなシンセでマウスを使っているうちにおっさんの頭から煙が出てきたのでこれは何とかしなきゃと思い、まずはじめに操作系をMIDIコントローラーやMIDIキーボードに変えてみました。

うん、快適。

やはりアナログ人間にはツマミとフェーダーと鍵盤だ。

しかし、人間とは面白いもので、ツマミをひねったり鍵盤を弾いたりしている方が制作が進むと判ってしまうと「もっと、もっと」と欲が出てくるのです。

私は元々鍵盤の人で、4歳からピアノを習っていました。

社会人になってからはシンセサイザーに興味が移ってましたが、一応ピアノも持っています。

そういえば、「DJなんて人の曲をかけるだけで音楽家面をするな!」というお約束文句がありますが。

私の世代、つまり昭和40年から50年生まれおっさんDJのほとんどは、バンド経験者かもしくはバンドもやってるDJで、数種類の楽器を弾ける人も珍しくありません。

現に私の周りも、ヨーロッパツアーをするようなバンドマンが変名でDJをやっていたりします。

ではなぜ、DJをやるのか。

DJ論というのか、DJとは何か!と言う事を語りだしたら、説明だけで本一冊にもなってしまいますから割愛しておきますが、私が思うにDJとはダンスクラブの音響係でありつつ、自分の狂気的な音楽収集癖の成果を赤の他人に発表したいという露出狂の一種なのだと思っています。

むかし、みうらじゅんが「発表癖」という素晴らしい言葉を使っていましたが、まさにそれの音楽限定版です。

若いイケメンDJが、「この曲は僕のおすすめだよ!次ももっとアゲてくから、踊ってくれ!4649!」という事もありますし、ド渋のR&Bコレクターが、「これ、初期のモータウンのテストプレスなんだけど、LP盤のテイクより荒っぽくてグルーヴィーだよね~、自然に体が揺れちゃうでしょ~、う~ん、気持ちいい~」みたいな事もありますし、うっかり私のプレイするイベントに来てしまった場合は、「こんな変な曲とこんな珍しい曲をミックスすると、ほら、もっとキモくなったでしょう?はい、今からこんな感じで3時間音楽をかけますよ~。騙されましたねーイケメンはいませんよーでも1ドリンク分は逃がしませんからねー」となります。

......すいません。

大分本題から離れてしまいましたので話を戻します...。

ソフトシンセサイザーにMIDIキーボードをつないだとたん、トラック制作が進みだしたことに調子づいた私は、SNSのフレンドに向けて、「あー鍵盤にしたら楽だ!楽過ぎる!もう一度ハードをそろえたいなー。」とかそんなことを呟くようになりました。

するとある日、地元の写真家でミュージシャンのMさんから、「VOWWOWのギタリスト斎藤光浩さんって知ってる?あの人の使ってたJUNO106あるけど、倉庫に眠らせとくのもったいないからよかったら譲るよ」とメッセージが来たのです。

普段、おっさん特有の頭の固さでインターネットをディスっていた私も心を入れ替えました。

インターネット様!呟いただけでJUNO106が手に入りました!ありがとうございます!

これからどんなにインターネット様やSNS様がディスられようと私は裏切りません!

これからもネットコジキ、いや、ネットワークをフル活用して、この便利な世の中を十二分に活用していきます!!ココワホントウニヨイインターネットデスネ!

そうして、Mさんが翌日届けてくれたJUNOがこれです。

VOWWOWのギタリスト斎藤光浩さんが使っていた実機で、ARBの白浜久さんを経由してMさんの手に渡り、みょうちくりんな音楽ともつかない雑音を出すために仙台の辺境の地へやってきたのでした。

しかし、私のプレイする音楽はミニマルテクノ。

音階もくそも無い旋回音楽を奏でるために、この立派なキーボードが、これ以上ないくらい無駄な使われ方をしていくという事に、その時は誰も気づいていませんでした。

つづく

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