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中秋の名月

綺麗な満月が雲一つない夜空に浮かんでいた。
中秋の名月と言われるその丸い月では、
ウサギが餅を一生懸命突いていた。

私はノンアルコールの梅酒缶を片手にぼんやりと眺めていたのだが、
満月のピークが19:00~20:00という事で、
車の音や家内で騒ぐ若者の声が聞こえてきており、
さすがに風流と呼べる雰囲気ではなかった。
それでも公園のベンチに腰掛けて眺めている分には、
他の人の行き来もなく落ち着いて過ごす事ができたと思っている。

おもむろにポケットからボイスレコーダーを手に取り、
目の前の満月を眺めながら思いのままに話をしてみる。
ひと枠15分、観客無しの独り語り。
自分のチャンネルにアップする目的で録音しているが、
一方で「需要があるのだろうか?」という迷いもある。

平安時代と言えばいまから1200年以上も前。
その頃から日本でも月を愛でる文化があったのだとか。
その頃の人達はどんな思いで同じ月を眺めていたのだろうか?

いや、それより以前から月は存在していた。
地球が誕生した後、
ジャイアントインパクトによって月が誕生したと言われている。
月の重力が海の波に影響しているという話を聞くと、
月は地球の環境に欠かせない天体であると改めて思う。
海の波は私達生命の営みには欠かせないものだからだ。
外なる海を体の中に取り込み、
陸地での生活を選んだ私達陸の動物もまた、
月の影響は多分に受けているだろう。
私達生命は月と深いつながりがある。

そのせいか世界では月にまつわる伝説がたくさんある。
月を司る神や女神の登場する神話や、
竹取物語や人狼伝説といったファンタジーの物語まで。
月が我々生命や自然に深く関わりがある事は、
古来より広く知られていたのだろう。
日本では少し前まで月を基にした暦が使われていた。
我々日本人は月と共に生活していたのである。

「今日の月も綺麗だった。
 次の満月はいつだろう。
 その日も今日と同じように眺める事ができるだろうか。」

そんな事を思いながらノンアルの缶をあおる。
月に魔力があるのなら、
私にも力を授けて欲しいと、
そんな事を思いながら。


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