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2回言えば解ける魔法~小野寺まさるウポポイツアーに行きあって

C.R.A.C.メンバーふくめ全国から“たまたま”ウポポイに遊びにいき、“たまたま”小野寺まさるのウポポイツアー*とおなじ時間帯に博物館に入ってしまった人々。

近くで小野寺のガイドを聞いていたら、わかったことがあった。

それは小野寺の言葉による詐術。真実を言いながら間違った結論を出させる巧妙なやりくちである。

探求展示 テンパテンパ

探求展示 テンパテンパの説明パネル

このコーナーは体験を通じてアイヌ文化に触れることができる「探求展示 テンパテンパ」の一つだ。テンパテンパでは、ジオラマ・模型・タマサイ(首飾)やサケ・シカの立体パズルなど、18の体験ユニットがあり、大人も子どもも楽しめる(博物館のHPより)。2021年のキッズデザイン賞のリテラシー部門で優秀賞を取っている(第15回キッズデザイン賞プレスリリース )*。

探求展示 テンパテンパ

この写真では、手前の棚の上に民族衣装の塗り絵があり、奥にはリアルな動物のぬいぐるみ、さまざまな本や写真が棚に並べられている。とても興味のひかれるコーナーではあるが、新型コロナウイルス感染防止のために、現在立ち入り禁止になっていることがわかる。

ウソを盛り上げるためのホントウ

しかし、小野寺のウポポイツアーでの様子はこんな感じだった。

テンパテンパの展示に近づくにつれて、ネトウヨたちは(クマ?)(ぬいぐるみコーナーだ笑)(すげー、すげー)と興奮。

なぜ興奮するかというと、すでにこの“ネタ”をチャンネル桜北海道などで知っているからだ。

小野寺はここで一言「これは、歯医者さんの待合室」。

ネトウヨたちはこれでもう爆笑である。

しかし、小野寺はここで少し本当のことを織り交ぜる。

小野寺「実際にここは子どもがいろいろ上がってアイヌを学ぶとこだった」「新型コロナの感染防止のために使用できなくなっている」

ネトウヨたちの笑いが止まって、静かになる。

そこで小野寺は、「国立の博物館なのに、高い値段のぬいぐるみを置いている。本当にアイヌ文化は飾るものがないんです! 」と盛り上げてゆくのだ。

小野寺の出演するYouTube番組のメッセージ、つまり「ウポポイでは多額の税金が投入されてアイヌ文化が捏造されており、自称アイヌが私腹を肥やしている」、を事前に“正確に”受けとったネトウヨの頭で理解できる単純なストーリーをわざと外して、また元に戻してあげる。こうしてネトウヨは、ウポポイに行って、あたらしいことを学んだと満足して、また小野寺に植えつけられたアホなストーリーを強化するのだ。

...するつもりだったと思う。

ホントウをもう一度くり返す

けれども、この日は、小野寺のウポポイツアーに“たまたま”行きあった人々たちが、本当のことをもう一度言ってしまう(いいですね。子どもさんのいる場所が必要ですもんね)(なかなかかわいらしい)(こういうのに文句つけるのって)(子どもさんが親しめていいですよね)。

かれらは、さっき、小野寺が途中で織り込んだ真実を、もう一度言ったに過ぎない。

しかし、小野寺は思わず「なかなかね。」とかれらの言葉につられた上で「ハイ、つぎ行きましょう♪」と、ざわついたネトウヨをうながしつつ、さっさとその場を離れた。

つまり、本当のことを2回言うと、小野寺の魔法は解けるのだ。

これはいかに巧妙に小野寺が人をだまくらかすのかという話でもあるが、レイシストの詐術に足をとられずに、本当のことをくり返すことによって、我々はレイシズムから文脈を取り戻せるのだ、という話でもある。

もし、“独り言”や同行者との“会話”に反応してネトウヨが絡んできたら、「鑑賞の邪魔をしないでください」と言えばいい。今度、まただれかが“たまたま”小野寺のツアーに行きあったときに、参考になるだろうか。

*2022年7月23日「小野寺まさると行くウポポイ&勉強会」主催:チャンネル桜北海道

* 受賞理由
「探求=explore」の基本である「なぜこの形なのか」「なぜこの素材なのか」という問いから、理由や答えを導き出していく構成が秀逸である。アイヌの歴史や文化への理解を深められるサケの解体模型、素材や刺繍を再現した着物、昔の家を組み立てられる模型など、展示ケースで隔てずに触って感じる探求展示と、実物中心のテーマ展示との相互の行き来により、来館者それぞれの興味関心に沿った深掘りが可能な知的好奇心を喚起する仕掛けは、リテラシー部門の優秀賞にふさわしい。

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