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AIを活用した薬局向け在庫管理サービスの発注UX改善の取り組み 顧客理解〜ゴール設定編

こちらの記事はカケハシ Advent Calendar 2022 の4日目の記事です。

自己紹介:Kitaoka カケハシ プロダクトデザイナー(2021.12〜) ex.受託開発会社でtoBのアプリUI
京都の美大出身(関西在住フルリモート)、尊敬するデザイナーは川崎和男先生です

カケハシでプロダクトデザイナーをしているKitaokaです。

医薬品物流の最適化をミッションとするサプライチェーンマネジメント(以下SCM)領域に所属。サービスデザインチーム(PO&PdM&Designer)の一員として、AIを活用した医薬品の在庫管理サービス「Musubi AI在庫管理」のデザインを担当しています。
これから3回に渡って、AI在庫管理の発注UX改善の取り組みについてご紹介したいと思います。

ユーザーのAIに対する不安を解消できるUXを目指す

これとこれを発注してね!とAIに言われたユーザーの心の中

AI在庫管理は、薬局でその日に発注すべき医薬品を「AIによるおすすめ」として一覧表示し、簡単に一括で発注することを特徴としています。しっかりと使って頂けるようになると、作業時間の短縮や発注回数の削減、欠品防止などにつながるとても重要な機能です。しかし、ユーザーはAIに発注内容を任せることに不安を持っており、手動発注機能を使っているユーザーが多いのが実情でした。

AI発注への移行の鍵は、ユーザーとAIの関係性

AI在庫管理の発注画面(改善前)

これを解決するため、PdM・カスタマーサクセスチーム・デザイナーが連携し、「AIへの不安」の正体を明らかにし、解決に導くためのUX改善プロジェクトが始まりました。具体的なゴールは、2022年9月末までにAI在庫管理のPMF要件であるAIによるおすすめ発注週4以上使われる状態になることでした。今回は、ゴールを目指して動いた5ヶ月間の取り組みと、そこでデザイナーがどのような役割を担ったかを、3回に分けてご紹介します。また、受託開発会社から初めて事業会社に転職して約1年のデザイナーが感じていることも少々お伝えできればと思いますので、是非最後までお付き合いください。

ゴールまでの計画

熱い夏が可視化された

PdM、カスタマーサクセス(以下CS)のメンバーは何度も現場を訪問しており、業務理解やユーザーの要望などを深く理解していました。一方でデザイナーの私は入社後5か月経過している中、コロナ禍も影響し一度も薬局訪問に行けず業務理解が浅い、プロダクト理解もデザインを担当した機能以外はわからないことだらけ、そして極め付けにUXリサーチの経験が充分ではない、という見事な3ない状態でした。これ以上怖いものは何もない。(メンバーを頼りに)スケジュール通りの着地を目指して走るのみ。

デザイナーの役割と着地へのイメージ

ユーザーが安心して、手動発注からAI発注に移れる橋をかけたい

2022年5月中旬。まずは是が非でもキャッチアップ!ということで、CSメンバーに同行し、1人10ヶ所程度の薬局訪問を行いました。いろんなタイプの現場を見学させていただきつつ、デザイナーがどんな役割で動けば最大限の貢献できるのか、戦略を考えていました。

一緒に訪問し、いろんなメンバーと会話を重ねる中で、PdMのメンバーが描くAI在庫の少し先の理想とそこまでのシナリオ、そしてCSチームが感じているユーザーの心理や業務上の課題、そしてアルゴリズムへの理解の深さに、これが事業会社か・・・と驚き、とても頼もしいプロジェクトメンバーに囲まれていることに気づきました。
そこで今回、デザイナーの役割は、まずPdMの頭の中にある設計図と、CSチームがもつリアルな情報のカケラを組み立てることに徹する。そして、現場調査でAIへの不安の解像度を上げ、リサーチで明らかにすべきことをよりソリッドにする。そして何より(本業である)、ユーザーがちゃんと使えるプロダクトに落とし込む、最速で。という部分であると確信しました。

AIはいきなり完璧にならない

序盤に制作したToBeのジャーニーマップ

現場訪問と仮説についての議論を繰り返し、AsIsとToBeを可視化しようとしていました。しかし、およそのイメージは合っていそうなんだけど、なぜかゴールに薄い霧がかかっている。ほんの少しずつ、微妙に、ずれているのかもしれない・・・と感じていました。

AIのわかること(アルゴリズムの精度)が増えるにつれ、ユーザーのタスクは減っていく
AIのわかることが増えるにつれ、ユーザーのタスク量と逆転していく
(絶対こんな綺麗な直線じゃないけど)

そんな中で気づいたのは、AIを使ったサービスは、理想の状態に届くまでに未知数な部分が多くあるということでした。アルゴリズムの精度がメジャーケースをカバーできていればこのくらい便利、ニッチケースもカバーできるようになるとさらにこれくらい楽になる、などなど。
そこで、アルゴリズムの精度のレベルを基準として、それぞれのレベルでベストなUXを可視化することにしました。AsIsとToBeのジャーニーマップというと、 1対1をイメージしてしまいそうですが、段階的なToBeを描く必要がある、と気づいたことが突破口となりました。

AIの実現レベル別のあるべきUXを可視化する

AI(アルゴリズム)の実現レベル別のToBeの体験

6月下旬。
AIの実現レベル別の仮説を整理。プロダクト(体験による感情イメージ、実際の作業負荷、効率性など)と、オンボーディングで必要なフォロー、そしてユーザーが行うべきタスクの変化を可視化しました。
そして、今回のゴール=AIおすすめ発注への移行=Lv3(ユーザーは一定の発注判断にかかわる情報を確認することでAIおすすめ発注を利用できるようになる)への到達=こんな体験、とクリアになりました。

もうひとつ、現地調査を経てユーザーに関する気づきがありました。これについては、次回ご紹介しようと思います。
次回:ペルソナ見直し〜プロトタイピング編

カケハシは、一緒に医療の課題に取り組んでくれる仲間を募集しています。

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