ギュイーン!~2008年小倉記念
(はじめに)
これを書いている途中に、栗東トレーニングセンターで火災があり、4頭の競走馬が亡くなりました。前途ある2歳馬が3頭とベテラン7歳馬が1頭だそうです。関係者の悲しみ、心労はとても想像できません。想像できるようなものではありません。
一競馬ファンとしては、ただただ4頭の冥福を祈るとともに、罹災された厩舎が一日も早く立ち直ることを祈るのみです。
それでも、競馬は続きます。
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「オリンピックへの人員派遣の為開催休止→オリンピック延期」、「暑熱回避のため開催休止→開催日のほうが暑い」と、結局何のために休止したんだかよくわからない夏の小倉競馬が、今週から開催されます。
悲しいことに最早毎年恒例となってしまった豪雨災害、そして猛暑、そして今年は新型コロナウイルスに注意しながらの開催。すべてを吹き飛ばす熱戦を期待したいと思います。
ステイゴールド系を応援してきた者として、小倉記念と言えばやはり2008年。ドリームジャーニーが復活ののろしを上げたレースでしょう。
朝日杯で出遅れからの直線一気で父ステイゴールドに初のGⅠタイトルをもたらしてくれたドリームジャーニー(うれしすぎてしばらくこの実況を目覚ましにしていました)。
神戸新聞杯を完勝したものの、3歳クラシックは善戦どまりに終わり、そして4歳。
マイル路線に旅路を向けたドリームジャーニーでしたが、マイラーズカップでなんと15頭中14着。続く本番安田記念もまったくいいところなく1秒2差の10着という結果に終わってしまいました。
「どうしたドリームジャーニー。まさか燃え尽きてしまったのか?」
当時はステイゴールド産駒が走り始めてまだ4年目。当然オルフェもゴルシもフェスタもフェノーメノもオジュウもレインボーラインもウインブライトもインディチャンプも誰も彼もいません。古馬になっての成長力を身をもって示した産駒はいないのです。
そんな中、ドリームジャーニー陣営が次走に選んだのは何と小倉記念。正直「何と」小倉記念、でした。
メンバー中唯一のGⅠ馬。戦ってきた相手は1枚も2枚も違います。でも一ファンとしては「勝ちに来たな」という思いよりも、「ここで負けたらどうするんだろう…。」と言う不安が先に立ったまま、レース当日を迎えました。
その不安は形は違えど多くのファンが抱いていたようで、レース当日彼は上がり馬ダイシングロウに1番人気を譲ることとなります。
前走で重賞初制覇のミヤリランベリ。小倉大好き前年の覇者サンレイジャスパーは前走完敗、GⅡ制覇は5年前、既に古豪の域に達していたヴィータローザ…。今振り返るとドリームジャーニーの単勝4.2倍はおいしすぎるのですが、この時私は応援馬券を買わなかった記憶があります。
レースはミヤビランベリがハナを切ってのミドルペース。ドリームジャーニーは終始後方外側。一回り小さい馬格と池添謙一騎手の上半身を低く屈めた騎乗フォームが相まって、実況映像では彼の姿は始終他馬の間に見え隠れするばかりでした。
3コーナー。1番人気を背負ったダイシングロウが一気に仕掛け、先頭に並びかけます。前は抵抗できません。本命馬らしい堂々とした競馬です。流石競馬ファン、見る目があるな。
その刹那、画面後方から何か黒い影が
「ギュイーン!」(私には聞こえました)
!!!!!!!
黒い帽子、黒字に赤斜め十字の勝負服。
ドリームジャーニーだ!!
強いドリームジャーニーが帰ってきた!!
人馬一体のピッチ走法。遠心力をフル活用したかのようなひとまくり。4コーナーで外からダイシングロウに並びかけるとあとはワンサイドゲーム。3馬身差の圧勝で彼は小倉の地で復活ののろしを上げたのです。
このレースを機に、彼は「小回り、右回り、コーナー4つ以上」の条件でギュインギュイン言わせまくるのですが、ドリームジャーニーの走ったレースで一つ選べと言われたら、私は2008年小倉記念を選びます。
是非機会があったら見てみてください。彼のまくりに酔いしれてください。
そして今年の小倉記念は当然ドリームジャーニーの姪っ子サラスに◎を進呈します(予想になってない)。
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