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プロレスのパンフレット。デジタルか、それとも紙か?

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:プロレスパンフレットはオワコンか否か。プロレス版・デジタルvsアナログ論争。以上についての考察。

デジタルで変わった漫画の読み方

朝日新聞2021年11月10日の記事でフランス文学者・中条省平さん(学習院大学教授)が非常に面白いことをおっしゃっています。

それはデジタルで漫画の読み方が激変したということです。

中条先生の言葉を引用します。


表現としての漫画がここまで発展した要因は、紙の見開きという独特の画面構成にありました。開けた瞬間の驚きなどの特性が、漫画を世界の文化へと押し上げたのです。コマごとにスライドさせる電子書籍ではそれが失われました。自己表現が少なくなり、いわば情報化された。ストーリーが分かればいい、という。


この言葉を読んで、僕はこれはプロレスのパンフレットの話でもあるな、と感じたんです。

紙のプロレスパンフレットはオワコンか?


新潟プロレスが先日10周年大会を開催しました。

設立からアドバイザーとして関わってきた僕は、新潟プロレスマガジンという、不定期のパンフレットの編集を担当してきました。

今回の10周年の大会パンフレットはその集大成として、創ったものでもあります。


中条先生の話ではありませんが、このデジタル時代、紙のパンフレットなんて必要ない、そういう考えも当然あると思うんです。

例えば、電子パンフレットを売ることだってできます。

ファンはパスコードを代金の引き換えにもらい入力して、スマホの画面を見て、試合の見所を読んだり、選手紹介を見たりすれば、実際のパンフと変わらないじゃないか、というわけです。

そもそもパンフレット等の紙の情報は、今はプロレス情報がネットに氾濫しているから、いらない、そういう考えもあるでしょう。

しかし、僕は中条先生の言葉も借りて、ここで紙のパンフレットの良さを少しお話したいと思います。

紙のプロレスパンフのよさ1.グッズであること

紙のパンフレットはグッズとして考えると、意味がありますよね。グッズっていうのはその名の通り、製品です、モノです。触って眺めて、読む。お土産でもあり、そして何よりとっておいて記念にするという機能もあります。

人間はコレクターとしての本能があります。それは、何らかのジャンルに属し、形のあるものを集めたいという欲望です。

プロレスファンにはこのコレクター本能が強い方が多いのではないでしょうか。否、プロレスというジャンルが、コレクター本能を刺激してやまないのです。

かく言う僕がそうでした。少年時代からプロレスに関するものはみんな集めていました。東スポの記事の切り抜きから、入場チケットまで。親に捨てられた時は泣いたものです。(;_;)

チケット、といってももちろん半券ですが、今の味気ないコンピューター発券のものと違って、

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選手の写真が入っていて、デザイン的にもそそり集める価値があったと思います。まさに一つのアートでした。

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レコードがCDに変わり失われたものは、ジャケットという文化です。CDにももちろんジャケットはあるけれども、小さい分、デザインの表現が窮屈です。

EPレコードの大きさで表現するジャケットは、一つの表現ジャンルだったし、レコード文化の一つだったと思います。LPレコードのジャケットも独自の表現媒体でした。

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プロレスのチケットの半券は、思い出再生マシンでもありました。

後で眺めるとその試合の熱狂がすぐに蘇り、興奮を新たになります。

そんなファン心理にかまってくれて、新潟プロレスはたまにアナログの入場チケットを出してくれたりしますね。

新潟プロレスでは、このパンフレットをグッズとして取り扱ってくれていますね。


紙のプロレスパンフのよさ2.全体性があること

スマホやパソコンで読むデジタル・パンフレットには全体性がありません。

紙のパンフレットは、一冊という全体があります。

デジタル媒体では、スマホやパソコンの小さなスクリーンで部分を読み、スクロールして情報の続きを見ることになります。

部分を継ぎ足す感じです。

読み手は指で必死に情報を追うだけです。

一方紙のパンフレットは、ページをめくるごとに文字情報と絵や写真の情報が満載された”絵“があなたの目前に飛び込んできます。

その見開きの情報量はデジタルを遥かに凌駕します。

デジタルの部分性に対して、アナログの全体性と言ってもいいでしょう。

これが読むものの目を楽しませてくれます。

紙のパンフレットは、一度見ればどこに選手のプロフィールや試合の見所が載っているかわかり、指でページを繰ればすぐに出てきますが、デジタルのパンフは何度も画面をスクロールしなくてはならず、面倒です。

ラクに情報を再検索できるというのも、プロレス観戦を邪魔しないどころか、楽しみでもあります。ラクは楽しさそのものなのです。

プロレスを見ながら、パンフレットを指で繰る、これは昔からファンがプロレスを楽しむ習慣でもありました。

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中条先生がまさに言われたように「紙の見開きという独特の画面構成」はデジタルにはないもので、その全体性と一覧性から来る情報の多さ、そして情報を探す操作がラクであることも、読むものをより楽しませてくれ、エンタテイメントとしてのプロレス観戦をより魅力的にしてくれているのではないでしょうか。

紙のプロレスパンフのよさ3.ページをめくるワクワク感

中条先生は紙の漫画について、
「開けた瞬間の驚きなどの特性が、漫画を世界の文化へと押し上げた」とおっしゃっています。

これは紙のパンフレットもまさに同じです。紙のパンフレットは読者が次のページをめくる楽しみがありますよね。

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デジタル媒体のパンフレットは、情報にすぎませんが、紙のパンフレットはページを繰るごとに、一つの完成した光景が展開します。大げさに言えば1ページ、1ページが芸術作品なのです。

しかし、一番ファンが気にかけるのはその中身、ですよね。それについてはまたいつかお話しましょう。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまたあした。

                            野呂 一郎

               新潟プロレスアドバイザー/清和大学教授

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